「私なんて……」という気持ちの撃退法
「自己肯定感が低い」のは、もうどうしようもないと諦めていませんか? 自己肯定感を高める方法はちゃんとあります。心理カウンセラーの高見綾さんに、自己肯定感を低くしてしまう言動と合わせて詳しく解説してもらいましょう。
心理系の記事ではよく登場する「自己肯定感」という言葉。実はとても大事なものなのです。
今回は、自己肯定感が高い人と低い人の言動や考え方の違いを詳しく説明します。「私なんて」と思いがちな癖を直し、自己肯定感を上げるために日頃からできる方法を紹介しますので、ぜひ試してみてくださいね。
「自己肯定感」とは?
自己肯定感とは、「私は私でOK」と思える感覚のこと。
「私はここにいてもいい」「私は大切な存在だ」と思うことができ、自分が抱いた感情や価値観、能力などを疑うことなく受け入れることができます。自分に対する信頼があり、長所も短所もひっくるめて「これが私」と思えている状態です。
自己肯定感が高い人は心に余裕があり、他人のことも尊重して認めることができます。
自己肯定感が高い人・低い人の違い
では、そんな自己肯定感の高い人にはどのような特徴があるのでしょうか? 自己肯定感の低い人との違いから詳しくご紹介します。
(1)人から褒められたときの反応
自己肯定感が高い人は「わぁ、うれしい! ありがとう」と素直に喜びます。
一方で低い人は、言葉の意味通りに受け取ることができません。「本当にそう思っているのかな? お世辞じゃない?」と疑ったり、「でも他のことは全然ダメだし」と卑屈になったりします。
(2)問題が起きたときの対応方法
人間関係や仕事がうまくいかなかったときの対応方法にも違いが現れます。
自己肯定感が高い人は、なぜうまくいかなかったのかの事実を確認し、自分に非があれば修正して謝ります。もし、相手の問題や仕組みに原因があれば、適切な対処法を考えようと前向きに行動するでしょう。
しかし、自己肯定感が低い人は、原因を探る前に「私が悪いんじゃないか?」と思ったり、誰かを責め始めたりして、そもそもの問題解決に時間がかかります。
(3)新しいことにチャレンジするときの心の持ち方
自己肯定感が高い人は、ベストを尽くすことにだけ集中します。仮に失敗したとしても、チャレンジした自分を肯定できますし、軌道修正してまた頑張ろうとします。
一方自己肯定感が低い人は、失敗することを恐れてチャレンジしないか、やってみても本気を出さないことが多いです。「全力を出したのにうまくいかなかった」と思うと、さらに自信がなくなってしまうからです。
(4)人間関係を深めていくときの心理
自己肯定感が高い人は、人を喜ばせることが好きで、楽しみを一緒に分かち合おうとします。「この人はどんな人かな?」と興味を持ち、オープンにいろいろな話をして関係を深めていきます。
一方で自己肯定感が低い人は、相手の気分を害さないかどうかを気にして萎縮しがち。「どう思われているのだろう?」と不安になるので、普通に接しているだけでも気疲れしやすいです。
(5)人から悪い点を指摘されたときの反応
自己肯定感が高い人は、素直に人の話を聞いて、自分が悪かったなと思った点は修正しようとします。その過程で、多少落ち込んだとしても間もなく元に戻ります。
ところが自己肯定感が低い人は、自分が全否定されたように感じて相手との関係がぎくしゃくしてしまうことも。自分の非を受け入れられない場合は、「あなただってこんなひどいところあるのに!」と話をすり替えて攻撃し、自分を守ろうとします。
自己肯定感を低くしてしまう言動
どうして、自己肯定感は低くなってしまうのでしょうか? 知らず知らずのうちにしてしまっている、自己肯定感を低くしてしまう要因となる言動をお伝えします。
(1)一人反省会が多い
日頃から自分ができたことよりも、できなかったことに注目する癖があると、「あのとき、あんな行動を取らなければよかった」「もっと良い伝え方あったんじゃないかな……」などと、一人反省会が増えます。
もちろん改善点をチェックすることは成長のために大切なのですが、本当はできていることもたくさんあるはずです。良い点を見ずに減点方式で評価していると、いくら頑張っていても、どれだけ成果を出していても自信が持てるようになりません。
(2)自分の感情を否定する
「本当はあの人が嫌い」「これはやりたくない」など、ネガティブな感情が湧いたときに、「そんなふうに思っちゃいけない」と抑圧する癖はありませんか?
自分が自分を受け入れることができないぶん、他人に「私を受け入れてほしい」と求める気持ちが強まり依存的になります。
(3)うまくいかないときに「自分が悪い」と思う
恋愛、仕事、人間関係などでつまずいたときに、すぐに「私が悪いのかな」と思う癖があると、自己イメージが悪化しやすくなります。
本来はきちんと向き合って冷静に対処法を考える必要があるのですが、自分を責めることにエネルギーが使われてしまうので、肝心の問題解決ができずに自信だけが失われていきます。
自己肯定感を高める方法
最後に、自己肯定感を高める方法をご紹介します。自己肯定感が低いと感じたときにすぐできることと、日頃から自己肯定感を高めるために心掛けられること、さまざまな方法を試してみましょう。
(1)不安なときは「大丈夫」と言い聞かす
将来への不安や恐れが出てきたり、「人からどう見られるだろう?」と心配になったりしたときは、まず一旦気持ちを落ち着かせることが大切です。
無理にポジティブになろうとしたり、不安を解消しなくちゃと焦ってあれこれ考えたりする必要はありません。ゆっくり深呼吸をして胸に手を当て、「大丈夫、大丈夫」と声に出して自分に言い聞かせましょう。
(2)自分を励ます
人から言われたことで傷ついたとき、もしくは「うまくできない自分はダメだ」と落ち込んだときは、自分を励ます言葉をたくさん掛けてあげましょう。
大切なことは、完璧な自分になることではなく、自分に課しているハードルをぐっと下げること。
「もう十分に頑張っているよね」「そんな私でも愛されているよ」「私は優しい子」と声に出して言ってみます。最初は変な感じがするかもしれませんが、続けていくうちにホッとしてくるはず。
(3)嫌いな人からは距離を取り、あなたのことを好きな人のそばに行く
自己肯定感が低いと、「最も苦手な人を克服できたら自信が付くはず!」と思いがち。ですが、自信を付けていくには適切な順番があります。
まず、できるだけ苦手な人・嫌いな人からは距離を取り、話しやすい人・信頼できる人・あなたのことを好きな人に近付きましょう。自分を歓迎し、励ましてくれるような人と積極的に付き合うことで、自然と自己肯定感が上がっていきます。
「自分の長所なんて見つからない」と思う人には、特におすすめの方法です。
(4)自分の短所を長所に変えてみる
性格は、長所になることもあれば短所になることもあります。そこで、短所を直すのではなく、長所として使っていこうと発想を転換してみてください。
自分の短所を挙げてみて、それをポジティブな面から見たらどんな長所に言い換えることができるのかを考えてみましょう。
例えば「怖がり」であれば、「慎重」「想像力が豊か」。一人では難しいときは、友達と一緒に相談してみるといいアイデアが浮かぶと思います。
(5)他人ではなく、以前の自分と比べる
自己肯定感が低い人は、他人の素晴らしいところと、自分のダメなところを比べます。それでは最初から勝ち目がないですよね。
比べるときは過去の自分と比べてみて、今どれだけできるようになったのかに注目します。もちろん結果だけではなく、プロセスにも注目して、自分の意欲や頑張りに光を当てましょう。
少しずつ自分を認めていこう!
自己肯定感とは、自分の価値を認めることができ、長所も短所もひっくるめて「どんな私でもOK」と思えている状態をいいます。
自己肯定感が高くなると、自信が付いて心に余裕が生まれるので、恋愛や人間関係、仕事などあらゆることに良い影響をもたらします。自己肯定感を上げていくのには、ある程度の時間がかかりますので、自分を励ましながら焦らずじっくり取り組んでいきましょう。
(高見綾)
※画像はイメージです
※この記事は2020年04月15日に公開されたものです