トヨタ自動車が「クラウン(エステート)」を発売した。価格はハイブリッド車(HEV)が635万円、プラグインハイブリッド車(PHEV)が810万円。月販基準台数は1,500台(うちPHEVは500台)だ。広大な室内空間を持ちながらSUVほど背が高くないエステートは、国産ステーションワゴンの新たな選択肢として貴重な存在かも? エステート発表の場となったイベント「Discover Your Way Life with CROWNs.」に行ってきた。
クラウンエステートってどんなクルマ?
クラウンエステートはワゴンとSUVを融合させたような独特なパッケージングのクルマだ。リアシート背面にはトヨタ初となる新機構「ラゲージルーム拡張ボード」を装備しており、これを使えば全長2mのフルフラットな荷室空間を作り出すことができる。
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「クラウンエステート」のボディサイズは全長4,930mm、全幅1,880mm、全高1,625mm、ホイールベースは2,850mm。この展示車はPHEVでボディカラーは「プレシャスメタル」×「マッシブグレー」
エステートはHEVの「Z」とPHEVの「RS」の2グレード展開だ。PHEVはフル充電で89kmのEV走行(充電した電力を使用した走行)が可能。燃費はHEVが20.3km/L、PHEVが20.1km/Lだが、PHEVの場合、自宅で充電しておけばほぼガソリンを使わずに日々の移動をこなせてしまうはずなので、実質的な燃費はもっと良好だと思われる。
外観上の特徴はフロントグリル。横に並ぶ「クラウンセダン」と見比べるとわかりやすいが、「クラウンエステート」はバンパー一体型のフロントグリルになっている。現行型(16代目)「クラウン」4車種のプロジェクトチーフデザイナーを務める宮﨑満則さんによると、エステートでは「品格がありつつカジュアル」なデザインを狙い、バンパー一体型のグリルを選択したとのこと
たくさんのヒト・モノを積んで長距離移動に出掛けたくなる「クラウンエステート」。「目的地に到着してからも思い切り楽しめる」クルマに仕上げるため、走りの面では「直進安定性」と「快適さ」にこだわったとクラウン製品企画主査の本間裕二さんは話していた
ワゴンユーザー待望の1台?
日本ではステーションワゴンの選択肢が減りつつある。特に国産ワゴンとなると、スバルの「レヴォーグ」はパッと思い浮かぶものの、選択の幅はあまり広くない。エステートが「国産ワゴン需要の受け皿」として注目を集める可能性は? クラウンチーフエンジニアの清水竜太郎さんはこう語る。
「確かに日本におけるステーションワゴン、特に国産車はモデル数がそんなにないという状況ですが、歴代モデルを振り返るとクラウンにはワゴンがけっこうありました。分かりやすい例でいうと、(過去のクラウンにも)エステートがあります。(昔の)エステートに乗っていらっしゃるお客様で『次の行く先がない』というお客様もいらっしゃいますので、その受け皿にはなれると思います。また、「SUVだと背が高すぎる」とおっしゃるお客様にも、エステートであれば満足していただけるはずです。ユーティリティ性にあふれる1台ですので、いろいろな使い方をしていただければと思っています」
広い荷室は欲しいけど、駐車場などの問題で車高は抑えたいという人にも、エステートならしっかりと訴求できそうだ。
「Discover Your Way Life with CROWNs.」は麻布台ヒルズで3月16日まで開催中。会場には「クラウンエステート」の特別仕様車「THE LIMITED-MATTE METAL」も展示されていた。クラウン専門店でのみ購入可能な特別なモデルだ
クラウンユーザーの若返りが進行中?
エステートの発売で、ついに現行型(16代目)クラウンの全4タイプが出そろったことになる。これまでのイメージを刷新した新型クラウンには輸入車ユーザーや(これまでと比べると)若い顧客も関心を示しているとのこと。清水チーフエンジニアによれば、新型クラウン購入者の輸入車からの乗り換えは先代クラウンに比べ2倍に増加。20~40代の若年層も先代クラウンに比べ2倍に増えているという。新型クラウン購入者の平均年齢は先代比で10歳ほど若返ったそうだ。
新発売のエステートはアウトドア系の趣味を持つ若者や小さな子供がいるヤングファミリーにも受けがよさそうなクルマなので、クラウンユーザーの平均年齢は今後、さらに下がるかもしれない。