価値観の違う人とうまく付き合う方法
人は誰しも違う価値観を持っています。自分とは違う考え方の人と出会った時、どうすれば受け入れることができるのでしょうか? 心理カウンセラーの高見綾さんに、価値観の違いを感じる瞬間と、折り合いの付け方について伺いました。
「人それぞれ価値観は違う」と頭では理解していても、実際に仕事や恋愛などで価値観が合わないと感じると、どうしたらいいのか戸惑ってしまう人が多いと思います。
価値観の違いはなぜ生まれるのでしょうか。価値観が違う人とはどう付き合っていけばよいのか、折り合いの付け方を考えてみました。
価値観の意味。価値観を持つとはどういうこと?
まず価値観の意味を確認しておきましょう。
価値観とは、物事を評価する際に基準とする、何にどういう価値を認めるかという判断のことをいいます(出典:『デジタル大辞泉(小学館)』)。
例えば、人生において最も大切なのは「自由」であると考える人がいるとします。また別の人は「家族と過ごす時間」と答えるかもしれません。
この、「人生において何を大切に思って生きているか」が、価値観を持つということです。
価値観は1つだけではなく複数あり、優先順位も人によってバラバラです。絶対に譲れない価値観もあれば、許容できる優先順位の低いものもあります。価値観はさまざまな経験によってアップデートされていくため、考え方が変化するのも珍しいことではありません。
価値観の違いを感じる瞬間の例
私たちはどういった時に価値観の違いを感じるのでしょうか。仕事と恋愛、それぞれにおいて、よくある違いを紹介します。
仕事で感じる瞬間
まずは、仕事をしていく上で感じる価値観の違いについてです。
(1)仕事に対する向き合い方の違い
生きていく上で仕事にあまり価値をおいていない場合は、私生活を犠牲にしてまで残業することに意味を見いだせない人もいます。また、与えられた仕事を淡々とこなせばいいと考えている人には、業務での発案や改善をするといった積極性はあまり見られないかもしれません。
やるからにはクオリティの高い仕事がしたいと思っている人からすると、イライラすることもあるでしょう。
(2)職場の人間関係に対する価値観の違い
仕事とプライベートを分けている人は、会社は仕事をする場所だから無理に職場の人と仲良くしなくても良い(仕事に支障が出ない程度のコミュニケーションが取れれば良い)と考えます。
一方で、職場の人と親密になりたいと考えている人もいます。会社側が後者で、社員が前者の価値観を持つ場合、社員は社内イベントに参加するように求められてストレスを感じてしまうことも。
(3)教育に対する考え方の違い
「会社(上司・先輩)は何も教えてくれない」と言う人は、会社が教育してくれるものだと思っています。
一方で、まずは自分で何とかしようと考えている人は分からないことを自ら調べ、それでも分からない場合は上司や先輩に相談します。この考え方の違う両者が仕事の引き継ぎをすると、話がかみ合わなくなることも。
恋愛で感じる瞬間
次は、恋愛面での価値観の違いを感じる瞬間の例です。
(1)お金の使い方の違い
お金はあればあるだけ使ってしまうタイプの人と、将来のことを考えてコツコツ貯蓄するタイプの人がカップルだと、お互いのお金の使い方にびっくりすることも。堅実な人は、将来相手との結婚を考えた時に不安になってしまうかもしれません。
(2)異性との距離感の違い
浮気のボーダーラインに対する考え方の違いは気になる人が多いかもしれません。浮気まではいかなくても、異性の友人と二人きりで会うのはダメと考える人もいますし、別に気にしないという人もいます。
(3)会う頻度の違い
毎日のように一緒にいたいと思っている人と、自分の時間も大切にしたいから、適度な距離感で付き合っていきたいと考えている人がお付き合いをすると、気持ちがすれ違いやすくなります。
前者のタイプからすると寂しく感じますし、自分のことはどうでもいいのかなと不安になることもあるでしょう。後者のタイプからすると、距離が近過ぎるとしんどく感じてしまうかもしれません。
価値観の違いはなぜ起こるのか
同じ価値観を持つ人はいないといわれていますが、ではなぜ価値観の違いは起こるのでしょうか。理由を見ていきましょう。
(1)親からの教育や生活環境の違い
子どもは親の考え方や振る舞い方などをコピーしながら成長しますので、幼少期に親からどういった教育を受けてきたか、どんな生活環境で育ってきたのかが価値観に大きく影響します。
例えば両親が不仲だったために、結婚に対して良いイメージが無いという人は、絶対に結婚したいと考える人とは結婚に対する価値観が違うかもしれません。
(2)元々の考え方の違い
同じ親元に生まれ育っても、兄弟姉妹で価値観が全く違うことがあるように、生まれ持った性格や考え方の違いも影響します。
(3)周りの人からの影響
環境が自分に与える影響は大きく、どんな人たちと付き合っているのかによって価値観は変わります。例えば、会社員の友人が多い人と、個人事業主や経営者の友人が多い人とでは価値観は異なるはずです。
(4)さまざまな経験の違い
個人的な体験をきっかけに、価値観が変わることも。例えば震災など、大きな出来事を経験したことをきっかけにパートナーの存在の大切さに気付くなど、生き方が変化することも少なくありません。
価値観の違いが起きた時に受け入れる方法
「価値観はみんな違うもの」と理解していても、実際に価値観が違う場面に遭遇すると、戸惑ってしまいますよね。価値観の違う人とは、どうやって折り合いを付けていけばいいのでしょうか。
(1)「この人はそう考えるんだな」と受け止める
自分の価値観は当たり前すぎてあまり自覚が持てないものです。そのため、自分と違う価値観に触れると、「あり得ない」「なんで?」と反応してしまいがちですが、相手には相手の生きてきたストーリーがあります。
あまり深刻にならずに、まずは「この人はそう考えるんだな」と受け止めましょう。
(2)相手を変えようとしない
自分の言い分ばかり話したり、相手を変えようとしたりしないことがとても大切です。相手を変えようとすると、「今のあなたではダメ」というメッセージだけが相手に伝わります。
これを彼氏などに対してやると、彼氏は自信をなくすか、かたくなになって話を聞こうとしなくなるかどちらかになってしまうことが多いです。
(3)相手の価値観を理解しようとする姿勢を持つ
自分も自分の価値観を分かってもらいたいと思っているように、相手も自分の価値観を否定されたくはないものです。
相手の価値観を否定せず、どうしてそういった考えを持つに至ったのか、相手の本音を理解しようとする姿勢が必要です。こちらが歩み寄ると、相手も歩み寄ろうとしてくれます。
(4)お互いに本音を話してすり合わせをする
恋愛では、どちらか一方が我慢をする関係は、一時的には良くても長い目で見るとうまくいきません。
どうしてその価値観を持つに至ったのか、それはどれくらい大切なものかなど、お互いに本音を話してすり合わせをしましょう。何回も何回も話す機会を持つのがポイントです。
(5)違いを面白がる
「価値観が違う人は自分に合わない」と判断してしまうと、ほとんどの人と合わないことになります。すぐに受け入れる必要はありませんが、価値観が違うことを面白がれるといいかもしれません。
「へぇ、そんな考え方をするんだ!」と、新しい発想を取り入れるようなつもりで話を聞くと、自分の視野が広がります。
価値観の違いに気付くことで自分の幅を広げよう
「価値観はみんな違う」ということは、知識としては知っていても、感情レベルで受け入れられている人は少ないかもしれません。
「自分にとっての当たり前は、他の人にとっては当たり前ではない」と理解することは、自分の幅を広げることにもつながります。
「この人はこんな見方をするんだな」と、価値観の違いを面白がれるようになるといいですね。
(高見綾)
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※この記事は2020年07月18日に公開されたものです