まわりに振り回されず「淡々と」「粛々と」「黙々と」、自分のやりたいことをし続ける――大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太といった現代のスターをはじめ、優秀な若者の共通点は"隠れて努力できる人"であること。
「意識高い系」でも「冷笑主義」でもない、令和時代の新しい生き方を考察した1冊『ゆるストイック』(佐藤航陽 著/ダイヤモンド社)から一部を抜粋してご紹介します。
ある世界チャンピオンの話
バーで知り合ったボクシング元世界チャンピオンに、「井上尚弥選手についてどう思うか?」と聞いてみたことがありました。
井上尚弥選手は、世界で4階級制覇を達成し、バンタム級とスーパーバンタム級で4団体の王座を統一した日本を代表するボクサーです。
彼は無敗の戦績(28戦28勝、25KO)を誇り、ボクシング専門誌『ザ・リング』のパウン ド・フォー・パウンドランキングでも日本人初の1位に輝きました。
圧倒的な実力と成長を続ける姿勢で「モンスター」と呼ばれる正真正銘のボクシング界の怪物です。
私も趣味でキックボクシングをしていたので、試合を見てその異常な強さの秘密を知り たいと思っていました。
その元チャンピオンは、次のような表現で井上選手を評しました。
彼は昔から素晴らしい選手だったけど10代の頃はまだ怪物というほどではなかった。すごかったのは、その「成長率」だ。 普通のボクサーはチャンピオンになれば、練習量も減り、生活も緩んで、王座を守ることが最優先になる。 多くのボクサーはチャンピオンになることを目標として、そこで満足して成長が止ま ってしまう。 だが、井上選手は違った。 彼は世界チャンピオンになっても10代の頃と同じスピードで成長を続けている。 チャンピオンになることすら「通過点」として考えている人の動きだ。
そのような話でした。
「成長率」と「通過点」。
この言葉を聞いたとき、私はふと、井上尚弥選手に見られるものが、いま活躍している他の人物にも共通することに気づきました。
大谷翔平選手、藤井聡太 竜王・名人――。
彼らに共通するのは「ストイックさ」と「柔軟さ」が混ざった、独特の姿勢なのです。
修行僧のようなストイックさ
かつてのスターたちは、人間的な欲求に突き動かされていました。「モテたい」「稼ぎたい」「認められたい」……。
そんな欲望を堂々と語るビッグマウスの人たちが想像できるでしょう。
しかし、大きな成果を上げた後、バランスを崩し、スキャンダルや問題に巻き込まれることも少なくありませんでした。
一方で、先ほど挙げた現代の新しい世代のスターたちは違います。「修行僧」のように黙々と自己を磨き続けているのです。
評価されることや、他者との勝ち負けに重きを置かず、ひたすら自分自身に向き合い続 けている。そんなスタイルを持っています。
そうした姿勢の中には、自分に厳しくストイックでありながら、他人に自分の価値観を押し付けない柔軟さが見て取れます。
彼らは自分の目標を追い求めつつも、他者を否定することなく、その違いを尊重してい ます。
この柔軟性を持ったストイックさこそが、「ゆるストイック」という生き方です。
その生き方は、スポーツや将棋の世界に限りません。ビジネスやエンターテインメントなど、日常のあらゆるシーンにも応用できるのではないでしょうか。
本書では、この「ゆるストイック」を軸に、これからの世の中とどう向き合うべきか、そのヒントを探っていきます。
『ゆるストイック』(佐藤航陽 著/ダイヤモンド社/1,760円)
稀代の起業家が語る、次の世代の生活スタイルとは----。優秀な若者は、「淡々と」「粛々と」「黙々と」自分のやりたいことをし続けることができる。まさに、「ゆるストイック」を体現している。この生活スタイルを身につけるために、「運・努力・才能」を学び直し、生き方を変えよう。