焦燥感の意味や使い方は? 原因&心理学を用いた対処法8つ
「焦燥感」とは、気持ちの整理ができず、不安な状態を表す言葉です。焦燥感に駆られる理由とは一体何なのか、気持ちを落ち着けるにはどうすればいいのかを心理カウンセラーの高見綾さんに伺いました。
ほとんどの人は、気持が焦って漠然とした不安感に駆られた経験をしたことがあると思います。焦るとイライラしたり、考え過ぎて眠れなくなったりしてしまうこともありますよね。
その気持ちを「焦燥感」といいます。
では、焦燥感とは具体的にはどういう意味で、何が原因で起こるものなのでしょうか。焦燥感に駆られたときに焦りを抑える方法も併せて紹介します。
焦燥感とは?
焦燥感とは、「しょうそうかん」と読みます。
具体的にはどんな意味なのでしょうか。まずは定義を知っておきましょう。
焦燥感の意味
焦燥
いらいらすること。あせること。
(出典『デジタル大辞泉/小学館』)
焦燥感とは、物事が思うようにいかずに焦ったり、イライラしたりしている様子を表します。気持ちの整理ができず、不安な状態になっているときに使う言葉です。
焦燥感の使い方
実際に会話や文章では「焦燥感」単体ではなく、「焦燥感に苛まれる」「焦燥感が募る」といった言い回しで使うことが多いでしょう。
例文
・仕事への不安から焦燥感に苛まれ、集中力が低下している
・思うようにいかず、焦燥感が募る
・焦燥感に駆られて思いもよらない行動をしてしまった
上記のように、人の苛立ちや焦りといった感情を表現する時に使用します。
焦燥感に駆られるとどうなるのか?
では、焦燥感に駆られると、私たちはどのような状態になるのでしょうか。
(1)集中力が続かず何も手に付かなくなる
焦燥感に駆られると、「何とかしなくちゃ」とは思うものの、何も手に付かなくなります。頭の中がそのことでいっぱいになり、目の前のことに集中することが難しくなります。
(2)判断能力が落ちる
焦っているので、冷静に物事を考えることが難しくなります。このままではいけないという恐れから、本来であれば不要なセミナーに申し込みをするなど余計な出費をしてしまうことも。
(3)ミスが増える
集中力が落ちるので、仕事などでいつもはしないようなミスが増える傾向にあります。焦って何とかしようとして空回りするという悪循環にハマりやすいです。
ケアレスミスしやすい人の特徴や、ミスを減らすための方法を紹介します。
(4)一発大逆転の魔法を求めやすくなる
早く何とかしたいと思い過ぎて、今の自分の状況が一気に解決するような方法を求めがちです。しかし実際にはそんな魔法のような方法はなく地道に取り組むしかないのです。
(5)不安感が大きくなり心の余裕が無くなる
焦燥感に駆られているときは、何らかの不安を抱いています。心の中がネガティブな思いでいっぱいになるので、いつもなら流せるようなことでもイライラしたりしがちです。
気持ちが落ち着かない心理的な理由や、気持ちを落ち着かせる方法を紹介します。
(6)休日にも仕事のことなどを考えて休めない
常に頭の中に気になることがあるため、休みの日にもそのことを考えてしまい、気が休まりません。他のことにも手がつかず、せっかくの休日に何もできないということもあるでしょう。
焦燥感に駆られる8つの原因・理由
なぜ私たちは焦りを感じるのでしょうか。焦燥感の原因を解説します。
(1)やるべきことに追われている
仕事や家のことなど、やるべきことがたくさんあって、時間に追われているときは焦燥感を覚えるものです。
締め切りがあるのに仕事が終わっていなかったり、トラブルが起きたりして対応に時間を取られていると焦りに拍車がかかります。
(2)やるべきことはあるのに、やる気が出ない
目の前にやるべきことはあるものの、「やりたくない」「全然やる気にならない」とき、私たちは焦りを感じます。やることは分かっているのに、動けない自分に対してイライラしてしまうのです。
無気力になってしまう原因や、やる気を出す方法などについて紹介します。
(3)プレッシャーを感じている
周りからの期待に応えたい、むしろ応えなければならない、といったプレッシャーがあるときも焦りを感じます。
設定しているハードルが高過ぎると、「今の自分にできるだろうか」と、不安な気持ちが生じやすくなります。
仕事のプレッシャーやストレスと向き合う方法を紹介します。
(4)想定外の事が起きた
自分の思う通りに進められるときはいいですが、想定外のトラブルが起きたときに冷静さを失ってしまう人は多いです。自分が対応できる範囲を超えていると思うと、焦ってパニックになってしまいます。
(5)理想と現実にギャップがある
例えば「30歳までに結婚」「恋愛も仕事も充実している私」というように、理想の自分を思い描いていていたのに、現実との間にギャップがあるときも「こんなはずじゃなかったのに」「なんでうまくいかないの」と焦りを感じます。
(6)周りと比べ過ぎている
「周りはどんどん彼氏ができているのに、私だけまだいない」というように、置いていかれたような気分になったときや、「なんで私だけうまくいかないんだろう」と将来に対する不安が芽生えたときは焦燥感に駆られやすくなります。
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(7)不安を煽る情報に触れている
テレビやネットなどで「こんなに恐ろしいことが起きました」などの不安や恐れを煽る情報にたくさん触れていると、「どうしよう」「怖い」と不安に飲み込まれてしまうことがあります。
(8)将来に対する漠然とした不安がある
自分の将来に対する漠然とした不安や恐れがあるけれども、こうなりたいという具体的なイメージが無いときは、「このままでいいのかな」と気持ちばかりが焦ってしまいがちです。
具体的に悩んでいることを聞かれるとパッとは出てこないけれど、常に不安がつきまとう……。そんな「漠然とした不安」を解消する方法を紹介します。
焦燥感を解消する対処法とは?
では、焦燥感を感じたときはどのように対処をすればいいのでしょうか。焦りを緩和させる方法を紹介します。
(1)やるべきことを箇条書きにする
時間に追われているようなときは、やるべきことを紙に箇条書きしてみましょう。「これだけやればOKだな」と視覚的に分かるので、それだけでも焦りがトーンダウンする効果があります。
(2)漠然とした焦りは整理する
漠然とした焦りは、実体以上に不安が膨らみやすいので、焦りの正体を突き止めましょう。
何に不安を感じているのかを具体的に紙に書き出し、それに対して今から行動できることを3つ程度書き出します。やるべきことが見えるだけでも心は落ち着きを取り戻します。
(3)不安を煽る情報は見ないようにする
目的が無いままにテレビやネットを見ていると、ネガティブな情報から不安を煽られてしまうことがあります。
情報が欲しいときは目的を持って取りに行き、それ以外は見ないというように自分の中で線引きをしましょう。
(4)自分の緊張をほどく声掛けをする
「ちゃんとやらなくちゃ」というプレッシャーで焦っているときは、自分を追い詰め過ぎないことが大切です。
「まあ、やるだけやって駄目ならいいや」「とにかく楽しもう」など、緊張が和らぐような言葉を自分に掛けてあげましょう。
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(5)好きなことをする
やるべきことはあるのにやる気が出ないときや、焦り過ぎて何も手に付かないようなときは、「今すぐはできないな」と割り切って、一旦自分の好きなことをやりましょう。
体を動かしたり音楽を聴いたり、お昼寝をしてみたりしてリラックスする時間を持つといいですね。
(6)信頼できる人に話してみる
焦燥感が募ってどうしようもないときは、思いきって信頼できる人に打ち明けてみましょう。話すうちに、今後のヒントが見つかるかもしれませんし、気持ちが整理されて心が軽くなるはずですよ。
(7)あえて何もしない時間を持つ
焦っているときは心の中が忙しいです。そんなときに冷静に物事を考えるのは難しいので、一旦何もしない時間を持ちましょう。例えば、空を見てボーっとする時間を5分持つだけでも心が落ち着いてきます。
(8)2~3年前の自分と今の自分を比べる
周りの誰かや理想の自分と比べて焦っているときは、今の自分では駄目だと思っています。そんなときは2~3年前の自分と今の自分を比べてみてください。
以前に比べたら良くなっている点がきっとあるのではないでしょうか。「なんだかんだ私、いい方に変わってる」と思えれば気持ちが落ち着いてきます。
「焦燥感」の類語と英語表現
最後に、「焦燥感」の類語と英語表現を紹介します。
「焦燥感」の類語・言い換え表現は?
「焦燥感」に似た意味の言葉は下記となります。
切迫感
期限や危機が迫って、緊張している。
苛立ち
思うようにいかないことや不快感を抱くことで気持ちが高ぶっている。
じれったい
物事が思うようにならず、気持ちが落ち着かない。
焦心(しょうしん)
思い煩うこと。焦ること。
どれも、自分の思い通りにならないことから気持ちが焦っていることを表す言葉です。
「焦燥感」の英語表現は?
直接的な英語表現はありませんが、焦りやイライラするという意味の「Frustrated」を使って表現することができます。
・I feel frustrated as my work was not going as smoothly as I expected.(思うように仕事が進まず、焦りを感じています)
不安の正体が分かれば、心は自然と落ち着きを取り戻す
どの人も、不安から焦ってしまうことはあるものです。焦っても良くないと分かっていても、「早く何とかしなくちゃ」と思ってしまうものですよね。
そんなときは、一旦他の好きなことをやって気持ちを落ち着けたり、紙に書き出して心の中を整理したりしてみましょう。
不安の正体が分かれば自然と焦りは落ち着いてくるはずですよ。
(高見綾)
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※この記事は2020年06月11日に公開されたものです