コーキングとシーリングの違い
コーキングとシーリングには明確な違いがなく、同じ意味として用いられることが多いです。建築現場では同義語として扱われるコーキングとシーリングですが、これは従来のシーリング材にあります。国内で使用されていた主流のシーリング材が油性コーキングであり、この商品を使用していた職人や親方から教わった職人がコーキングと呼んでいることが多いです。
当時の油性コーキングは石綿(アスベスト)の影響もあり廃止されており、現在ではシーリングと呼ぶ職人も多くなってきました。シャープ化学工業株式会社では現在でも安全な油性コーキングを生産しており、ひび割れ補修や目地補修の資材として販売しています。
シーリングの役割
シーリングとは壁同士の隙間を埋めるため、充填剤を入れることを指します。主な目的としては目地からの水の侵入を防ぎ、外壁の負担を軽減することで建物の劣化を防ぐ役割があります。
そのほかにも外壁や浴槽、壁などの建材同士がぶつかり合うことを防ぐクッションとしての役割や、建材を固定する目的として使われています。簡単なひび割れ補修の補修材としても使用できる商品も販売されており、DIYもできるほど扱いやすい点も特徴です。
シーリングの種類
シーリング材は成分や硬化の方法、過程によって種類がさまざまあります。硬化の方法は下記のように大きく分類しても4つに分けることができます。
- 乾燥硬化型:水分の揮発によって乾燥して硬化する
- 湿気硬化型:空気中に含まれる水分と反応することで硬化する
- 混合反応硬化型:主材と硬化剤の化学反応によって硬化する
- 非硬化型:内部は硬化せず、表面に膜を張る
ここではシーリング材の成分ごとの特徴について詳しく解説します。
アクリル系
アクリル系のシーリング材は水性の素材を使用しているため伸びが良く、作業しやすいことが特徴です。また、湿った箇所でも施工できるという利点もあります。
しかし、硬化した際に肉痩せしやすく耐久性、耐候性が低いことが難点の素材です。とくに陽の当たる場所では短期間でひび割れが発生することもあり、外壁への使用はあまり相性が良くないためクロスの下地などの内装で主に使用されます。
ウレタン系
ウレタン系シーリングは耐久性が非常に高く、外壁に向いているコーキング剤です。硬化することで弾力性を持ち、ゴムのような質感になるため、外壁のひび割れや目地に対しても高い密封効果を発揮します。
しかし紫外線に弱いため、日に当たるところで使用する際は、必ず上から塗装をしなければいけません。また完全に硬化するまでには3〜7日間かかり、乾燥の際にも紫外線に当たらないようにする必要があります。
シリコーン系
シリコーン系のシーリング材は最も一般的に使われているコーキング剤です。価格が安価で耐候性、耐久性、耐水性、耐熱性が非常に優れています。
しかし、素材の特性上、充填後に表面から油が染み出すので上から塗装を施してもすぐに剥がれてしまうというデメリットがあります。専用のプライマーを使用すれば塗装可能なケースもありますが、基本的には外壁の塗装には向いていないコーキング剤です。その特性上キッチンのパネル目地や浴槽で使用されることが多く、目にしたことがある方も多いです。
変性シリコーン系
変性シリコーン系は硬化時間が早いという特徴があり、外壁への使用に最も向いているコーキング剤です。シリコーン系と異なり上から塗装しても剥がれることがなく、ウレタン系と異なり塗装しなくても十分な強度が得られます。
施工から30分も経てば指で表面に触れられるようになり、1時間で塗装できるほど硬化します。完全硬化まで3日しかかからないためとても扱いやすいのが特徴です。ただし、シリコーン系より耐久性が、ウレタン系よりも密着性がやや劣ります。またほかのシーリング材と比べて少し値段が高いこともデメリットとして挙げられます。
外壁シーリングの寿命と費用相場
シーリング材の種類や特徴を理解したところで寿命や費用相場について説明します。どれくらいのサイクルでメンテナンスをすべきなのか、メンテナンスにはいくらかかるのか参考にしてください。
外壁シーリングの寿命
外壁シーリングは施工されている場所やコーキング剤の種類にもよりますが、外壁に使用されている場合、寿命は長くて10年、短いものでは5年程度でメンテナンスをした方が良いとされています。実際のところ5年ですべての箇所が劣化し雨水の侵入を許すというわけではありませんが、特に日常的に雨風に当たりやすい場所や、陽が当たりやすい場所はひび割れや裂けが生じているおそれがあります。
5年と聞くとまだ早いようにも感じるかもしれません。また新築の場合だと、まだ綺麗な状態の家がほとんどだと思います。しかし実際には見えないところは寿命を迎えようとしています。もし、10年間メンテナンスを何もしていない場合には、早急に点検し、専門の業者に修理依頼することをおすすめします。
外壁シーリングの費用相場
外壁シーリングの補修は、費用がどのくらい発生するのでしょうか。メンテナンスの方法は2種類あります。「打ち替え」と「増し打ち」です。
打ち替えとは古くなったシーリング材をすべて剥がし、新しく打ち替えることです。費用は1mあたり1200円ほどが相場です。打ち替え工事では古くなって劣化しているシーリングを一度撤去して充填するため新築時と同様の効果を受けられます。
一方で増し打ちでは古くなって劣化しているシーリングはそのままで、上から施工を行います。費用は1mあたり900円ほどと打ち替えよりも安価に施工はできますが、既存のコーキング剤と馴染まずに剥がれやすくなってしまうなど、耐久性の観点では打ち替えに劣るため注意が必要です。増し打ちは既存のシーリングが撤去できない入隅や、防水シートを傷つけるおそれのあるサッシ周りで行われる工事です。
シーリング材は塗料よりも劣化しやすく、特に日が当たる南側の外壁では劣化しやすいため、塗装工事のたびに打ち替えるのが基本です。1年以内に塗装を考えており、一部のみ補修を行う場合などでは増し打ちで対処するなど状態とも相談して賢くメンテナンスを行いましょう。
業者に依頼するならまずは相見積もり
見積もり依頼だけなら無料で行ってくれる業者がほとんどなので、相場感を知るためにもいろいろな業者に見積もりを依頼してみましょう。もちろん安ければ安いほど良いというわけでもありません。業者によっては見積もりに足場代の費用が含まれていなかったり、手抜き工事をされる、あとから追加費用を請求されるといったリスクを孕んでいる可能性があります。
自社の職人が施工していたり施工時期を閑散期にずらしたりなど業者側の工夫により安価で済んでいる場合もありますが、Webサイト上だけではわからないこともあるので、信頼に足る業者であるかしっかりと確認しましょう。
業者を選ぶ際には、最初から1社に絞らずにまずは相見積もりを取ることをおすすめします。複数業者に見積もり依頼することで、料金の比較だけでなく、業者との相性やコミュニケーションの確認ができます。後悔しない塗装をするためにも、しっかり比較検討を行うことをおすすめします。
外壁塗装Naviでは地域ごとに塗装を依頼できる塗装業者やリフォーム業者を独自調査しています。依頼前に知っておきたい情報を見やすく比較ができるようにまとめているので業者選びの参考にしてください。
外壁シーリングの劣化症状
シーリングについての知識が深まったところでここからは劣化症状について解説します。実際にシーリングを見たり触ったりしてみてもどれほど劣化しているかの判断は難しいです。しかし劣化症状を知っておくとそろそろ検討したほうがいいとセルフチェックが行えるため、屋外へ出た際にチェックしてみましょう。
- 硬化:初期症状なので経過観察
- 肉やせ:1年以内の施工を検討
- ひび割れ:半年以内の施工を検討
- 剥離:早めの施工がおすすめ
- 破断:一度専門業者の調査を依頼
- 欠落:すぐに施工をしましょう
上でよく発生する症状と対処方法の早見表を作成しましたのでセルフチェックの際に参考にしてください。細かな症状や状態の説明は下記でそれぞれ詳しく解説します。
硬化
シーリングの硬化は最初に発見できる劣化症状です。新しいシーリングは指で押してみると程よい弾力がありクッションの役割を果たしていることがわかります。しかし、施工から時間が経って劣化し始めると硬いゴムのように弾力が徐々に失われていきます。
この状態は完全に機能が失われているわけではなく、あくまで影響を受けやすい表面に近い部分のみである可能性が高いのですぐに補修が必要というわけではありません。しかし、徐々に下で紹介するような劣化症状があらわれ始めるため定期的にチェックしておくことをおすすめします。
肉やせ
シーリングの肉やせは硬化の状態が進行して発生します。経年劣化によってシーリングが薄くなってきており、それによって施工時よりも質量が減っている状態を指します。触ってみると弾力がさらになくなっており、進行状態によっては成分が粉状になって指に付着することもあります。
肉やせは弾力性を持たせるための可塑剤などの成分が溶け出てしまうことで起こるため厚みが薄くなっている状態です。こちらもすぐに施工を必要とするわけではありませんがひび割れへ進行する前に手を打っておくと安心です。
ひび割れ
シーリングのひび割れは経年劣化が進行することで起こる症状です。硬化が進行することで弾性が失われ、車の通行などの振動が積み重なり徐々にひび割れが発生します。ひび割れは振動のたびに広がって行き、目視できるような大きさになることで症状として認知されます。
細かなひび割れが確認できるようになったらメンテナンス時期が近づいている証拠です。亀裂や剥離まで進行をしてしまうと雨水の侵入を許すため工事について検討しましょう。
剥離
剥離とは外壁材とシーリング材の間に隙間ができている状態です。シーリング本来の役目を果たせていないため早めに施工をするようにしましょう。肉やせによって剥がれてしまうケースや、ひび割れから亀裂になり、裂けてしまった際に確認できる症状です。
破断
シーリングの破断はひび割れの進行が進み、下地まで進行しているような状態です。シーリングが裂けているので役割を果たせないだけでなく下地にダメージを与えてしまう状態でもあるので早めの施工が求められます。一度近くの専門業者に依頼して状態を調査してもらったうえで適切な対処が必要な段階です。
欠落
シーリングの欠落は非常に危険な状態で、すでにシーリング材が取れてしまっているような状態を指します。下地がむき出しのためダメージを受けてしまうのは当然ですが、雨水や害虫の侵入を許すおそれもあります。緩衝材としての役割もないため災害時にはより大きな被害が発生する可能性があるため早急に処置が必要です。
外壁シーリングはDIYできる?
いざセルフチェックで症状を発見しても軽微なものであれば自分で作業できるのでは?と考える方は少なくありません。事実シーリング材やコーキングガンはホームセンターで安価に購入ができますし、DIYが趣味の方であれば使用経験があるという方もいるでしょう。
本項ではDIYが可能なのか、どの程度まで施工できるのか。手順や業者に依頼するかの判断について解説します。
部分補修であればDIY可能
結論から述べると、一部分のみの補修であればDIYでも行えます。しかし、専門家が行う作業よりも早めに劣化してしまう可能性が高いこと、ミスをすると外壁を傷つけてしまうことがあることは理解した上で作業をしましょう。
自分でシーリングを行なう手順
自分でシーリング工事を行うのであれば下記の手順を参考にして作業をしてください。増し打ちの場合は既存のシーリング材との相性や塗装の状態にも注意して作業をしましょう。
- 既存シーリング材の撤去※打ち替えの場合
- 養生
- プライマーの塗布
- シーリング材の充填
まずは使用するシーリング材とコーキングガン、カッターナイフ、プライマー、養生テープやマスキングテープを用意します。既存のシーリング材はカッターを使用して丁寧に剥がしていきましょう。奥まで刃を入れすぎると奥の下地を傷つけてしまうので注意して作業を行います。コツを掴むまでは時間がかかる作業ですが丁寧に作業をしてください。
撤去が完了したら養生を行います。養生テープやマスキングテープを使ってシーリング材が外壁に付着しないように覆います。養生が甘いと仕上がりが汚く見えてしまうのでしっかりと直線になるように貼っていくのがポイントです。
養生できたらプライマーを接着面に塗布します。プライマーは多すぎても少なすぎても良くないためむらなく塗布しましょう。コーキング剤とプライマーの相性を見て規定量を塗布してください。プライマーの塗布ができたらいよいよシーリング材を充填していきます。サイディングの目地に隙間なく充填するのがコツで、空洞ができないように多めに充填していくとうまく仕上がります。
充填後は余分なコーキング剤を除去し、均した後に養生を撤去して完成です。コーキング剤に合った方法で硬化をさせれば工事完了です。
高い場所や広範囲であれば業者依頼がおすすめ
シーリング工事では一部のみの簡単な補修であればDIYでも可能と説明しましたが施工の質を考えるとやはり専門業者に依頼をするのがおすすめです。とくに二階部分などの高所では作業に危険が伴います。シーリングは作業中も硬化していくためゆっくり作業をすることはできません。広範囲の作業をするのは素人には難しく、工事した結果すぐに剥がれてしまい最終的に業者依頼をする必要があったというケースも少なくありません。少しでも不安がある方は業者に頼むのが懸命でしょう。
シーリングの劣化を見極めて適切な工事を
この記事ではコーキングとシーリングの違いからシーリングの寿命、費用相場、施工方法について解説しました。シーリングは簡単そうに見えても難しい工事で、重要な役割を持っているためいえを長持ちさせ、安心して生活するためには必要不可欠です。劣化状態をしっかりと見極めて適切なタイミングで適切な工事を行いましょう。
外壁塗装Naviでは全国の塗装業者やリフォーム業者を独自調査して紹介。業者選びでチェックしておきたい項目をわかりやすくまとめているので外壁工事の相談先を探す際にご活用ください。