ビジネスレターで使える「4月の挨拶言葉」9つ
仕事で案内状などの文面を作成する時、プライベートでかしこまった手紙を書く時など、どう書き始めたらいいか悩みませんか? そこで便利なのが「時候の挨拶」。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、4月の時候の挨拶を教えてもらいました。
普段、メールでのやりとりがほとんどでも、仕事でアナログな送付状や案内状などを送ることはあるでしょう。
また、プライベートでも、お見舞いやお礼状など、かしこまった手紙を書くこともあるでしょう。
その際に知っておきたいのが、「時候の挨拶」です。
いつも用件のやりとりだけで済ませている相手から、ちょっとした時候の挨拶が書き添えられていると、親しみの気持ちが湧いたり、ほっと安らぐ気持ちにもなったりするものです。
この機会に、季節に合った挨拶の言葉を学び、四季ある国に生まれたことの豊かさを感じてみませんか?
出会いの季節である4月、心温まるメッセージで新たなご縁を大切に育みましょう。
時候の挨拶とは?
時候の挨拶とは、季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書く言葉や文章です。
「○○の候」のように、「熟語などの一語」+「候」という形もあれば、「春とはいえ肌寒い日が続きますが」のように、文として書く形もあります。
ビジネスシーンやプライベートでは、書面や手紙での連絡、改まったメールの冒頭部分において使われます。
4月の「時候の挨拶」
4月の手紙で使える時候の挨拶を紹介します。
「〜の候」の他に「〜のみぎり」という言葉もあります。「みぎり」とは、「時、折、時節」という意味です。
・「桜花のみぎり」4月初旬
・「清明の頃」4月5日頃(〜19日頃)
・「花冷えの頃」4月初旬
・「陽春(ようしゅん)の候」4月初旬・中旬
・「盛春(せいしゅん)の候」4月中旬頃
・「穀雨(こくう)の頃」4月20日頃
・「惜春(せきしゅん)の候」4月下旬
・「春暖(しゅんだん)の候」4月全般
・「春陽(しゅんよう)まぶしい頃」4月全般
上記の時期は、あくまで目安です。
近年では、4月でも初夏並みの気温になることがあります。そんな場合には、以下の例文のように「陽春とはいえ、早くも……」と書くと、形式張った印象が和らぎ、実感を伴った表現になります。
桜の咲く時期についても、年や地域によって違うので、その年の各地の様子に合わせて使うと良いでしょう。
例文
・春暖の候、貴社益々ご盛栄の段、大慶(たいけい)に存じます。
・陽春とはいえ、早くも初夏のような汗ばむ日々が続いております。
・花冷えの日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
4月の「結びの挨拶」(例文付き)
続いては、4月にふさわしい結びの挨拶を紹介します。
「結びの挨拶」とは、本文で用件などを述べた後、結語(「敬白」「敬具」「かしこ」など)の前に添えるものです。
「末筆ながら、○○様のご健康とご活躍を願っております」のように、相手の健康や繁栄を願ったり、「○○様によろしくお伝えください」などのように、伝言を依頼したりする役割があります。
例文
・楽しく充実した新生活を過ごされますよう願っております。
・ご就任後はご多忙と存じますが、さらなるご活躍を祈念しております。
・ゆく春を惜しみつつ、まずは近況お知らせまでいたしました。
・春とはいえ、肌寒い日が続きます。くれぐれもご自愛ください。
・花冷えの季節、お風邪など召しませんようお大事にお過ごしください。
4月の時候の挨拶「シーン別の例文」
時候の挨拶を組み入れた例文を、ビジネス・プライベートそれぞれの場面で、ポイントとともに以下に紹介します。
4月に使える例文
暖かくなり、イベントなどのお誘いも出しやすくなる頃ですね。まずは、ビジネスシーンでも作成する機会が多い、案内状とお礼状の例文を紹介します。
案内状(例文)
拝啓 清明の頃、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
平素はお世話になりありがとうございます。
さて、このたび下記の通り、「○○」を開催いたします。
(~開催の意図や準備の様子などを記す~)
多用のことと存じますが、春の息吹を感じにぜひお出かけくださいますよう、ご案内申し上げます。
敬具
記
「○○」
日時:○○
場所:○○
以上
お礼状(例文)
拝啓 惜春の頃、先般は、ご多忙の中「○○」にお越しくださり、誠にありがとうございました。
(~好評だった様子やうれしかった気持ち、これからの意欲や展望などを述べる~)
どうか今後ともご交誼(こうぎ)賜(たまわ)りますよう心よりお願い申し上げますとともに、ますますのご活躍を願っております。
書中にて失礼ではございますが、お礼まで申し上げます。
敬具
開催後すぐに出す来場のお礼状では、お礼のメッセージで書き出した方が、ストレートに伝わります。
転任の挨拶状
ビジネスの挨拶状には、開店・開業、支店開設、新装、移転、組織変更、担当者変更など、さまざまなものがあります。
4月は特に就職、転職、人事異動や組織体制の変更などで人の動きが顕著な月です。
挨拶の言葉を中心に、日頃の感謝や誠意が十分伝わるものにしましょう。
特に、担当者変更などは先方に不安を与えることもあるので、しっかり引き継ぎを行う旨を伝えます。時期を外さずに知らせることもポイントです。
例文
拝啓 陽春の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、私このたび○○本社勤務となり、4月1日付で着任いたしました。在任中はご厚誼(こうぎ)を賜(たまわ)り、心より御礼申し上げます。
なお、私の後任は下記の通り、○○が務めさせていただきます。○○は、貴社の業界にも詳しく、私同様チームリーダーを務めて3年になります。ご迷惑をお掛けすることのないようにしっかりと引き継ぎを行いましたので、ご安心いただきますとともに、今後とも○○支社に変わらぬご指導を賜(たまわ)りますようお願い申し上げます。
私も新天地で心機一転、新たな分野に意欲的に取り組む所存です。もし、こちらにお越しの際はぜひお声がけください。
本来ならばお目にかかってご挨拶申し上げるべきところでございますが、ご多忙の折と拝察し、書中にてご挨拶まで申し上げます。最後になりましたが、貴社のご発展と皆さまのご健康を心より願っております。
敬具
記
新担当者:○○○○(○○支店、所属と役職)
Email ○○○○@○○○○.co.jp
旧担当者:○○ ○○(○○本店、所属と役職)
Email ○○○○@○○○○.co.jp
以上
就職祝いの手紙
親しい相手に送る手紙では、頭語を省き、「おめでとう」「ありがとう」などのメッセージから書き出しても構いません。率直に気持ちが伝わります。
4月は、桜にちなむ時候の挨拶を使うことも多いでしょう。桜の名所がある場合には、固有名詞を入れることで、土地柄や親しみを感じてもらえます。
また、品物を贈る際には、以下の例文にある「心ばかり」のように必ず謙遜すべきと決まっているわけではありません。相手との関係性にもよりますが、「すてきな色を見つけました。きっとお似合いと思い、お贈りします」などのように書いても良いでしょう。
例文
○○川の桜も美しい頃、○○ちゃん、高校入学おめでとうございます。私も○○高の卒業生なので、従姉としてとてもうれしく思います。
また夏休みに会えたら、学校のお話を聞かせてくださいね。
お祝いに、心ばかりの品をお送りしましたので、どうかお使いいただければ幸いです。
朝夕冷え込みますので、皆さま、お大事にお過ごしください。
かしこ
時候の挨拶をビジネスレターで使う場合の書き方と注意点
最後に、基本的な手紙の形式と注意点を紹介します。
手紙の形式
手紙の形式に必ずしも決まりはありません。個性的な手紙が喜ばれることも多いものです。
ただし、面と向かって会う時とは違い、特にビジネスシーンでは失礼にならないようにと考えることが多いため、慣習的な順序に沿った手紙の形式があります。
大きく分けると「前文・本文・末文・後付け・副文」の順です。
「前文」:頭語
「頭語」とは手紙の冒頭に用いる言葉で、後述する「結語」と対応するものを用います。
頭語には、次のようなものがあります。
【一般的な頭語】
拝啓・拝呈・啓上・啓白・呈上・拝進
【特に丁重な頭語】
謹啓・粛啓・恭啓・謹呈・敬呈
【返信する場合の頭語】
拝復・復啓・敬復・拝披
【返信が来ないうち再送する場合の頭語】
再啓・再呈・追啓・再白・再陳
【急ぎの場合の頭語】
急啓・急呈・急白・急陳・火急
【時候の挨拶を省略する場合の頭語】
前略・略啓・略陳・草啓・冠省・前省・略省・寸啓
「前文」:時候や安否の挨拶
頭語の後に1文字分空けて、前段で紹介したような「時候の挨拶」を書きます。
事務的な文章では時候の挨拶を省き、「時下ますますご清栄のこことお慶び申し上げます」などと書くこともできます。
安否の挨拶は必須ではありませんが、書く場合には、時候の挨拶の後に続けます。
まず相手の安否に触れてから、次に自分の安否や近況について「私どもは元気に過ごしております」などと述べます。
また病気見舞いや相手側に不幸があった時には、自分側の安否や近況は述べないようにします。
「本文」:起辞
「前文」である時候の挨拶の後に、改行をし、1文字下げて書きます。
起辞とは、書き出しから用件に移る際の接続詞で、「さて・ところで・早速ながら・このたびは・今般」などがあります。
返信の際には「ついては・つきましては」などを使います。
「本文」:用件
起辞に続いて、用件を書きます。
移転・転任・結婚・転職・退任・お礼など、さまざまな用件があります。気配りをしつつも、誤解や不明のことが生じないよう、具体的に書きましょう。
「末文」:結びの挨拶
「本文」の用件の後に、改行をし、1文字下げて書きます。
基本的には相手の健康や繁栄を願う言葉を書きます。さらに、伝言を添える場合もあります。
「末文」:結語
結びの挨拶と同じ行の最下部か、改行した次行の下方へ配置します。
「頭語」と対応させる言葉を用います。具体的には、次のようなものがあります。
【一般的な結語・返信や再送する場合の結語】
敬具・拝具・拝白・敬白・拝答
【特に丁重な結語】
敬白・謹白・謹具・再拝・謹言・頓首
【急ぎの場合・時候の挨拶を省略した場合の結語】
早々・怱々・不一・不二・不備・不尽
「後付け」:日付
「末文」の後に改行し、2~3字下げて年月日を書きます。
「後付け」:署名
日付の次行の下方に、差出人名を(自筆で)書きます。
「後付け」:宛名・敬称
署名の次行の上方に、相手の氏名を書き、「様」「先生」などの敬称を添えます。
宛名が連名の際は、敬称はそれぞれに付けます。なお、「御中」は会社や団体に用います。
「副文」
副文とは、書き漏れたことや付け加えたいことを短く添える文章のこと。「追伸・追白・尚々」などと書き出します。
ただし、副文には「重ねて申し上げる」というニュアンスがあるため、お悔やみ状や目上の人への手紙では使用しないのがマナーです。
時候の挨拶についての注意点
お詫び状や見舞状など、急な手紙では頭語や時候の挨拶を省き、以下のようにすぐ本文に入ります。
お詫び状(例文)
・先般はご迷惑をお掛けし、大変申し訳なく思っております。
災害の見舞い状(例文)
・このたびの台風○○号による浸水、被害が大きく心配しております。状況はいかがでしょうか。
病気の見舞状(例文)
・このたびはご入院されたとのこと、驚いております。
病気見舞いでは「たびたび」「四」などの忌み言葉に気を付けましょう。
また、長期の入院で文通のようにやりとりしている手紙では、季節の言葉も入れて良いでしょう。
SNS時代だからこそ手紙の温もりを
従来の手紙とは、知っている人に出し、近況をやりとりするものでした。
しかし、SNSによるやりとりが日常となった現在、まだ会ったことのない相手に送る手紙もあれば、日頃から近況を知っている相手に送る手紙もあります。
そんな時、ふと時候の挨拶を織り交ぜた丁寧なメッセージが届くと、対面しているにも似た温かい手触りを感じてもらうこともできるでしょう。
(前田めぐる)
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※画像はイメージです
※この記事は2021年04月08日に公開されたものです