メンタルを鍛える方法
仕事でミスをしたり、他人から否定されたりしたとき、「私ってダメな人間だな」と落ち込んでしまうことはありませんか? この記事では、メンタルの弱さに悩む方に向けて、メンタルを強くする方法について、心理カウンセラーの小日向るり子さんに解説してもらいました。
仕事での些細なミスを何日も引きずってしまう。
少し他人から否定されただけで、自分をダメ人間だと思ってしまう。
快活でポジティブな友人を見ると、劣等感に苛まれてその人が苦手になってしまう。
そんな自分が嫌で、メンタルをもっと強くしたいと思うのにうまくいかないと悩むことはありませんか?
メンタルが弱いということは、別の側面から見ると繊細で人の感情を敏感に把握できるといった長所でもあり、それを仕事に生かしてクオリティの高い結果を出すこともできるのですが、今回は「それでももう少し強くなりたいな」と思う方に向けて、メンタルを強くする方法について書いてみたいと思います。
メンタルが弱い人の特徴
それでは、メンタルが弱い人にはどのような特徴があるのでしょうか?
特徴的な要因を以下に挙げてみました。
(1)生まれ持った気質
遺伝的なものがあります。
生まれつき繊細で神経質な気質を持っている場合です。
(2)自己肯定感が低い
親からの過干渉な養育やダメ出しの多い教育、学校や部活動などでイジメに合うといった環境が、自己肯定感を低くする要因の大きなものです。
特に幼少期~思春期までの自我が確立されていない年齢でネガティブな言葉を浴び続けると、自己を肯定する気持ちが育たずに、自分は弱くダメな人間だと頑なに思い込んでしまいます。
(3)他罰的傾向を持つ
たとえば、仕事でミスをしたとき、「○○先輩がフォローしてくれなかったから悪い」「月給が低いから仕事のモチベーションが上がらず、ミスにつながった」などと考えてしまう。
恋愛で振られたときには、「親がこんな顔に生んだからだ」「あんな男性を紹介した友人が悪い」などと思ってしまう。
自分の失敗や不幸の原因を、他者や環境のせいにする癖がある場合も。
このように原因を自分以外のほかに求めてしまう傾向を他罰的といいますが、メンタルが弱い人は他罰的な考え方をしがちです。
自分ではなく外部を責めていれば、自分自身と向き合う必要がないからです。
(4)一生懸命、他人に尽くす
もちろん他人のために一生懸命になることが自身の幸せややりがいにつながっているのであれば問題ないですし、むしろよいことです。
しかし、自分自身を見つめることが怖いために他人に尽くそうと一生懸命になっているとしたら、それは逆効果。
他人を支えることで満ち足りているのではなく、疲れているのだとしたら、それは自分の弱さと向き合うことから逃げているということなのです。
あなたのメンタルは豆腐のようにボロボロになりやすい? 実は強い? メンタルの強度を診断します。
メンタルを強くする方法とは?
前述した原因の中では生まれ持った気質や過去の体験など、今さらどうしようもないこともあります。
しかし、後天的に生活や思考、環境などを変えることでメンタルを強くすることは十分に可能です。
以下にメンタルを強くする方法でおすすめのものを挙げてみたいと思います。
(1)メンターを見つける
メンターとは、仕事や人生の助言者という意味です。
コーチングにおけるコーチは、主に仕事上のアドバイスをしてくれる先輩といった意味が強いですが、メンターはそれに加えて精神的なフォローまでを含めた存在。
日本ではあまり馴染みのない言葉ですが、欧米では知られた概念です。
リアルに話せる人がいればそれがベストですが、生き方や考え方が尊敬できる人、あこがれの人などを自分の「メンター」と決めて、心の中に身近な存在としておくだけでも効果はあります。
(2)右脳と左脳をバランスよく使う
メンタルの調子が悪いというのは、仕事でストレスが溜まっているときに生じがちですよね。
一般的には仕事や人間関係を円滑に進めるために使うのが左脳で、スポーツや遊びに使うのが右脳。
そして、右脳と左脳の使用量のバランスが取れていないとストレスが溜まりやすくなります。
ストレスが溜まった脳は、ネガティブな思考しかできなくなるもの。
仕事がお休みの日は一日外に出ないでダラダラしたい気持ちはわかりますが、二連休があったら一日はアクティブに過ごしましょう。
結果、右脳と左脳のバランスが取れ、ストレスが減ってポジティブ思考になりやすいです。
(3)信頼のおけない人には弱音を吐かない
「私はダメな人間」「今日も落ち込んだ」などの弱音は、信頼のおける人やカウンセラーなどの心の専門家には吐き出してもいいですが、SNSや掲示板など誰が見ているかわからないような場所に吐き出すことはやめましょう。
傷つく言葉が返ってくることでますます落ち込むというデメリットはもちろんですが、もっと危険なことは「そんなことないよ!」「何かあったら相談にのるよ」などとやさしい言葉をかけてくれる人の存在です。
他人からのやさしい言葉の中に逃げ込むことは居心地がよいので癖になりますが、成育歴、環境、思考の癖などをほとんど知らない人からの表面的なやさしさでごまかしても強くはなれません。
どうしても吐き出したいときは、不特定多数の人の目につく場ではなく、ノートやパソコンにメモするなど、自分だけが見られるものにしましょう。
(4)元気が出るスペースを作る
これがあるとポジティブな気持ちになれるという映画、ドラマ、書籍、マンガ、動画など、「メンタルが弱っているときに元気が出るアイテム」のコーナーを作っておくのもおすすめです。
つらいときにはそのスペースから今の感情に一番しっくりくるものを手に取りましょう。
書籍やマンガであれば気に入った文章やセリフに付箋を貼ってすぐに読めるようにしておいたり、動画であればチャンネル登録をしておいたりすると便利です。
悲劇の主人公にならないで自分と向き合うことが大事
私はこれまで相談員、カウンセラーとして3,000件以上のご相談を受けてきました。
幸せなプライベートを持ち、社会的地位や役職が高く、金銭的にも裕福で話し方も快活な人もたくさんいました。
そういった人たちは、はたから見たらいわゆる「勝ち組」といわれているでしょう。
しかし、多くの方とお話する中で感じていることは、強い人なんてひとりもいないということ。
「勝ち組」といわれる人たちだからって、強いわけではありません。
みんな迷い、悩み、傷つき、試行錯誤しながら生きている、または生きてきたからこそ今があるのです。
「自分だけが弱くてダメな人間だ」などというようなことはありません。
この過剰に自分を責めてしまう思考回路から抜け出し、悲劇の主人公にならずに自分と向き合うことが大事です。
そうすれば、必ずあなたのメンタルはひとまわり強くなり、さらに他人に対してもやさしい心を持てる人間になっているはずですよ。
(小日向るり子)
※画像はイメージです
※この記事は2019年07月03日に公開されたものです