目上の人にはNG? 「ご了承ください」の正しい使い方
ビジネスのさまざまな場面で頻繁に使われる「ご了承ください」という言葉。その意味や使い方をしっかりと把握できていますか? 今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「ご了承ください」の意味や使い方、言い換え表現を教えてもらいました。
「あらかじめご了承ください」や「その点、何卒ご了承ください」という言葉。
手紙やメールだけでなく、店頭の張り紙などで毎日一度はどこかで目にしているのではありませんか?
使う機会の多い言葉だけに、その意味や使い方を改めてしっかり把握しておきたいですね。
「ご了承ください」の意味
まずは、辞書で意味を調べてみましょう。
りょうしょう【了承】
承知すること。事情を理解し、それでよしとすること。諒承。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
また、「了承」という単語を使った「ご了承ください」を分解すると、こうなります。
・ご(尊敬を示す接頭語)+了承+ください
「ご了承ください」は、相手に承知してほしい場面で使う尊敬の表現です。
それぞれの漢字には、次のような意味があります。
【了】リョウ・お-わる
(1)一つのことがすっかりおわる。けりがつく。おわる。おえる。
(2)よくわかる。さとる。【承】ショウ・ジョウ・うけたまわ-る・う-ける
(1)前のものや上のものをうける。うけつぐ。
(2)相手の意向を受け入れる。聞き入れる。また、承る。
(『例解新漢和辞典』三省堂)
以上のことから、「ご了承ください」は「こちらの意向をご理解の上、受け入れてください」という意味です。
「ご了承ください」は目上の人に使わない方がベター
「ご了承ください」は基本的に、目上の人に対しては使いません。
使ってはいけないわけではありませんが、「理解して受け入れてください」という強制的に承諾させるようなニュアンスを持つため、目上の人に使う言葉としては適していません。
主に、取引先をはじめとした社外の人に対して使いますが、相手や場面によってはさらに丁寧に表現した方がいい時も多々あるので、それらについては後述します。
「ご了承ください」は、どんな時に使えるの?(例文付き)
「ご了承ください」は、「相手にも自分にも大きな非がなく、仕方のない事情によるもので、それを相手にも受け入れてもらえると推測できる場面」であれば、無理なく使うことができるでしょう。
具体的に例を挙げると、以下のような場面で使用することができます。例文と一緒に紹介します。
やむを得ない事情で得意先への納品が遅れる時
例文
・今回のお届けに関して、東日本一帯の降雪により、商品のお届けに遅延が発生しているようです。その点、ご了承ください。
・ただいま、年末年始で税関が混雑しているようです。到着が遅れる可能性がありますこと、ご了承ください。
得意先からの急な依頼にすぐ対応できそうにない時
例文
・ただいま、連休前で案件が立て込んでおります。ご希望の日程では対応できない場合があります。ご了承ください。
予約がいっぱいで、お客さまの希望に添えない時
例文
・本日販売分のチケットは完売いたしました。ご了承ください。
「ご了承ください」をさらに丁寧な言い方にするには?
「ご了承ください」は、通販や窓口業務などのメール対応で使われているのをよく見かけます。
すでに丁寧な表現ではありますが、いくら「やむを得ない事情を理解して受け入れてほしい」からといって、「ご了承ください」のみで終わるのは、いかにも命令口調で失礼だと感じる人がいないとも限りません。
そのため、目上の相手などに対しては、さらに丁寧な表現を心掛けた方が良いでしょう。
「ご了承ください」をより丁寧にした表現を以下に掲げます。
「あらかじめ、ご了承くださいませ」
「あらかじめ」で事前に承知してほしいことを、「ませ」で丁寧さを表します。ただし、「ませ」はやや女性的な響きを持つ言葉です。
例文
・ただいま、キャンセル待ちの状態でございます。キャンセルが出ない場合もありますが、あらかじめ、ご了承くださいませ。
「ご了承のほどお願いいたします」
謙譲語「お願いいたします」と組み合わせることで、一層丁寧な表現になります。
例文
・何卒諸般の事情をおくみ取りいただき、ご了承のほどお願いいたします。
「ご了承くださいますよう、お願い申し上げます」
「お願い申し上げます」と尊敬表現を加えることで、敬意を高めています。
例文
・感染防止対策のため、現在テレワークで対応しております。ご了承くださいますよう、お願い申し上げます。
「ご了承ください」の言い換え表現
前段で紹介したように、「ご了承ください」のみで使うよりも、丁寧な表現を加える方が柔らかい印象になります。
しかし、それでも「ご了承」という言葉そのものが、全方位にわたって満足度の高い表現かというと、そうでもありません。
「ご了承」という言葉の「承(る)」という文字に、「目上の人の命を受けてその通りにする」「つつしんで聞く、拝聴する」という謙譲の意味があるからです。
最近では、謙譲の意味がある語も、「お申し込みください」などと同様、ビジネス上の決まり文句のように使われるので、本来の意味は薄れています。
そのため、そこまで深くこだわる人もかなり少ないと思われるので、「ご了承」を使うこと自体に問題はありません。
しかし、もしも万全を期したい場合には、次のような別の表現で言い換えるといいでしょう。
「ご理解ください」
「理解」とは、「物事の道理が分かること」という意味で、やむを得ないことへの理解を求める時に使います。
例文
・先日の件、社内会議で複数社のコンペを行うこととなりました。私としては御社にと思っていたのですが、社内事情ゆえ、何卒ご理解ください。
「ご賢察ください」
「賢察(けんさつ)」とは、「推察」の敬意を高めた語で、「お察し」という意味です。
例文
・今年度の売り上げでは、次年度の広告予算を大幅に削減するしかありません。ご賢察のほどよろしくお願いいたします。
「ご諒察(ご了察)ください」
「諒察(りょうさつ)」とは、「(相手の状態を)思いやりをもって推察すること」という意味です。「ご了察」と書いても、問題ありません。
例文
・非常時でもあることから、次回のイベントは中止と決定いたしました。ご諒察(ご了察)くださいますよう、お願いいたします。
薄れゆく言葉の意味を知ることの大切さ
いかがでしたか?
「ご了承ください」には、「こちらの意向をご理解の上、受け入れてください」という意味があり、目上の人に使う場合は言い換え表現を用いた方がより良いということを紹介しました。
「承(る)」や「申(す)」など、文字そのものに謙譲の意味合いが含まれている語句の取り扱いは、目上の人に対して使うにはためらうことがありますね。
元々の謙譲の意味は薄れているので、そこまで気にする必要はありませんが、文字や語句本来の意味を知識として知っておくことは、言い換えを考えて多様な対応をする場合の助けとなります。
(前田めぐる)
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※この記事は2021年01月27日に公開されたものです