現代に生きる私たちは悩みが尽きません。人間関係のストレスや劣等感で、時には押しつぶされそうになってしまいます。そんな私たちに明るい指針を示してくれるのが「アドラー心理学(個人心理学)」です。
この連載では、『決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本』(明日香出版社)から一部を抜粋し、アドラーの実践的な心理学を学んでいきます。現代の職場、ビジネス、人間関係で役に立つヒントが見つかるかも?
今回は第1章「人間関係がうまくいかないときは? 〈コミュニケーションの達人になる〉」の中から「共感できる人になる」というテーマを取り上げます。
以下、『決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本』から抜粋します。
相手の目と耳と心で感じ取る
共感できる人は、「そこまでやるか」という人だ。
本田技研工業の創業者、本田宗一郎は、町工場の経営者だったとき、アメリカ人バイヤーを料亭に招いた。ところが、相手は浮かない顔だ。なんと、入れ歯を汲み取り式便器に落としたと言う。
そんなとき、あなたならどうするだろうか?
「共感とは相手の目で見て、相手の耳で聞いて、相手の心で感じ取ることだ」とアドラーは言う。
つまり、お客様の目になり、耳になり、気持ちを感じ取るのだ。慣れない国で、入れ歯をなくしては不便だろう。話すことも、食べることもできず、仕事にも差し支える。
本田宗一郎は、裸になって便壺に入り、入れ歯を見つけた。しかも、洗って消毒した入れ歯を口にくわえ、踊りながら帰ってきた。
「もう汚くない」と、相手に安心させるためだ。
共感できると、相手のために何をすればよいかがわかる。たった一人のために心を尽くせる人が、多くの人の心を動かし、ビジネスも加速させる。
「共感力」で顧客満足度を高める
令和になって、カリスマ店員の条件が変わった。
平成のカリスマ店員は、「憧れ」がウリだった。
ところが、オンラインでの接客が増えた今は、「共感」がウリになった。アドラーはアドバイスする。
「隣人や顧客のニーズを理解できれば、ビジネスで大きく優位に立てるだろう」
顧客に共感できる人は、顧客のニーズもわかる。すると、一人ひとりの望みにかなった商品を提案できる。
フレンドリーにアドバイスしてほしいのか、専門家として相談にのってほしいのか、立ち位置もわかるので、「かゆいところに手の届く」接客ができるのだ。