ケアレスミスを減らすための4つの対策
ケアレスミスをしてしまう、と悩んだ経験はありませんか? ケアレスミスとは、「注意していれば防げたはずの間違いや失敗」のことを意味します。今回は心理カウンセラーの笹氣健治さんに、ケアレスミスしやすい人の特徴や、ミスを減らすための方法などを解説してもらいました。
どんな人であってもミスをする時があります。
ミスをしないように慎重に行動していたとしても、うっかりミスをしてしまうことが誰にだってあるものです。
そんな、いわゆる「ケアレスミス」は、どうして起きるのでしょうか? また、どうすれば避けることができるでしょか?
ケアレスミスの確率を少しでも下げる方法を一緒に考えてみましょう。
「ケアレスミス」の意味
まずは「ケアレスミス」とはどんなミスなのか、確認しておきましょう。
ご存じかとは思いますが、念のために説明すると、「ケアレス」は英語であり、「ケア」と「レス」という言葉に分解できます。
「ケア」は、「スキンケア」「ヘアケア」と言うように、「(お肌や髪の)手入れ、配慮、気配り」という意味の単語です。
一方で、「レス」は単語の後ろにつけると「……がない」という意味になります。
「コードレス」(「電線がない」)、「エンドレス」(「終わりがない」)の「レス」です。
ですから、「ケアレス」とは、「気配りや配慮がない」という意味になり、「ケアレスミス」は、「気配りや配慮がないことで生じるミス」となります。
一般には、注意していれば防げたはずの間違いや失敗のことを、「ケアレスミス」といいます。
「ケアレスミス」が起きやすい場面
では、どういう時にケアレスミスが起きやすいのでしょうか?
典型的な5つのケースには次のようなものがあります。
(1)ぼんやりミス
目の前の作業に集中せず、ぼんやり考え事をしながら作業していることで生じるケースです。
何か気になることがあって「心ここにあらず」の状態になっていると、注意力散漫になって、単純な入力ミスや計算ミスなどを犯してしまいやすくなります。
(2)体調不良によるミス
頭がボーッとなって集中力が低下しているために犯してしまうミスです。
頭痛、風邪といった体調不良の時に起こりがちなケースです。
あるいは、繁忙期や人手不足などで残業や休日出勤が重なって寝不足状態となっていると、ふいに睡魔が襲ってきたり、意識が一瞬飛んだりしてしまうことがありますが、そんな時は簡単な作業でも間違いを犯してしまうものです。
(3)うっかりミス
やらなければならないことを、ついうっかり忘れていた、というのもケアレスミスの1つです。
後でやろうと思って保留していた仕事、頼まれていた急ぎではない仕事など、今すぐにやらなくていいことを後回しにしていたら、いつの間にかすっかり忘れていた、といった時に起こるミスです。
誰しもうっかりミスはありますが、もしかすると、周囲に比べてその頻度が高い可能性も。10の質問からあなたのうっかり度を診断します。
(4)勘違いによるミス
打ち合わせの日時を手帳には正しくメモしていたのに、なぜか今日ではなくて明日だと思い込んでいた、といった勘違いをした経験は誰でも1度や2度はあると思いますが、これもケアレスミスだといえるでしょう。
待ち合わせ場所の勘違い、提出すべき資料の勘違いなど、知らず知らずの内にそう思い込んでしまっていて、何の疑いもないまま後でミスだったと気付くケースです。
(5)慢心によるミス
いつもやり慣れている発注業務。目を閉じてでもできる、といえるくらい身に付いている手順だったはずなのに、なぜか数量を間違えて入力してしまった……。
このように、「簡単にできる」という慢心が生むミスもあります。
忙しくてバタバタしていたわけでもなく、疲れてボーッとしていたわけでもないのに、なぜか間違えてしまった。いくら熟練しているとはいえ、人間ですから常に完ぺきとはいかないものです。
ケアレスミスが多い人の特徴とその原因
ケアレスミスは誰もが起こし得るものです。
とはいえ、他人と比較してケアレスミスが多い人がいます。それは例えば、次のような人たちです。
(1)せっかちな人
仕事をテキパキこなし、多くの作業を素早く処理する人は、少しせっかちな性質があるのかもしれません。
仕事が早いのはいいことですが、ハイペースで仕事をしていると、どうしても注意が隅々まで行き届かず、細かい部分を見落としたり、間違いに気付かないまま先に進めてしまったり、というケースも出てきます。
そんな場合にケアレスミスが生じやすくなるのです。
(2)ずぼらな人
何でもきっちりやらないと気が済まない几帳面な人がいる一方で、何でもいい加減で中途半端にする人がいます。
そういうずぼらな人がケアレスミスを起こしやすいのは、当然のことといえるでしょう。
細部までしっかりやろうという意識が乏しく、「ま、こんな感じでいいだろう」と適当に作業を進めてしまい、その結果、不注意による間違いを起こしてしまうことが多くなります。
(3)自己抑制ができない人
翌日も仕事があるというのに、夜遅くまでSNSやゲームをしたり、終電まで飲み歩いたりしていると、どうしても寝不足になり、疲労も回復しないので、日中の仕事に支障をきたすことになります。
そういう状態で作業していれば、注意力不足でケアレスミスが生じるのも仕方がないといえるでしょう。
その場の快楽を優先し、先のことを考えて自己抑制できないと、後でツケが回ってくるということです。
注意していたはずなのに「しまった……」と思った経験はありませんか? 10の質問からあなたのうっかり度を診断してみましょう。
ケアレスミスを減らすための方法
ケアレスミスと一言で言っても、謝って訂正すればいい軽いレベルのものから、大きな損失につながりかねない深刻なレベルのものまであります。
いずれにしろ、どんなレベルのミスであっても、本来は避けられるはずのミスなわけですから、ケアレスミスを減らす努力はするべきでしょう。
では、どのような点を意識すればいいのか、また、どんな対策をとればいいのか、基本的なところを押さえておきましょう。
(1)危機意識を持つ
誰にでもケアレスミスはあると言いましたが、だからこそ、自分もいつやってしまうか分からない、という危機意識を常に頭のどこかで持っておくことが重要です。
上で挙げた典型的な5つのケースに当てはまりそうな場面になったら、より謙虚に、より慎重になって行動しましょう。
それだけでも、ケアレスミスの起こる確率は格段に下がるはずです。
(2)コンディションを整える
ケアレスミスが生じないようにするために、最も簡単に取り組めるのが、寝不足の解消です。
十分な睡眠が取れていないと、疲労が回復せず、日中の集中力低下を招きます。
特に、疲労が蓄積していると、免疫力が低下して病気になりやすくなり、意欲の減退や作業効率の悪化にもつながるので、寝不足は百害あって一利なしです。
寝不足の解消には、とにかくしっかり睡眠をとることです。
仕事がある前日の趣味、遊び、気晴らしはほどほどにして、6~8時間の睡眠時間は確保しましょう。
勤務時間以外は自分の自由な時間であることは間違いありませんが、仕事に支障をきたすような過ごし方は慎むべきことです。
(3)指差し確認をする
電車のホームで駅員の方が様々な方向を指して安全確認をしている姿を見たことがあると思います。
機械装置を扱う現場でも、同様の指差し確認を行っていますが、こうすることにより、問題が起こりやすい部分にしっかり意識を向けて再確認できるので、事故が起こりにくくなるのです。
この習慣を、自分の仕事にも取り入れてみるといいかもしれません。
例えば、入力作業した時に、モニター画面の入力箇所を1つ1つ指差しながら、間違いがないかをしっかり再確認する。
あるいは、1日のスケジュールを確認する習慣を作り、手帳に書き込んだ内容を1つ1つ指差しながら、勘違いがないかどうかチェックする。
ポイントは、1度やった作業を再確認するということ。これでケアレスミスは大幅に少なくできるはずです。
(4)ダブルチェック体制を作る
ケアレスミス防止には、再確認が最も有効な手段です。
指差し確認は、あくまでも自分の目で行う再確認作業ですので、どうしても先入観にとらわれて、間違いや勘違いを見過ごしてしまう場合があります。
より正確を期すために、自分以外の人にも確認してもらうことで、間違いの可能性をさらに低くすることができます。
職場で別の社員が確認するルールが設けられていない場合は、個人的に誰かと協力し合って、ダブルチェック体制を作ると、安心して作業を進めることができるようになるでしょう。
ダブルチェックすると、その分、時間が余計にかかりますし、面倒くさく感じるかもしれません。
でも、ケアレスミスをして深刻な問題に発展するよりはまだまし、と考えるのもありではないかと思います。
自分次第で「ケアレスミス」を減らすことはできる
ケアレスミスをゼロにすることは無理でも、減らすことは自分次第で可能です。
とはいえ、常に意識していても、つい忘れてしまう時があって、そういう時に限ってケアレスミスが生じます。
だからといって、諦めてしまうのは良くありません。
起きる時は起きると割り切りつつ、慎重に確認する習慣を、ぜひ持ち続けていきたいものです。
(笹氣健治)
※画像はイメージです
※この記事は2020年07月27日に公開されたものです