昇進も妊娠も、諦める必要は無い。ホルモン検査サービス『canvas』を運営する女性が伝えたい「女性ホルモン」と「人生」の関係性

#わたしのココロとカラダの話。

夏が過ぎ、ようやく涼しくなってきた今日この頃。でも、「なんだかちょっとお疲れモード」……という人も多いのではないでしょうか。夏で疲れたココロとカラダを、一度リセットしませんか? 最新の検査・診断から、気軽にできるエクササイズまで、いまアラサー女子に知ってもらいたい“ココロとカラダの話”をお届けする本特集。今回は郵送のホルモン検査サービス「canvas」を展開する株式会社Vitalogue Healthの代表取締役CEO・長谷川彩子さんにお話を聞きました。

取材・文:太田冴
撮影:稲垣佑季
編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部

歳を重ねるにつれて「もっと早く知っておけばよかった」と思うこと、ありませんか?

お金のこと、社会のこと、そして体のこと。特に女性は、仕事にプライベートに、と充実させている間に気づけば30代。いつの間にか出産へのタイムリミットが迫っていたーーなんてこともよくありますよね。

今回お話を伺ったのは、自宅でできる郵送のホルモン検査サービス『canvas』を展開する株式会社Vitalogue Health代表取締役CEO・長谷川彩子さん。『canvas』は、長谷川さんご自身が生理不順や妊娠トラブルに見舞われた体験をきっかけに、忙しい女性が気軽に自分のからだを知ることができるよう作られたサービスだそう。

実は今回の取材は、33歳である私が女性ホルモンの検査を初めて受けた直後に実現したもの。「もっと早く受けておけばよかった……」と強く実感していた矢先の長谷川さんの力強いメッセージの数々に、思わずうるっときてしまいました。アラサー女性の皆さんに、届きますように。

生理不順に悩んで数年。ようやく出会えた「ホルモン検査」

――昨年『canvas』というサービスをスタートさせた長谷川さん。そもそもどうして女性ホルモンに着目したビジネスを立ち上げようと思ったのですか?

私自身がずっと女性ホルモンに悩まされ続けてきたからです。高校時代は陸上部に所属していたのですが、ハードな運動のせいか5年ほど生理が止まった時期がありました。

社会人になってからは外資系の企業で男性に囲まれながら紅一点、寝る間も惜しんで働く日々。成果を出したい、という一心で頑張って働いていましたが、唯一の足枷となっていたのが生理痛や生理前の強烈な眠気でした。

インタビューにお答えいただいた、長谷川彩子さん(提供写真)

――うぅ、わかります。生理前〜生理中って、普通に働くのもしんどいですよね。

そうなんです。どうにか不調を治したかったので婦人科にも通っていたのですが、あまり適切な治療に巡り会えず、「がまんするしかないんだ」と思う日々が続きました。

そんな中、何件目かの婦人科で出会った医師が、ようやく「ホルモンを調べてみよう」と言ってくれて。私の女性ホルモンの揺らぎパターンが分かってからは、適切な治療法にも出会えて、長い苦しみから「やっと一歩踏み出せた」と思えました。

――婦人科に通うこと自体もハードルが高いことなのに、何件も回ってようやく分かるなんて……。あまりにも大変ですよね。

いわゆる婦人科の“三大領域”は「がん」「お産」「不妊治療」と言われていますが、女性ホルモンはもっと包括的なもの。どこかの領域に特化したものではないからこそ、着目されづらいのかもしれません。

いずれにせよ、私の場合はたまたま女性ホルモンの検査を提案してくれる医師に出会えたから良かったけれど、なかなか原因が掴めず不調に悩む女性は多いはず。そこで、忙しい日々の中でも、もっと気軽に自分の体のことを知ってもらいたいと思い、自宅でできる検査キット『canvas』を思いついたのです。

検査は自宅で完結。結果はスマホで簡単に。「分かりやすさ」にとことんこだわった理由

――現在は、どのようなキットを発売しているのですか?

妊娠を見据えた健康チェックができる『Woman’s Fertility Check』、卵巣年齢のチェックに特化した『AMH Check』、更年期が気になる方向けの『Menopause Check』の3種類を展開しています。

どれも自宅で簡単に自己採血をすることができる検査キットなので、婦人科に行くことに抵抗がある方や、なかなか時間がとれない方でも、自分のホルモン状態をチェックすることができます。

――実は私、先日初めて婦人科で女性ホルモンに関する検査を受けたんです。今33歳なのですが、「もっと早く検査すればよかった」と思うことも多かった一方で、やはり働きながら婦人科に通うことのハードルの高さも実感しました。

そうなんですよね。例えば排卵に関するホルモンの検査では、月経期間中に採血をする必要があるため、月1回のタイミングを狙って婦人科に行かなければなりません。なおかつ、結果を聞くためにはもう一度病院に出向く必要があります。それだけでも、日中忙しく仕事をしている人にとってはすごく負担ですよね。

――はい。しかも、検査結果としてホルモンの数値が書かれたものが紙で渡され、その場でお医者さんに解説していただいたのですが、一度の説明ではなかなか理解できず……。家に帰った時には、正直ほとんど忘れてしまっていました。

紙だと、すぐ失くしてしまうというリスクもありますしね。私が初めてホルモン検査を受けたのは31〜32歳の頃。今でこそこういったビジネスをしているのでホルモンに詳しくなりましたが、当時は知識も無かったので、検査結果を説明されてもよく理解できませんでした。実は私、薬剤師の資格を持っているのですが、そんな私でもよく分かりませんでしたよ(笑)。

――薬剤師の資格を持っていても、ですか!?

資格を取るためにたくさん勉強はするのですが、その中で女性ホルモンに関する記載って、実は1ページくらいしか無いんです。女性ホルモンの揺らぎが描かれたグラフを見た記憶があるくらい。

――驚きました。薬剤師さんだからといって、必ずしもホルモンにも詳しいわけではないんですね。

はい。だからこそ、検査結果の説明は誰でも理解できるように分かりやすくあるべき、と思っています。『canvas』では、結果をスマホで見ることができて、なおかつそれぞれの数値が表す意味を基準値と比較しながら噛み砕いた言葉で説明しています。

仮に「病院に行った方がいいかも」というような気になる検査結果が出た場合は、提携している病院であればそのまま『canvas』の検査結果を用いて受診していただくことも可能です。まずは病院に行く前の第一歩として、健診のような気持ちで使っていただけると嬉しいですね。

何も諦める必要はない。ホルモンを知ることで、自分なりの幸せをつかんで

――今後はどんなサービスを展開していく予定なのですか?

やっぱり、何か不調を抱えているのであれば一人で悩まずに婦人科に行っていただきたい、という思いがあります。今後は『canvas』の検査結果を持って気軽に病院に行けるよう、提携先の病院を増やしていきたいですね。加えて、検査結果から一人ひとりに合った漢方やお薬をお届けできたらと思っています。

――ますます便利になりますね。

女性は自分のからだの悩みについて「仕方が無い」とか「がまんするしかない」と思ってしまいがちですが、私は「もっと他に選択肢はあるんだよ」、「がまんする必要は無いんだよ」ということを伝えたいんです。

実際、女性のプライベートのピークとキャリアのピークは重なりがちです。30代で仕事がようやく楽しくなってきたころには妊娠・出産が気になりますし、管理職が近づいてきた頃には更年期に悩まされて昇進を諦める方もいます。

――仕事とプライベートのどちらをとるか、どちらを諦めるのか、という究極の選択に悩まされている女性は多いですよね。私自身もまさにそうです。

でも、実はどれもある程度の対処方法はあります。何かを諦める必要は無いと思うんです。自分の体を知って、「がまんする」以外の選択肢を持つことで、自分自身の可能性を広げることができます。

やっぱり、自分が納得できる人生が一番幸せに感じられるはず。『canvas』を通じて、自分の体のことや、不調に対する対処方法を知るきっかけを提供できたらと思っています。

Information

canvas

簡単に自己採血することで、自宅で自分のホルモンをチェックできる検査サービス。悩みに合わせて選ぶことができ、現在は妊娠を見据えた健康チェックができる『Women’s Fertility Check』、卵巣年齢のチェックに特化した『AMH Check』、更年期を見据えた健康チェックができる『Menopause Check』の三種類が展開されています。

https://get-canvas.com/

※この記事は2022年12月09日に公開されたものです

SHARE