精神科医が教える「幸せを感じるセックス」のコツ10
人間がセックスで幸せを感じるメカニズムとは? 精神科医の肩書きを持ち、セックスコミュニケーションについて幅広い知識を持つ髙木希奈さんが「幸福を感じるセックスのコツ」を紹介。幸せを感じるセックスと感じられないセックスの差は、一体どんな部分にあるのでしょうか。
人間は、生殖以外の目的でセックスをする数少ない生物です。
さらに私たちがセックスをする目的は、単純な性的快感を得ることだけに留まりません。
そこには、愛する人と「心の距離を近づけたい」「ひとつになりたい」といったさまざまな感情が紐づくもの。
つまり、セックスから幸福や愛を感じ取れることは、私たち人間の特権なのです。
今回は、「幸せなセックス」をテーマに、幸せを感じるセックスと感じられないセックスの差、セックスで幸福感を得るコツなどについて解説していきます。
「幸せなセックス」と「幸せじゃないセックス」の差とは?
諸説ありますが、男性は右脳が優位で、女性は左脳が優位だといわれています。
「性欲スイッチ」が異なる男女
右脳は「感性脳」と呼ばれ、画像処理や空間認識、直観的判断などを司ります。一方の左脳は、言語脳」と呼ばれ、言語処理や論理的思考などを司ります。
つまり、この説における男女脳のちがいとは
・男脳:視覚による刺激を受けやすい
・女脳:言葉による刺激を受けやすい
ということ。
男性は視覚重視、女性は言葉やムードを重視するため、男女の性欲が入るスイッチは異なるのです。
女性の性欲は「愛情」と一心同体
この男女の性的な妄想についてうまく説明しているのが、アラン・ピーズとバーバラ・ピーズの著書『セックスしたがる男、愛を求める女』です。
同書を読むと、男性の性的妄想はすがすがしいほど即物的で、セックスに恋愛感情を必要としないことがわかります。彼らは、動物のオスとして“自分の遺伝子をより多く残す”“種をまく”という本能があるので、愛情抜きでもセックスができるということ。
一方の女性は性欲と愛情を切り離すことができません。
なぜなら妊娠・育児期間が長いことが想定される女性は、そのあいだ、自分と子どもを養ってくれる男性をしっかり捕まえておかなければならないため。
そんな女性がセックスに求めるのは、“相手が自分を捨てない”という確信。ゆえに自分が愛され、今後も大切にしてもらえそうだという確証、セックスでいうと、単なる挿入だけではなく、手間のかかった愛撫や後戯を重要視するのです。
つまり女性が幸せを感じるセックスとは、「いいムードの中、彼がていねいに自分を愛してくれる行為」をさすといえるでしょう。
セックスで幸せを感じる10のコツとは?
では、この「幸せ」を感じるには、具体的にどんなコミュニケーションを取るとよいのでしょうか? セックスで幸せを感じるためのコツを10個紹介します。
(1)相手を信じる、自分を信じてもらう
相手を受け入れ、自分も受け入れてもらえないことには、精神的な充足感を与え合うことは不可能です。
信頼感がなければ本当に望んでいることを打ち明けることもできませんし、身体の緊張を解いて官能を受け入れることもできません。
まずは相手を信頼し、相手にも自分を信頼してもらうことからはじめましょう。
(2)プラスの言葉を呟く
私たちが発する言葉には不思議な力が宿っています。自分が発した言葉につられて、人の心や身体は動くことがあるのです。
セックス中、相手に対する尊敬を示す言葉や、「ありがとう」「うれしい」「楽しい」「好き」といったプラスの言葉を多く使ってみてください。
それだけで相手との心の距離は縮まり、関係性が良好なものになります。心の距離が近くなれば、セックスで得られる幸福感も増幅するはずです。
(3)自己是認欲求を満たす言葉をかける
人は誰でも、他人に認めてもらいたい、褒めてもらいたいと願っています。
これは人間の根本的な欲求であり、プライドの生き物といわれ、支配欲求が強いとされる男性は、女性以上にこの傾向が強いもの。心の底では「ほかの誰よりも勝っていたい」と思っています。
行為の最中、どんな些細なことでもとにかく褒めてあげましょう。
(4)仕事が忙しいときのセックスは避ける
人間は仕事が忙しかったり、ストレスが溜まっていたり、睡眠不足だったりすると、なかなかセックスへと気持ちが向きませ(特に男性はこの傾向にあります)。
したがって、お互いに少し仕事から離れてゆっくりする時間を設けてください。リラックスした状態でないと、心地いいセックスはできません。
(5)スメルセックス
匂いは鼻の奥にある嗅覚器で感知され、嗅神経を伝わり、大脳辺縁系にある嗅覚中枢で感じ取られます。
大脳辺縁系とは、喜怒哀楽などの感情面を司っているところ。心地よい香りを嗅いだだけで一瞬にして癒されるのは、このためです。
催淫効果があるとされるイランイランやサンダルウッド、バラ、リラックス効果が期待できるラベンダーなどのアロマオイルを焚いて、お部屋で非日常的空間を作り出してみてはいかがでしょうか?
(6)アメとムチの法則
いつも与えてばかりだと、相手に求められなくなる可能性があります。
毎回毎回彼が望むときにセックスをするのではなく、間隔を空けてみたり、たまにはわざと断ってみたりして、時々不足を与えることで、相手の飢餓感を煽ってみるのも手。「もっと君がほしい!」と相手に求めさせることができます。
いつまでも新鮮な恋人関係でいるためには、ムチを上手に使ってみてください。
(7)ツァルガイニク効果
これは「達成されなかったことや、途中でやめてしまったことに強い印象や記憶を持つ」という心理現象です。
ホテルや家に直行せず、コンビニに寄り道をしたり、セックスの最中に、焦らしを兼ねて愛撫を止めてみたり、あえてセックスまでの道のりを「中断」させてみましょう。
早くひとつになりたいのになかなかなれない……。このじれったさは、普段以上の快感を2人にもたらします。
(8)Iメッセージ
「もっとこうしてほしい」「ちがう、そうじゃないのに……」などとセックスに不満を持っていても、相手を傷つけてしまうのが怖くてなかなか言い出せないことってありますよね。
自分の要望を伝えるときは「Iメッセージ」というテクニックを用いるとGOODです。これは、お願いをするときに「自分」を主語にして話すやり方。
この逆が「YOUメッセージ」で、こちらは相手を主語にして話す方法です。2つを並べてみると、
・Iメッセージ「こうしてもらえると、私はうれしいです」
・YOUメッセージ「あなたがここをこうしてよ!」
印象がちがってきますよね?
YOUメッセージの場合は、命令するような口調になり、ともすれば相手の人格を無視した物言いになってしまいます。
しかし、Iメッセージの場合は、そんなふうには聞こえませんよね。やさしい言い方で、素直に相手の言うことに耳を貸すことができるのです。
自分の希望を相手に伝えたいときは、Iメッセージを使ってみましょう。
(9)男性の「支配欲求」を満たす誘い方
「こんなセックスがしてみたい」と思っていても、自分の欲求を彼に伝えることで「変に思われたらどうしよう?」とか「嫌われるのが怖い」と感じ、なかなか相手に伝えられない女性もいると思います。
しかし、セックスにはパートナーとのコミュニケーションが必要不可欠。
自分の性的嗜好を素直に告白してみて。たとえば、「あなたにだったら、もっと乱暴にされてもいいかも……♡」と、セックスの前や最中に囁いてみるといいかもしれません。
肝心なのは、「あなたなら」「あなたにだったら」という言葉を必ず添えることです。
男性の「支配欲求」を満たす誘い方をすれば、ほぼまちがいなく乗ってきてくれるはずですよ。
(10)「男性の影響力」を感じる声
男性は、我慢しているのに思わず口をついて出る女性の声を聞くと、自分の支配力を存分に感じるもの。
普段恥ずかしいことを口にできない彼女が、男性の手によって、思わず自分の淫らな欲望を口走ってしまうことを愛しいと思うのです。
男性はこれを征服した合図として受け取り、ますます深いセックスコミュニケーションにつながっていくでしょう。
幸せなセックスのカギは「心の愛撫」
セックスを本当に幸福で、気持ちいいものにするためには、肉体を愛するテクニックだけでは不十分。お互いに心を愛撫するテクニックの習得が大切です。
なぜなら、肉体的な刺激に人はすぐ慣れてしまうから。
セックスに対する嫌悪感や羞恥心、そして不安、緊張を解き放ち、身も心も安心して預けられる相手と、“解放感”“開放感”を得ること、これが心と体を満足させるセックスには一番効果的です。
肉体の面積は限られていますが、心には限界がありません。
さらにいえば、肉体は衰えますが、心は衰えません。
精神的な満足や性的ファンタジーは、低下していく肉体の快楽を補ってなお余りある可能性もあります。
長年付き合っているカップルほど、心を愛撫するテクニックを身に着けておけば、それだけ長くエクスタシーを味わっていられる、ということなのです。
セックスの奥深さは、単なる肉体的な快楽だけでなく、愛情表現やコミュニケーション手段にもなりうるということ。それを忘れないでくださいね。
(髙木希奈)
※画像はイメージです
※この記事は2019年06月24日に公開されたものです