ふきのとう、ハマグリ、菜の花など芽吹きを感じる春のコース
日本の食材、特に旬の野菜・シーフードにこだわっているのがnaoシェフの特徴だ。例えば今の時期の前菜は、旬のふきのとうとホタテがメイン。山菜のソテー、ワサビ菜を合わせ、春らしいほろ苦さを携えたホタテがいきいきとしていて、キウイの甘酸っぱさが春の芽吹きを思わせる。上部にトッピングされたほうれん草の泡のソースが、まるでフキの花のつぼみのようにも見えるのも面白い。
ペアリングするワインは、茨城県にある牛久醸造の「エン ヴィオニエ 2023」。栽培醸造家の佐野さんが塩尻ワイン大学でともに学んだ、塩尻市片丘の吉江豊さんのヴィオニエというブドウ品種を使った白ワインだ。飲み口はキンモクセイのように甘く味の広がりがきれいで、土っぽい香りもあり、青々とした料理によく合う。
フルーツを主役に据えた料理も、naoシェフならでは。春の今の時期は、和歌山県産のハッサク、ポンカン、不知火、黄金柑という4種類の柑橘に、透き通るほど薄くスライスしたイカをのせ、昆布とイカスミのソースをあわせた一皿が振舞われる。
合わせるワインは奈良県唯一のワイナリーであるドメーヌ・キタニの「オレンジ 2023」。大阪府羽曳野市の自社農園産のデラウェアに、奈良県天理市産のモンドブリエとソーヴィニヨンブラン、ピノグリなどをブレンドしており、ミネラリーで奥行きがある味わいだ。料理に添えられたカルダモンの白い泡や、柑橘に一味唐辛子を合わせたパウダーのスパイシーさがイカと柑橘と合わさりチャツネのようなニュアンスになり、ワインへとつなぐ。