【時候の挨拶】11月に使える挨拶言葉は? 書き方や文例を紹介
仕事で案内状などの文面を作成する時、プライベートでかしこまった手紙を書く時など、どう書き始めたらいいか悩みませんか? そこで便利なのが「時候の挨拶」。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、11月の時候の挨拶を教えてもらいました。
カレンダーもあと2枚。「11月の声が聞こえたとたん、気持ちが年末に向かう」という気の早い人もいるかもしれません。
11月7日が立冬で、暦の上では冬の始まりです。とはいえ、半ば頃までは紅葉を楽しめる地域も多いのではないでしょうか。季節の変化を楽しみながら、急に寒くなって慌てないように冬支度。
温かい飲み物でも飲みながら、ごぶさたしている方にメッセージをつづってはいかがでしょう。
時候の挨拶とは?
時候の挨拶とは、季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書く言葉や文章を指します。
「暮秋の候」のように、「熟語などの一語」+「候」という形もあれば、「暦の上では冬を迎えましたが、穏やかな秋の日が続いていますね」のように、文として書く形もあります。
ビジネスシーンやプライベートでは、書面や手紙での連絡、改まったメールの冒頭部分において使われます。
11月の「時候の挨拶」
11月の手紙に使える時候の挨拶を紹介します。
公文書やビジネスレターなどでは「〜の候」で始めることが多いですね。「候」の代わりに使える言葉として、「頃・節・折・季節・みぎり」などがあります。
なお、「みぎり」とは、「時、折、時節」という意味です。漢字では「砌」ですが、あまりなじみがないため、ひらがなで表記する方が良いでしょう。
・「霜降(そうこう)の候」霜降(2021年の霜降は10月23日)から立冬(2021年の立冬は11月7日)までの期間
・「秋色(しゅうしょく)の候」9月頃から立冬まで。特に、紅葉鮮やかな頃
・「立冬(りっとう)の候」立冬から小雪(しょうせつ。2021年の小雪は11月22日)まで
・「深秋(しんしゅう)の候」11月初旬から立冬まで
・「暮秋(ぼしゅう)の候」11月初旬から立冬まで
・「霜秋(そうしゅう)の頃」秋が深まり霜の降りる頃。11月中旬頃まで
・「初霜(はつしも)の頃」霜降から立冬まで。または、霜が降りる時期
・「時雨(じう/しぐれ)の候」晩秋から初冬に冷雨が降ったり止んだりする時期
・「落葉(らくよう)の候」紅葉が終わる頃から落葉するまで
・「夜寒(よさむ)の頃」11月全般
・「小春日和(こはるびより)の候」小春(陰暦10月のこと。11月初旬からから12月上旬)の頃によく晴れた日が続くこと
・「向寒(こうかん)のみぎり」立冬から小寒(2022年の小寒は1月5日)まで
上記の時期は、あくまで目安です。
「暮秋」「秋」が付く言葉を使うのは、立冬までが良いでしょう。
11月ともなれば、いよいよ空気も冷え込んできますね。コートや手袋などの冬支度を始める頃です。
今年の立冬は、11月7日。時節としての立冬は、雪がちらつく小雪の頃まで使えます。小雪の時期には、山間部や北部では雪がちらつくことがありますが、平野部はまだ穏やかで、小春日和と呼ぶにふさわしい晴天も多くみられます。
また、暦に厳密にこだわらない場合、一般的な感覚として紅葉が楽しめる頃までを秋と考えると良いでしょう。
例文
上記で紹介した時候の挨拶の他にも、その時季を思わせる文章を交えると、季節感あふれるメッセージになるでしょう。
・夜寒が身にしみる季節、先日は思わず暖房を入れました。
・学校帰り、よく一緒に通った○○通りは秋の気配。銀杏並木の下は金色のカーペットが敷かれたようです。
・朝夕はめっきり冷え込む季節となりました。皆さまにはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
・落ち葉舞い散る季節、日足もすっかり短くなりました。
11月の「結びの挨拶」(例文つき)
続いては、11月にふさわしい結びの挨拶を紹介します。
「結びの挨拶」とは、本文で用件などを述べた後、結語(「敬白」「敬具」「かしこ」など)の前に添えるものです。
「末筆ながら、○○さまのご健康とご活躍を願っております」のように、相手の健康や繁栄を願ったり、「○○さまによろしくお伝えください」などのように、伝言を依頼したりする役割があります。
例文
・年末年始は帰省されますか? その際には、地元のみんなに声掛けするので、ぜひご連絡くださいね。
・日ごと寒さが募りますが、くれぐれもご自愛くださいませ。
・夜寒の折、お風邪など召しませんようお気をつけください。
・鍋物が恋しくなりました。年末お忙しくなられる前に、近々ご一緒にいかがでしょうか?
11月の時候の挨拶「シーン別の例文」
時候の挨拶を組み入れた例文を、ポイントともに以下に紹介します。
今回は、「再度の講師をお願いする依頼状」と「喪中欠礼状」の例文です。
再度の講師をお願いする依頼状
一度講師をお願いした相手に対して、次回の講師を再度依頼する依頼状の例文です。
社用の手紙なので、かしこまった前文が一般的です。ただし、時候の挨拶は、相手が個人の講師であれば、例文のようにやわらかい印象のものでも良いでしょう。
内容は、講座が好評だったことだけでも良いのですが、その後の様子も報告すると、受け取った相手もうれしいものです。
例文
拝啓 カレンダーも残り2枚となり、暦の上では冬を迎えました。先生におかれましてはますますご活躍の由、お喜び申し上げます。
今年の夏は講師としてお話しくださり、誠にありがとうございました。社員にも大変好評で、その後皆でやる気とアイデアを持ち寄り、新サービス開発もいたしました。おかげさまで、今期はコロナ下にも関わらず、前年比12%増の業績を上げ、喜んでおります。
さて、来年度におきましても、ぜひ先生に講座をお願いしたいと、全員一致でまとまりました。ご多用とは存じますが、ぜひお引き受けいただければ幸いでございます。
改めて、メールをお送りいたしますので、ご検討の程よろしくお願い申し上げます。
敬 具
喪中欠礼状
近親者に不幸があった年は、年賀状を控えることを知らせる通知を送りますね。この通知は、「喪中欠礼状」と呼ばれます。
一般的な喪中とする近親者の範囲は、一親等(父母、配偶者、子)、二親等(祖父母、兄弟姉妹、孫)にあたる方が亡くなった時です。
これまで毎年、年賀状のやりとりをしている方全員に送ります。葬儀の参列者など喪中と知っている方にも送りましょう。
なお、私製ハガキに切手を貼る場合には「弔事用の切手」を選びます。
時期としては、年賀状を書き始める前、11月から12月初旬までに届くと良いでしょう。
例文
喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます(※大きい文字で)
父 ○○(続柄の後に名前)が○月○日に○○歳(数え年で書く)で永眠いたしました
本年中に賜りましたご厚情を厚く御礼申し上げます
明年も変わらぬご交誼をお願い申し上げます
令和○○年11月
時候の挨拶をビジネスレターで使う場合の書き方と注意点
最後に、基本的な手紙の形式と注意点を紹介します。
手紙の形式
手紙の形式に必ずしも決まりはありません。個性的な手紙が喜ばれることも多いものです。
ただし、面と向かって会う時とは違い、特にビジネスシーンでは失礼にならないようにと考えることが多いため、慣習的な順序に沿った手紙の形式があります。
大きく分けると「前文・本文・末文・後付け・副文」の順です。
「前文」:頭語
「頭語」とは手紙の冒頭に用いる言葉で、後述する「結語」と対応するものを用います。
頭語には、次のようなものがあります。
【一般的な頭語】
拝啓・拝呈・啓上・啓白・呈上・拝進
【特に丁重な頭語】
謹啓・粛啓・恭啓・謹呈・敬呈
【返信する場合の頭語】
拝復・復啓・敬復・拝披
【返信が来ないうち再送する場合の頭語】
再啓・再呈・追啓・再白・再陳
【急ぎの場合の頭語】
急啓・急呈・急白・急陳・火急
【時候の挨拶を省略する場合の頭語】
前略・略啓・略陳・草啓・冠省・前省・略省・寸啓
「前文」:時候や安否の挨拶
頭語の後に1文字分空けて、前段で紹介したような「時候の挨拶」を書きます。
事務的な文章では時候の挨拶を省き、「時下ますますご清栄のこことお慶び申し上げます」などと書くこともできます。
安否の挨拶は必須ではありませんが、書く場合には、時候の挨拶の後に続けます。
まず相手の安否に触れてから、次に自分の安否や近況について「私どもは元気に過ごしております」などと述べます。
また病気見舞いや相手側に不幸があった時には、自分側の安否や近況は述べないようにします。
「本文」:起辞
「前文」である時候の挨拶の後に、改行をし、1文字下げて書きます。
起辞とは、書き出しから用件に移る際の接続詞で、「さて・ところで・早速ながら・このたびは・今般」などがあります。
返信の際には「ついては・つきましては」などを使います。
「本文」:用件
起辞に続いて、用件を書きます。
移転・転任・結婚・転職・退任・お礼など、さまざまな用件があります。気配りをしつつも、誤解や不明のことが生じないよう、具体的に書きましょう。
「末文」:結びの挨拶
「本文」の用件の後に、改行をし、1文字下げて書きます。
基本的には相手の健康や繁栄を願う言葉を書きます。さらに、伝言を添える場合もあります。
「末文」:結語
結びの挨拶と同じ行の最下部か、改行した次行の下方へ配置します。
「頭語」と対応させる言葉を用います。具体的には、次のようなものがあります。
【一般的な結語・返信や再送する場合の結語】
敬具・拝具・拝白・敬白・拝答
【特に丁重な結語】
敬白・謹白・謹具・再拝・謹言・頓首
【急ぎの場合・時候の挨拶を省略した場合の結語】
早々・怱々・不一・不二・不備・不尽
「後付け」:日付
「末文」の後に改行し、2~3字下げて年月日を書きます。
「後付け」:署名
日付の次行の下方に、差出人名を(自筆で)書きます。
「後付け」:宛名・敬称
署名の次行の上方に、相手の氏名を書き、「様」「先生」などの敬称を添えます。
宛名が連名の際は、敬称はそれぞれに付けます。なお、「御中」は会社や団体に用います。
「副文」
副文とは、書き漏れたことや付け加えたいことを短く添える文章のこと。「追伸・追白・尚々」などと書き出します。
ただし、副文には「重ねて申し上げる」というニュアンスがあるため、お悔やみ状や目上の人への手紙では使用しないのがマナーです。
時候の挨拶についての注意点
お詫び状や見舞状など、急な手紙では頭語や時候の挨拶を省き、以下のようにすぐ本文に入ります。
お詫び状(例文)
・先般はご迷惑をお掛けし、大変申し訳なく思っております。
災害の見舞い状(例文)
・このたびの台風○○号による浸水、被害が大きく心配しております。状況はいかがでしょうか。
病気の見舞状(例文)
・このたびはご入院されたとのこと、驚いております。
病気見舞いでは「たびたび」「四」などの忌み言葉に気をつけましょう。
また、長期の入院で文通のようにやりとりしている手紙では、季節の言葉も入れて良いでしょう。
「去年の秋。今年の秋。来年の秋」
先日、天気予報で気象予報士の方が「季節が前に進みますね」と話しているのを聞き、ハッとしました。季節は「移り変わる」だけと思っていたからです。
「季節は+移り変わる」「風が+吹く」など、言葉には慣用的な主語・述語の組み合わせがありますが、慣用化されていない組み合わせは新鮮ですね。
「季節が+前に進む」とすれば、季節と一緒に年を重ね、経験を重ねて進化していくような気持ちになります。
新しい季節、今年だけの秋、今年だけの冬がやってきます。前に進みましょう。楽しみながら。
(前田めぐる)
※画像はイメージです
※この記事は2021年10月25日に公開されたものです