素質あるかも? マイペースが向いている職業6つ
「マイペースだね」と言われたことはないですか。マイペースなことは長所なのでしょうか? 短所なのでしょうか? また、マイペースな人の特徴や適した職業とは? 心理カウンセラーの笹氣健治さんに詳しく教えてもらいました。
「マイペース」を広辞苑で引くと「自分の自由な進度で仕事などを行うこと」とあります。
この言葉自体には、良い悪いを示す意味はありません。むしろ、人が自分のペースで行動するのは当たり前のことなので、誰もがマイペースだと言えます。
ところが、「あの人はマイペースだ」といったように特定の人を指すときには、そこに否定的な意味合いが込められることが多いようです。
10人以上の集団には、たいてい1人はいるマイペースな人。
わかっているようで実はわかっていない「マイペース」について理解を深め、マイペースの良い部分を生かす方法を探ってみましょう。
マイペースな人とは?
マイペースな人とは具体的にはどんな人なのか。まずはそこからひも解いてみましょう。
マイペースな人の特徴5つ
何かをするとき、人にはそれぞれ自分のペースというものがあります。
例えば、歩くときに早足の人もいれば、ゆっくり歩く人もいます。食べるときも、早食いの人、ゆっくり食べる人、いろいろな人がいます。
仕事においても、例えばExcelで同じ表を作る際に、短時間でできる人もいれば、倍以上の時間がかかる人もいます。
このように人それぞれ固有のペースがあり、それは能力や経験などによって決まるもので、その人にとって最適な速さだといえます。
「マイペース」という言葉をそのまま文字通りにとらえると、「人が何かをするときに自分にとって固有なペースで行うこと」となり、それは誰にでも当てはまる当然のことなのですが、会話の中で「あいつはマイペースだ」と言うときは、一般に、人を揶揄する言葉として用いられるケースが多いようです。
ではいったい、マイペースのどのような点について揶揄することが多いのでしょうか? 典型的な5つの点を挙げてみます。
1.自分の予定を最優先する
いわゆるマイペースな人は、いったん予定を決めると、その後、何があってもその予定通りに行動しようとします。急な頼まれごとに対しても融通をきかせることがないため、まわりからは冷たい人、頭が固い人、と見られてしまいがちです。
なぜそんなにも頑固で柔軟性がないのかというと、こだわりが強いとも言えますが、実は、不器用であるという側面があります。
複数のことを同時進行で処理することが苦手で、まず目の前の仕事を終わらせるように集中しているのです。
そのため、途中経過報告を不意に求められてもうまく対応できませんし、急な電話などで今やっている仕事を中断されるのを嫌います。
見方を変えると、自分の能力の範囲内で行動しているとも言えるのです。
2.他人の意見を聞き入れない
周りから意見やアドバイスをされると、そのときはいい返事をするので、わかってくれたのかなと思うのですが、結局は、元の自分のやり方でやり通す。あるいは、「私は私のやり方でやるから」と、他人の声にはまったく耳を傾けようとしない。そんな態度もマイペースによく見られる傾向のひとつです。
自分のやり方でやりたいという気持ちを強く持っている部分もありますが、臨機応変に対応する能力に欠けるために、アドバイスをうまく取り入れることができず、仕方なく元の通りやらざるを得ない場合のほうが多いとも言えます。
もっとこうした方が効率的だよとアドバイスされても、今までやってきた手順があまりにも強く身についているため、なかなか簡単に変えることができず、結局、アドバイスは無視する形になってしまいます。
そういった本人の事情を周りは知る由もないため、「あいつはマイペースだからしょうがない」と、言うだけムダだと思われてしまうことになるのです。
3.空気を読まない
仕事にひと段落がついて今日は皆でパーッと飲みに行こうか! という雰囲気になっているとき、「私はもう少し仕事をしていきます」と言って場をシラケさせてしまう。そんな空気を読まない言動をマイペースな人はよくやりがちです。
自分の予定を最優先しているとも言えますが、それと同時に、言葉の裏を読む能力が乏しいという側面があります。冗談や嫌味が通じないタイプと言ってもいいかもしれません。
例えば、「お前は本当に字がきれいで読みやすいな」と嫌味を言うと(実際は字が汚くて読みにくい)、「そうですか? 自分ではそうは思わないんですが、褒めていただいてありがとうございます」と本気で(冗談ではなく)受け答えしてしまうようなところがあります。
コミュニケーションは、言葉で表現される表面的な部分と、言葉の裏に隠された部分で成り立っているのですが、隠された部分を察する能力がない人が一定数います。
そういう人が空気を読まないマイペースな人、というふうに見られてしまうのです。
4.独自の世界観で生きている
多くの人は、遅刻して他人に迷惑をかけることを問題だと考えています。また、職場の全員で対応しなければならない案件で皆が残業しているときは、自分の担当分が終わったら「何かやることはありませんか?」と確認して全体で早く終えられるように協力しようとします。
ところが、マイペースな人は、「少しくらい遅刻しても、ちゃんと行けばいいだろう」と考えて遅刻を気にしなかったり、「私の担当分が終わったのでお先に失礼します」と言ってサッサと帰ったりします。
自分の考え方に対して微塵も疑問を抱かない。相手がどんなふうに感じるかをまったく気にしない。それは、自分の考え方や価値観だけを基準にして生きているからです。
このような人を周囲は「無神経な人」「自己中心的な人」と評価しますが、当の本人は、そういった評価をされていることすら気づいていません。
例えて言えば、自分が主人公であり、周囲の人はすべて舞台装置に過ぎない、といった感覚です。
自分がどう思い、どう行動するかだけしか関心が向かず、まわりの人たちがどう考えているかはまったく気にしていません。自分独自の世界観で日常を生きていると言えるのです。
5.自分に対してなぜか自信がある。
まわりから何を言われても一切ブレない、常に我が道を行くタイプも、マイペースな人だと言われます。
ただし、多くの場合、芯がしっかりしていて強い意志を持っている、というのとは少し異なります。長期的な視点がなく、大局的にものごとを考えられないために、「このままでいいのだろうか?」「ほかの選択肢はないだろうか?」といったような不安や迷いを感じないだけであり、「今ここ」しか視界に入っていないのです。自分が今考えていることの一択で生きているとも言えます。
このタイプのマイペースな人は、自信家で頼もしく見えますが、実際はそれほど実力を伴っていないので、どうしてそこまで自信を持てるのか、と周りからはいぶかしがられます。そういうことが続くと、何を言っても聞き入れない人というレッテルを貼られて、次第に周囲からは一線を引かれるようになり、あまり関わり合いになりたくないと思われてしまうのです。
マイペースな人の特徴に共通すること
以上の特徴に共通するのは、本人は周囲との差異に気づいていない点です。
本人にとってみれば、いたって普通にしているだけであり、だから気兼ねなくマイペースを貫くことができているのです。
そのため、「あなたはマイペースだね」と言われても、実際にどういう意味で言われたのかも理解できていないということになります。
マイペースな性格の長所と短所
続いては、「マイペース」な性格の短所と長所に目を向けてみます。
マイペースな人の短所3つ
マイペースであるということは、その人の個性です。人の個性はプラスに働く場合とマイナスに働く場合があります。
やさしさは、厳しく注意すべきときに、うまく言えないというマイナス面を持っています。そういったマイナス面が、一般に短所と呼ばれることになります。
では、マイペースであることがマイナスに働くのはどういうときか、主なものを見ていきましょう。
1.周囲にストレスを与える
マイペースは自分にとってはとても心地よいのですが、周囲の人をイライラさせたり、非協力的な態度として、ストレスを与えることがあります。
2.臨機応変な対応ができない
自分のペースを守ることは、裏返すと、いろいろなケースに臨機応変に対応していないと言えます。
さまざまなトラブルや非常事態において、自分の我を通すことがかえって自分の身を危険にさらすことになります。
3.思慮が浅い
今この瞬間での判断を優先していて、長期的、大局的にものごとを考えられないので、損して得取る、先行投資、といった考え方や行動ができません。
その思慮の浅さが、将来の自分に不利に働くことになかなか気づけないのです。
マイペースな人の長所3つ
マイペースであることがプラスに働くときも、もちろんあります。次はそれについて見ていきます。
ただし、本人にとってプラスであることは、周囲にとってマイナスに作用することが往々にしてありますので、周囲の理解を得る努力は必要となります。
1.ストレスフリー
やりたくないことをやらなければならないとき、人はストレスを感じます。だから、マイペースであれば、その類のストレスを感じることはありません。
ストレスによって仕事のパフォーマンスが低下することもなく、安定した成果を上げることができます。
2.鈍感力
空気を読んでいろいろと気を遣う人ほど、ストレスを抱えます。ところが、マイペースでは空気を読んだ行動をしないので、気疲れのストレスとは無縁です。
ある意味、幸せな毎日を過ごすことができます。
3.決断が早い
周りを慮ってアレコレ考えることなく、直感的に判断するので、決断が早いということが言えます。
スピードが要求されるような仕事のときは、それがプラスに働くことになります。
マイペースの生かし方。向いている職業って?
短所だけではなく長所もあることのわかったマイペースな性格。どうやって仕事に生かしたらいいのでしょうか。
マイペースな性格は、他人と協働する仕事よりは個人でやる仕事、文系的よりは理系的な仕事、クリエイティブよりはルーティン化された仕事の方が、比較的向いています。
それは具体的にどのような職種なのか、いくつか例を挙げてみます。
1.経理業務
1日、1カ月、1年間を通してルーティン化された業務は、マイペースな人にとって得意分野です。経理業務はまさにその筆頭。
下手に融通をきかせるよりも、厳格なルールに基づいて、きっちり期限通りに業務を処理することが求められる仕事は、マイペースな人にうってつけと言えます。
2.SE、プログラマー
他人とコミュニケーションすることが多い仕事より、コンピューターを操作する仕事は、マイペースな人にとって能力が発揮しやすい職種です。
上司にとっても、問題行動をしないかどうかハラハラして見守る必要がなく、安心して仕事を任せることができるという点では、うまくハマった仕事と言えるでしょう。
3.専門性の高い仕事(研究者、大学教授、弁護士、医者)
高い専門性が求められるような、根気強さや集中力が必須の仕事にも、マイペースな人は本領を発揮します。
なお、不得意な対人コミュニケーションの部分を補ってくれる秘書的な人や、マイペースな性格に理解があって適宜サポートをしてくれる同僚の存在がいると、さらに高い成果を上げられるようになります。
これからは個性の尊重がより必要な時代
仕事をしているときには忘れがちなことですが、本来、人の個性にはちがいがあります。
だからこそ、それぞれの個性にあった仕事に就くことが、本人にとっても周囲にとっても、ストレスなくハッピーな毎日を過ごす上では重要になります。
接客が好きで得意な人に内勤で事務仕事をやらせる、逆に、そういったことが苦手な人に営業をやらせる、といったミスマッチは、本人にストレスが蓄積するだけでなく、生産性の面でも得策とは言えません。
ましてや、それが原因で離職……などといった不幸なことが起きないためにも、自分自身の個性の特性についてよく知り、また、一緒に働く人の個性に理解を示すことが、これからの社会において必要不可欠となってくるのです。
(笹氣健治)
※画像はイメージです
※この記事は2018年09月12日に公開されたものです