マツダは2025年度(2026年3月期)の業績見通しの公表を見送った。世界販売の3割強がアメリカ向けのマツダにとって、トランプ政権と関税政策の動向が業績に与える影響は大きいだけに、同社の今後が気になる。
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トランプ関税がマツダに与える影響は?
2024年度は北米市場の販売が過去最高に
2024年度(2025年3月期)におけるマツダのグローバル販売台数は130万3,000台(前期比5％増)となり、売上高は5兆189億円と同社初の5兆円超えを達成した。このうち主力の米国市場での販売台数は43万5,000台(同16％増)。40万台ラインを超えて、38年ぶりに過去最高を更新した。
マツダにとって米国は最大の稼ぎ頭であり、世界販売の3割強が米国市場だ。だが米国での現地生産は、トヨタ自動車との共同生産であるアラバマ工場が稼働したばかり。現地生産比率は2割弱と低い。米国向け自動車販売の多くを輸出でまかなうマツダにとって、トランプ関税の影響が大きくなるのは必定。業績全体への懸念が強まっている。
マツダの毛籠社長は今期(2025年度)の業績予想について、「現時点では政府間でギリギリの交渉が続いており、状況は依然として流動的かつボラティリティが高いことから、合理的に先行きを算定できる状況にない」として開示を見送った。通期予想は第1四半期決算時に改めて開示する方針を示す。折しもこの日は、米中政府交渉による関税引き下げ合意が発表されており、トランプ関税の今後の動向は予断を許さない状況にある。
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マツダの毛籠勝弘代表取締役社長兼CEO(写真は2025年上海モーターショー 長安マツダ プレスカンファレンスに登壇した際の様子)
広島・山口の70万台体制は死守
マツダの2024年度(2025年3月期)業績は売上高で過去最高の5兆円超を達成したものの、営業利益は1,861億円(前期比26％減)、当期純利益は1,141億円(同45％減)の減益となった。「米国市場で予想以上に販売競争が激化し、インセンティブが増加した」(毛籠社長)ことが主な要因だ。
それでも、マツダにとって最大の稼ぎ頭である北米市場での「ブランド価値向上戦略」が実りつつあり、「足腰が強くなったことを確認できた」(毛籠社長)とする。毛籠社長は米国でのブランド戦略の先頭に立って成果を上げて社長に就任した人物であるだけに、米国市場には精通している。
だが、マツダの米国および北米市場への依存度は高く、米国で販売する車両の8割を輸出している同社にとって、トランプ政権が打ち出す高関税が営業利益の大きな押し下げ要因となることは間違いない。日本からの輸出だけでなくメキシコからの完成車・部品輸出も多いため、マツダにとって現在の情勢は厳しいものだ。
このため、マツダはあえて、この2025年度の業績見通しを未定としたのだ。関税政策の動向、市場の需要、販売価格の変動による顧客の購入意欲の変化など、米国のビジネス環境を注視したいとする。
一方でマツダは、トランプ政権による関税政策に対応するため、部門横断の対応チームを立ち上げ、影響を最小限に抑えるべく社内対応を進めている。モデルミックスの改善などによる収益の最大化や工場の安定操業に向けた販売機会の拡大、コスト低減活動の加速などが主な内容だ。
日本からの米国向け輸出が減れば国内生産が落ち込む懸念もあるが、毛籠社長は「広島、山口の地域経済・雇用をしっかり守り抜く」とし、国内70万台生産を堅持する姿勢を明確にした。
