外壁のひび割れの原因
外壁のひび割れはさまざまな理由で発生します。ひび割れの補修を行う際にはそれぞれの原因に適した方法で修繕するとともに必要に応じて対策を行う必要があります。ここではひび割れの主な原因を4つ紹介します。
経年劣化が原因で発生
ひび割れの原因の多くは経年劣化です。外壁塗装は永久的なものではないので時間とともに劣化をしていきます。その過程で顕在化した劣化症状の一つが外壁のひび割れです。
外壁塗装を行ってから数年後にひび割れが生じているのであれば経年劣化が原因である可能性が高く、塗装時期が近づいていることがわかります。
外壁材の乾燥が原因で発生
外壁がモルタルやALC、コンクリートのような外壁材の場合は乾燥が原因で発生したひび割れの可能性があります。外壁材の乾燥によって外壁の表面の塗膜も追従して変形し、ひび割れとなって表れます。
地震や振動が原因で発生
外壁のひび割れは外部からの影響で発生することもあります。代表的なものは地震で、揺れによる振動が原因で建物が軋み、硬い外壁の表面にひび割れとして表れます。
振動は地震以外にも大型車や電車の通過によって生じることがあり、何度も振動を受け続けることで段々とひび割れが発生します。
塗装業者の施工不良が原因で発生
外壁塗装をして数ヶ月でひび割れが発生しているのであれば施工不良が原因かもしれません。この場合は前回塗装をした塗装業者に連絡をして一度診てもらいましょう。
施工不良の原因は大きく二つあり、外壁塗装では下塗り、中塗り、上塗りと複数回塗装をしますが、それぞれの過程で十分な乾燥時間を確保できていないときに発生します。これは施工時のミスと言えましょう。二つ目は外壁材との相性で、こちらは使用した塗料が馴染みづらいことが原因で、現地調査の段階でミスがあったときに起こります。
外壁のひび割れの種類
外壁に生じるひび割れは総称してクラックと呼ばれ、幅や深さ、方向によって危険度合いが異なります。ここでは代表的な3種類のクラックについて紹介します。
本項ではクラックのサイズについても言及します。クラックのサイズは定規で測るのは難しいのでクラックスケールと呼ばれる器具を使用して計測します。クラックスケールはホームセンターやネット通販で購入できるのでセルフチェックの際に活用してください。
ヘアクラック
最初に紹介するのはヘアクラックです。ヘアクラックはヘア(髪の毛)のように細いひび割れのことで、基準としては0.3mm以下のひび割れを指します。
ヘアクラックは外壁の表面の塗膜に入ったひび割れのため、外壁に大きなダメージを与えるものではなくすぐに修繕工事が必要なものではありません。しかし、一度外壁に入ったひび割れは自然に直ることはなく、徐々に幅が広がっていき後述する構造クラックへと繋がります。そのため数ヶ月後を見据えて職人に相談しておくのもおすすめです。
構造クラック
構造クラックは症状が進行したひび割れで、構造部分にまでひびが入っている状態です。見分け方はこちらもクラックの幅で、0.3mmを超えるようであれば構造部分にもダメージがあると考えてよいでしょう。
構造クラックほどの幅になるとひび割れ箇所から雨水や害虫が侵入する可能性があります。雨水の侵入は雨漏りや外壁材の腐食に繋がり、カビの発生を引き起こす可能性があります。快適な生活を損なうだけでなく健康被害を引き起こすケースもあるので早急に対応しましょう。
開口クラック
開口クラックとはサッシやドアなどの開口部分周辺に発生するクラックです。この場所は窓の開け閉めで衝撃が加わりやすいこともあり進行が早いクラックでもあります。
開口クラックはサッシに沿って発生することから伝ってきた雨水の侵入を許しやすく、構造クラックと同様に早急に対処するようにしましょう。初期症状であるヘアクラックほどの幅の時点であっても油断はできないので見つけたらまずは業者に相談してください。
DIYで補修できるひび割れ
住宅に発生するクラックについて理解したところでここからは自身で補修ができるのかどうかを解説します。
ヘアクラックであればDIYで作業可能
DIY可能かどうかを見分ける基準として最もわかりやすいのはクラックの幅です。前述したヘアクラック程度であればあわてて対処する必要はありませんがDIYで補修可能です。
ヘアクラックの補修ではスプレータイプのセメント補修スプレーを使用するのがおすすめです。インサルクラックシャットキットのような補修材は、練りセメントでは不可能な細いクラックに対しても簡単補修が行えます。補修方法も専用のボンドを塗布した後にスプレーで吹き付け、余剰分をスポンジで削り、再度ボンドを塗布するだけの簡単補修です。
この方法は主にクラックを目立たなくするための補修であることを覚えておきましょう。また、クラック幅が1mmを超えるようなクラックでは構造部分の影響も考慮してDIYをするのではなく必ず業者に相談するようにしてください。
何かをぶつけて塗膜が剥がれたケース
外壁の一部が錆びてしまったり、何かをぶつけたことで部分的に塗膜が剥がれてしまった程度であればDIYで補修できることが多いです。DIYで補修できると入ってもあくまで応急処置のため基本的には塗装業者に相談をすることをおすすめします。
DIYする場合は外壁専用の塗料はホームセンターでも購入できるので似た色を選定して塗装します。塗料の種類が異なるため外壁の状態や色によっては周囲と浮いてしまうことがあります。自身で塗装を行う場合は使用する塗料の説明をよく読み、希釈や乾燥時間など適切な状態で行うようにしててください。
縁切りクラックに注意してDIYしよう
縁切りクラックとはモルタル外壁でよく発生する症状で、施工を別日に行ったときに発生します。通常は同じ面であれば同じ日に施工をして同時に乾燥させるためこのようなことは起こりませんが、自身で補修をしたことで工期の差が生まれ、もともとの外壁となじまずにクラックが生じます。
通常の補修では既存部分を一度削って行いますがDIYで行うのはリスクが高く、悪化させる要因にもなるのでもし作業を自身で行うのであれば注意して行ってください。
DIYで外壁塗装を行う際のリスク
本項では自身で外壁塗装を行う際のリスクについて解説します。DIYを考えているのであればリスクについてもきちんと理解してから作業を行うようにしてください。
危険な高所作業
外壁塗装の現場では足場が仮設されていることからわかるように基本的に高所作業が必要です。1階の外壁で手の届く範囲であれば別ですが、はしごをかけて作業をするような場合は特に注意が必要です。足場が不安定の場合、落下して怪我をしてしまうことも考えられます。知人などにはしごを抑えていてもらうなど安全面に配慮して作業を行う事が大事です。
可能であれば自身での作業時にも丈夫な足場を組んで作業を行うのが望ましいです。
作業期間の見通し
作業が数時間で完了するような軽度の補修であれば問題ありませんが、何日にもわたって作業を行うのであればDIYで行うのはリスクが高いです。外壁塗装を仕事としている職人であっても1日で塗装できる面積は20㎡~30㎡ほどで、素人であれば更に少なく10㎡程度です。塗料は作業中も乾燥するためスピードも重要で、適切な厚さで塗装をするのも技術が必要です。
塗料の性能を発揮するには技術が必要
塗料には耐用年数があり、これでおおよその寿命がわかります。しかしこれはあくまで適切な施工をした場合にのみ当てはまるもので、塗膜の厚みや乾燥時間の過不足があれば耐用年数の間持たせることはできません。
塗装業者に必須の国家資格はありませんが、塗装技能士のようにその知識や技術、経験によって取得できる資格があります。特に一級塗装技能士の場合は7年以上の実務経験が受験資格となっているほど塗装の技術は奥が深いものなので、DIYをする際にはつ場よりも劣化しやすいことを頭に入れておきましょう。
結果として高額になるケースも
塗膜の厚みや乾燥時間が適切でなければ施工不備となってすぐに剥がれてしまうため結果として職人に依頼する事になり、かえって高くついてしまうことも考えられます。職人の作業では塗装部分を剥がしてから作業を行うため時間も費用も余計にかかってしまうことを考えるとDIYのリスクの高さが窺えます。
外壁塗装のDIYを考えている方の多くは塗装業者に依頼すると高くつくから自分でやろうと思っているでしょう。しかし前述したようにDIYで施工しても通常よりも寿命は短くなりますし、怪我の危険もあります。万が一作業がうまく行かなくて最終的に塗装業者に依頼すれば当然費用もかかります。
とくにこのようなケースで後から塗装業者に依頼する場合は塗装だけでなく失敗した部分を剥がし、下地を調整してからの作業になるので基本的にその分の費用が加算されて高くなります。
DIYで補修、外壁塗装を行う手順
DIYのリスクについて理解したところでここからは実際にDIYで外壁塗装を行う方へ向けて手順を紹介します。基本的な塗装工事の手順のため細かな工程は家の状態や塗装箇所、使用する塗料に合わせて進めてください。
- 足場を組んで安全性を確保する
- 養生をして周囲を保護する
- 外壁の汚れを洗浄する
- 劣化した箇所の補修を行う
- 下塗りをする
- 中塗り、上塗りをする
- 点検をして不備がないか確認する
- 養生と足場の撤去
足場を組んで安全性を確保する
塗装前には安全のために足場を仮設しましょう。はしごや脚立での塗装は足元が不安定になり怪我の危険性があるため、安全性を確保してから作業を始めてください。
養生をして周囲を保護する
足場の準備ができたら養生を行いましょう。サッシ周りや床など塗料を塗りたくない場所には養生シートやマスキングテープを用いて保護します。広範囲を塗装するのであれば養生ネットのように近隣の家に迷惑がかからないように養生を行います。
外壁の汚れを洗浄する
塗装前には外壁の汚れを高圧洗浄機などを使って落としましょう。一見きれいに見える外壁でも細かな砂やほこり、排気ガスが付着しているためきれいにしてから塗装をします。しっかりと洗浄しておかないと塗装に使用する塗料がうまく乗らず、施工不備になることがあります。外壁の洗浄を行った後は十分に乾燥をさせてください。
劣化した箇所の補修を行う
外壁のひび割れがあるような場合は塗装前に補修を行います。素材や幅にもよりますが、スプレー剤のような補修セットやコーキングによる補修を行います。
下塗りをする
補修が終わったらいよいよ外壁塗装に移ります。まずは塗料が外壁材に密着しやすくなるようにシーラーやプライマーで下塗りを行います。しっかりと塗料を機能させるために下塗りを行ってください。金属への塗装を行う場合には錆止め機能をもつ製品で下塗りをするのがおすすめです。
中塗り、上塗りをする
下塗り塗料が乾燥したら中塗りを行います。塗料によって塗る回数が決められており、多く塗ればいいというわけではないので規定回数分の塗装を行ってください。中塗りと上塗りは同じ塗料を使って行います。塗膜が十分な厚みになるようにムラなく塗り上げていきます。
点検をして不備がないか確認する
上塗り後、乾燥させたら塗装工事は完了です。最後に塗り残しや膨れのような異常が起きてないか確認をしましょう。不備があった際にすぐに手直しができるように足場や養生を撤去する前に行います。
養生と足場の撤去
点検が完了したら養生と足場を撤去しましょう。塗料にダメージを与えないよう丁寧に撤去し、最後に清掃を行います。
外壁のひび割れ補修に必要な費用
外壁のひび割れを確認し、業者に依頼する際に気になるのはやはり費用面でしょう。本項では外壁の補修を行う際の費用相場を紹介します。併せてDIYで工事を行う場合にかかる金額も紹介するので参考にしてください。
部分補修の場合の費用相場
まずは部分補修の場合の費用から見ていきましょう。費用はあくまで一般的な家の場合のため家の広さや劣化状態によって異なることがあります。
工事内容 | 単価目安 | 費用相場 |
---|---|---|
クラッキのコーキング補修 | 1,700円~2,500円/㎡ | 10万円~30万円 |
外壁のキズや穴の補修 | 1,000円~8,000円/箇所 | 状態や数によって変動 |
錆びのケレン作業 | 約2,000円/㎡ | 約10万円 |
高圧洗浄 | 200円~500円/㎡ | 2万円~3万円 |
軽度な劣化への外壁塗装 | 1,700円~5,000円 | 20万円~50万円 |
シーリング増し打ち | 500円~900円/m | 5万円~15万円 |
シーリング打ち替え | 900円~1,200円 | 5万~20万円 |
全面工事の場合の費用相場
全面工事を行う場合は家の大きさによっても費用が異なるため一般的な住宅サイズである2階建ての延床面積30坪の住宅の場合で紹介します。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
モルタル外壁への塗装 | 60万円~80万円 |
サイディング外壁への塗装 | 60万円~100万円 |
サイディングのカバー工法 | 100万円~250万円 |
サイディング張り替え | 150万円~300万円 |
DIYで施行をする場合の費用相場
最後にDIYで外壁塗装を行う場合にかかる費用を見ていきましょう。ここでは上で挙げた家の同じ条件で費用を算出しますので費用の比較をしてみてください。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
ハケや養生などの道具類 | 3万円~5万円 |
足場仮設 (資格が必要なため外注) |
約20万円 |
下塗り材 | 8万円~10万円 |
塗料(2回塗り) | 10万円~30万円 |
施工費 | 自分で行うため0円 |
合計金額 | 約40万円~65万円 |
このことからわかるように外壁塗装はDIYで行っても40万円以上の金額は必要で、さらに自分で塗装をするのであれば1ヶ月近く毎日作業を行う必要があります。
費用だけ見れば確かに少し安くできるかもしれませんが、時間的な部分までを考慮するとあまり賢い選択とは言えません。前述通り塗料の性能を最大限引き出すことができる技術についても考えると寿命は短くなるためうまくできたとしても長い目で見た場合は高くつきます。施工不備によって再塗装が必要になったり、雨漏りが起きてしまえばそれ以上の改修費用がかかることまで考えると外壁塗装は専門業者に依頼すべきであることがわかります。
外壁塗装は専門業者に任せましょう
この記事では外壁塗装や外壁の補修をDIYで行う方法や業者依頼すべきかの見分け方を解説しました。軽微な補修程度であれば自身でも工事は可能で、安く済ませることも狙えますが、規模が大きくなるほど専門業者に任せるべきであることがわかったかと思います。
餅は餅屋という言葉があるように外壁塗装は外壁塗装屋に依頼をして賢くメンテナンスを行いましょう。外壁塗装業者Naviでは全国の塗装業者や外壁工事が依頼できるリフォーム業者を独自調査して紹介していますので下記からお近くの業者を探してみてください。