「ホスピタリティ」とは? 意味&使い方と例文
「ホスピタリティ」の意味とは? ホテルでの接客や医療での場面など、最近よく耳にするこの言葉。正しい使い方を例文つきでビジネス系ライターのSaiさんが解説します。また「サービス」との違いは? など、きちんと意味を理解しましょう。
職場だけでなく、テレビや雑誌などでもよく見聞きする「ホスピタリティ」という言葉。実際に使ったことがあるものの、あいまいにしか理解できていないという人は多いでしょう。
そこで今回は、「ホスピタリティ」の意味や使い方を例文つきで解説。また、よく混同しがちな言葉「サービス」との違いについても説明します。
「ホスピタリティ」とは?
まずは、「ホスピタリティ」という言葉の意味を詳しく確認してみましょう。
「ホスピタリティ」の意味
「ホスピタリティ」は、「心から親切にもてなすこと」や「歓待の精神」を表す言葉で、主に接客や接遇の場面で使われます。辞書を調べると、以下のように説明されています。
ホスピタリティー(hospitality)
1 心のこもったもてなし。手厚いもてなし。歓待。また、歓待の精神。
2 ⇒異人歓待(いじんかんたい)(『デジタル大辞泉』小学館)
最近ではサービス業だけでなく医療の現場でもよく使用されており、さまざまな分野や業界で見聞きする機会が増えてきている言葉です。
広義では「社会や自然との関わり」も含む
一般的に、サービスを提供する側から顧客側への行動や考え方などを指す場合が多い「ホスピタリティ」。
しかし広義の定義では、人と人だけにとどまらず、人と社会や人と自然などとの関わりにおいても「ホスピタリティ」は具現化されるものであるとされています。
例えば、地域社会や自然環境などに対して思いやりの心を持つことも「ホスピタリティ」であると言われているので、併せて覚えておくようにしましょう。
「ホスピタリティ」の語源
「ホスピタリティ」は、英語でhospitalityです。このhospitalityには、カタカナ語同様もてなしや歓迎といった意味合いがあります
語源は、ラテン語のhospes。このhospesには、客をもてなす主人という意味があり、そこからもてなしを意味するラテン語のhospitalitasを経て、英語のhospitalityに派生したとされています。
「ホスピタリティ」の使い方と例文
サービスを提供する場面だけでなく、地域社会や自然との関わり方を表す場面などでも使われる「ホスピタリティ」という言葉。
それぞれのシーンにおいて正しく使用できるように、用法や例文を確認しておきましょう。
サービスを提供する時に使う場合
接客業などのサービスを提供する職場では、主に顧客満足度の向上に関する話題や従業員のモチベーションについて話す場合などに「ホスピタリティ」が使用されます。
具体的な使い方を理解するためにも、例文を確認しておきましょう。
例文
・実力もスキルもまだまだだからこそ、ホスピタリティを持ってお客様に接しなくてはならない。
・ホスピタリティマインドを高めることで、顧客に高次のサービスを提供できるようになる。
医療の現場で使う場合
近年、医療の現場でも「ホスピタリティ」という言葉はよく使われています。
医師や看護師にとって、患者はサービスを提供すべき「お客様」ではありません。
しかし、一刻を争う医療の現場で「思いやりの心を持って患者やその家族に接するべき」という考え方が注目されており、「ホスピタリティ」が使われる機会が増えてきているのです。
例文
・ホスピタリティを持って接することが、患者の心を癒やすことにつながる。
・ホスピタリティ・マネジメントを導入すると、医療の質や接遇力を向上させられるだろう。
社会や自然との関わりを表す場面で使う場合
基本的には、人に対する思いやりやおもてなしを表す言葉である「ホスピタリティ」。
しかし、広義の意味では地域社会や自然環境などに対しても具現化されるものであると捉えられているため、社会や自然との関わりを表す場面で使われることも少なくはありません。
例文で詳しく確認しておきましょう。
例文
・ホスピタリティの活性化は、地域に人を集め訪問者を増やすことにつながっていくはずだ。
・各々が周囲の自然に対してホスピタリティを持つことで、環境保護活動が活発になっていくだろう。
「ホスピタリティ」の類語・言い換え表現
ここからは、「ホスピタリティ」と似た言葉に着目しながら、細かなニュアンスの違いまで押さえていきましょう。
「ホスピタリティ」と「サービス」の違い
「ホスピタリティ」とよく混同される言葉の1つに「サービス」があります。どちらも接客や接遇の場面で頻繁に使用されるため、使い分けができていない人は多いでしょう。
しかし、両者の間には明確な違いがあり、「ホスピタリティ」が潜在化したニーズに応える一方、「サービス」は顕在化したニーズに応えるという点が異なっています。
例えば、結婚式場で新郎・新婦のためにテーブルセッティングをしておくのは「サービス」です。しかし、新婦が左利きだと知ってナイフとフォークを逆の位置に置いておくのは、「ホスピタリティ」だと言えます。
求められたことをやるのが「サービス」、求められてはいないけど相手のために真心を込めてやるのが「ホスピタリティ」だと覚えておくと、分かりやすいでしょう。
「ホスピタリティ」と「おもてなし」の違い
「おもてなし」とは、待遇や馳走を意味する「もてなし」に接頭辞の「お」をつけて丁寧にした表現。『源氏物語』などにも登場する表現であり、日本では古くからその概念があったことが分かります。
日本ならではの心のこもった待遇や接待を指す時に使われ、2013年の東京オリンピック招致のスピーチでは、滝川クリステルさんが「お・も・て・な・し」という表現で日本人の心意気や気遣いを表していました。
このように、「ホスピタリティ」と「おもてなし」はニュアンスが近く、日本にも昔からホスピタリティに似た精神があったことを感じさせる言葉と言えるでしょう。
「ホスピタリティ」のメリット・デメリット
「ホスピタリティ」という言葉の意味や使い方について解説してきました。ここからは、「ホスピタリティ」によって、どんな影響がもたらされるのか、メリットとデメリットの観点から考えていきましょう。
「ホスピタリティ」のメリット
まずは、メリットから見ていきます。
顧客満足度のUP
言わずもがな、「ホスピタリティ」の行き届いた店では、顧客の満足度が格段にUPします。
基本的に「ホスピタリティ」は良い印象として働き、「また行きたい!」という意欲につながったり、「店のために上品な振る舞いをしよう」と客の質を上げたりすることにもひもづいていくはずです。
従業員の満足度UP
顧客満足度のUPは、従業員の満足度UPにも関係してくるでしょう。
顧客が喜んでいる姿は、従業員のモチベーションを高めてくれます。「また喜んでもらいたいから、今度はこんなもてなしをしよう」と、それぞれの心持ちがポジティブに変わっていくかもしれません。
また、「ホスピタリティ」が徹底されている現場では、だらけた雰囲気がなくなり、士気が上がる様子も見られることでしょう。
「ホスピタリティ」のデメリット
一見、良いことしかないように感じる「ホスピタリティ」。しかし、注意をしないと、デメリットへと転じてしまうパターンもあります。
過度の「ホスピタリティ」は干渉につながる
何事もやりすぎには注意。いきすぎた「ホスピタリティ」は顧客への干渉のようになり、不快感へつながってしまうケースもあります。
求められていないのに手を出すことで、「うざったい」「そってしておいてほしい」と思われてしまうこともあるのです。
「ホスピタリティ」の基準は人それぞれのため、こうしたデメリットの側面もあります。
際限がなくなると従業員が苦しむ
やればやるほど際限がなくなっていく「ホスピタリティ」。与えられすぎると顧客側も感覚が狂ってしまい、それを当然のように求めるようになってしまうかもしれません。
そのサイクルに陥ると、苦しい思いをするのは従業員。給与の対価として不相応な稼働や対応を求められることになりかねません。
正しく理解し、自信を持って「ホスピタリティ」を使おう
ビジネスシーンだけでなく、メディアなどでもよく見聞きする「ホスピタリティ」という言葉。さまざまな業界や分野で使われているものの、あいまいにしか理解しておらず使い方に悩んでしまう人は多いでしょう。
しかし、一度正しい意味や主要な使い方などを覚えてしまえば、使いこなすことは難しくありませんよ。
意味を混同しやすい「サービス」との違いも併せて把握しておき、自信を持って「ホスピタリティ」を使えるようになりましょう。
(Sai)
※画像はイメージです
※この記事は2021年06月29日に公開されたものです