「何回も電話をかけてくる人」の心理
鬼電(読み方:おにでん)の意味とは、相手が出るまで連続して電話をかけ続けること。人によってはうざい、怖いと感じる行為かもしれません。異常なほど、つい何度も電話をかけてしまう人の心理とは? 鬼電に困った時の対処法を心理カウンセラーが解説します。
今、あなたは携帯の着信音やバイブレーションにドキッとしたり、着信履歴を見て恐怖を感じたりしていませんか?
相手が出るまで連続して電話をかけ続ける通称「鬼電」。
今回は、恋人や周囲の人の鬼電に困っている方に向けて、執拗に電話をかけてしまう人の心理や対処法を書いていきたいと思います。
電話は「何」を満たすのか
心理学者のフロイトは、人間が最も安心を感じているときは母親の胎内にいるときであると提唱しました。
胎内は母親と「へその緒で繋がっている」という状態。この原体験から考えると、人は根源的に「つながっている」という状態に対して安心を感じることができるといえそうです。
電話が満たす「つながる」感覚
もちろん、LINEやメールであっても“関係性”としてはつながってはいます。しかし、そこに時間の共有はありません。
「今、この瞬間」を大事な人と共有できる電話というツールは、実際に会うことの次に安心感をもたらすといえるでしょう。
危険な電話回数のサインとは?
恋愛相談でも「1日何回の電話なら許容範囲ですか?」「○回かけてしまうけど依存でしょうか?」といった質問はよくあります。
依存の基準には個人差がある
しかし、それが依存といった問題症状であるかについては、電話の回数だけで判断することはできません。
仮に1日10回電話をするカップルでも、お互いが心地良ければOKですし、恋人同士であれば「声が聴きたくなったから」という理由で、電話を通してさらに愛情を深める場合だってあります。
また、ストーカー規制法においても回数に基準はなく、あくまでも「拒否しているにも関わらず」何度もかけていることが問題となります。
回数だけで測れない鬼電の基準とは?
では何が危険な電話となるのか。
一つは発信の連続性です。通常、電話を2回かけても相手が出ないときはLINEやメールなどの代替手段に切り替えるか、留守番電話に用件を入れて相手の反応を待つのが常識です。
そして、もう一つの問題は、鬼電をする人の「相手が負担に感じているにも関わらず発信を抑制できない」という衝動性です。
相手が電話に出ないことによってこの衝動性に攻撃性が加わることもあり、そうなるとさらに危険度が高くなります。
鬼電する人の心理状態
では、こうした衝動性が抑えられない人はどのような心理状態なのでしょうか。相手が負担になるほど電話をかけてくる理由を探っていきます。
(1)不安性
鬼電をする人の多くは不安性の性質を持っています。つまり、電話をかける時点ですでに不安感情が根底にあるのです。
ここへ「電話に出ない」という状態が加わると、その不安は雪だるま式に増していきます。
(2)猜疑心
これは鬼電をする相手が恋人である場合で、かつ過去に浮気の前科があるときに生じやすい感情です。
「電話に出ないということはまた浮気をしているのではないか?」という疑いの心理です。
(3)嫉妬
恋人が異性の友人と出かけたり、異性も混在する食事会などへ参加したりするときなど、嫉妬対象と過ごしている場合に生じやすい感情です。
前述した猜疑心は恋人の言動に対して湧く感情ですが、この嫉妬心は恋人に接近している人物に対して湧き上がります。
(4)怒り
「なぜ自分からの電話に出ないのか→出てしかるべきだ」という感情が怒りです。
これは相手との日頃の関係性に上下があり、自分が上だと感じている人に出やすい心理。怒りには攻撃性があるため、最も鬼電につながりやすい感情であるといえます。
相手の気持ちをなだめるコツや対処法
鬼電をかける心理の裏には、不安や嫉妬の感情があるということ。
その心理は理解できるものの、日常生活に支障をきたしたり、心への負担を感じたりするならば、何とかうまい距離感を作りたいところです。
不安でいっぱいになっている相手をなだめるには、どんな対処が有効なのでしょうか。
(1)許可する
鬼電の根本感情は不安です。
そして、不安は「○○してはいけない」という禁止令を出されると倍増します。つまり「電話が多すぎるからもうしないで!」というのは逆効果。付き合っていきたいのであれば、禁止令より許可を与えてあげましょう。
「今日は22時までは電話に出られないけどそれ以降なら大丈夫だよ」といった感じです。すると相手は「22時になったら話せる」という許可が出ることで安心します。
(2)愛情は言葉でしっかり伝える
鬼電してしまうタイプには愛情をはっきりと、言葉で伝えることが大切です。態度で分かるよね、照れ屋だってことは知ってるよね、などといった気持ちは捨てましょう。
「愛している」「好きだよ」「安心して大丈夫」など具体的な言葉で伝え続けてください。
(3)スケジュールを伝えておく
安心感を与えることも非常に大切です。相手がどこで何をしているのかを想像することができれば安心感が生まれますので、スケジュールを伝えてあげましょう。
最近はお互いのスケジュールを共有できるアプリなどもあります。そうしたものを利用することもおすすめです。
(4)留守番電話を残してもらう
鬼電をする人は「今、リアルにつながりたい」と思っています。これはソフト(無形のもの)を求める心理です。
しかし、電話というハード(有形のもの)に向けて話すという作業は無機質で、鬼電をする人が求めている心理とは逆になります。
留守番電話への録音は相手の心をより求めていない方向へ向けさせることになり、それが結果として衝動性をクールダウンさせる要素となるのです。
頻回な着信に疲弊している場合は「着信だけを何度残しても折り返しはしないから。必ず留守番電話に用件を残して」と伝えてしまってもいいでしょう。
(5)電話を拒否する
これは別れを意識しての最終手段です。前述しましたが、ストーカー規制法など法的措置を取る場合にも、前提として「拒否を伝えているにもかかわらず」という条件があります。
いきなりの着信拒否は相手を逆上させる恐れがあるのでNG。別れを意識するくらい着信に疲弊しているのであれば、「電話は拒否する」という意思をはっきり伝えましょう。
鬼電を減らすには「安心感」がカギ
記事を読んで、正直「鬼電をする相手って面倒くさい」と思われてしまった方もいるのではないでしょうか。
確かに鬼電をしてしまう人には、強い見捨てられ不安があることが多く、この不安に寄り添うことは根気を必要とします。
しかし、不安を取り除き、安心を与えてあげることで改善する可能性はあります。
自分の心を疲弊させてまで付き合う必要はありません。しかし、今回の対処法もぜひ参考にしていただき、お互いが心地良い距離感を保てる関係性を築いていってください。
(小日向るり子)
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※この記事は2020年03月27日に公開されたものです