トヨタ自動車「クラウン」に並々ならぬ愛情を持つユーザーが集うコミュニティ「THE CROWN CLUB」の走行イベントに潜入してみた。どんな内容なのか。新たに発売となった「クラウンエステート」の評判は? 現行型クラウンは売れているのか! いろいろ聞いてきた。
クラウンエステート開発主査は何を語った?
今回のイベントに参加できたのは、クラウン好きが集うファンコミュニティ「THE CROWN CLUB」のメンバーから抽選で選ばれたラッキーな人たち。現行型「クラウン」(16代目)ですでに発売中の「クロスオーバー」「スポーツ」「セダン」だけでなく、まもなく登場予定の「エステート」を含めた全4台をサーキットで試乗できるという羨ましいイベントだ。
プレゼンテーションには新型クラウンのチーフエンジニアを務める清水竜太郎氏、クロスオーバー、スポーツ、エステートの開発主査を務めた本間裕二氏、シリーズの走行性能全般を担当した多和田貴徳氏、セダンの開発を担当した中島誠一氏、エステートの開発を担当した中田和良氏、シリーズのデザインを統括した宮崎満則氏、スポーツのエクステリアデザインを担当した小出幸弘氏ら新型クラウン開発の主要メンバーが勢ぞろいした。
清水氏はイベント冒頭のあいさつで次のように述べた。
「革新と挑戦というのが代々のクラウンのスローガンですが、16代目は新しい時代のクラウンということで、ライフスタイルに合わせた4つの形で提案しました。まもなく4つ目のエステートを発売することになる今年は、クラウン生誕70周年という節目の年であるとともに、次の70年に向けたスタートラインでもあります。皆さまにはこれまでも、いろいろな形でクラウンを支えていただきましたが、改めてクラウンブランドをどんどん広め、育てていきたいと思っています。イベントでは我々と遠慮なくコミュニケーションをとっていただいて、忌憚のない意見を頂戴したいと思います」
本間氏はクラウン4兄弟の大トリを飾るエステートについて思いを語った。
「宮崎さんをはじめとするデザインチームが最初に描いたエステートが、オレンジボディのこのスケッチです。製造メンバーは『このカッコいいデザインをそのまま世に送り出すんだぞ!』という意気込みで作ってきました。エステートには、仕事にも遊びにも一生懸命なお客様に満足いただきたいという思いを込めましたが、やはりクラウンなので、上質、洗練、余裕というキーワードは忘れていません。全長2mの完全フルフラットなラゲッジには、リアシート背面に拡張ボードというトヨタ初の機構を採用するとともに、デッキテーブルやデッキチェアも設定しました。アクティブライフを思う存分楽しんでいただきたいと思っています。全席特等席というのが16代目クラウンの特徴ですが、その特等席の考え方を荷室まで広げたのがエステートです」
クラウンファンがエステートに興味津々?
富士スピードウェイのショートコースを使用した試乗会では、4種類のクラウンを取っ替え引っ替えで全てに乗ることができる。トヨタ凄腕技能養成部グランドエキスパートの片山智之氏をはじめとする“匠”ドライバーたちがステアリングを握ったり、助手席に乗ったりして走りの“奥義”を伝授してくれるというクラウンファン垂涎の試乗体験だ。参加者は贅沢な時間を過ごすことができたようだった。
兵庫県からクラウンクロスオーバーの「G」グレードで自走して参加していたご夫婦に話を聞くと、「今回はエステートにぜひ乗りたいと思って参加しました。実際、走行時の安定感はさすがでした。前はカローラクロスに乗っていたのですが、それまであまり運転していなかった妻が、クラウンにしてからは“私が乗っていくよ”と自分で運転するようになりました。安心感が全然違うからなのだと思います」とクラウンの良さを教えてくれた。
試乗会後はトヨタ側のメンバーが参加者全員と膝を突き合わせて意見交換する場面が見られた。参加者にとっても開発陣にとっても極めて貴重な体験になったはずだ。清水氏は「クラウンの4つのキャラクターを十分ご体感いただけたと思います。これを入り口に販売店にも足を運んでいただき、クラウンブランドのお仲間になっていただきたいと思います」とし、「クラウンを買ってくれるかな?」「いいともー!」の掛け声で締めくくった。
クラウンの販売状況は?
2024年1月~12月の乗用車ブランド別販売台数(日本自動車販売協会連合会)を見てみると、クラウンは全体の15位で6万2,628台が売れている。前年比では45.5%の増加だ。月販平均は5,200台強で、目標の3,500台を上回っている。内訳はクラウンスポーツが約3万2,500台と人気で半数以上を占め、クロスオーバーが1万6,200台、セダンが1万4,000台と続いている。今年はこれにエステートが新たに加わるのだから、やっぱりクラウンはしっかりと売れているのだ。
自動車顧客のロイヤリティを強化するためには、一人ひとりのニーズや状況に応じた「パーソナライズ」や、顧客と感情的につながる「親密性」が大事だとされている。クラウン専門店の「THE CROWN」やイベント参加者らがゆったり宿泊できる「富士スピードウェイホテル」などの“ハコ”もしっかりと設置しつつ、濃密なユーザーイベントを開催する。クリックひとつでクルマが購入できる時代になっても、こうしたイベントが必ずユーザーを惹きつけるんだな、と感じた今回の試乗会だった。