ケレンとは?
ケレンとは屋根や外壁の塗装をする前に下地の表面を綺麗にする作業です。語源は英語の「clean」だという説もあり、cleanが訛ってケレンになったのだと思えば少し馴染みがあるように感じるかもしれません。
ケレンは地味なようでいて重要な工程です。屋根や外壁の塗装を依頼する際にもケレンがどのような作業か分かっていたらケレンに費用が発生していても納得感を持って業者に作業を依頼できるでしょう。ここからはケレンについてまず知っておきたい基本的な事柄を解説します。
ケレン作業は塗装工事で重要な下地処理
ケレン作業は屋根や外壁の塗装工事で重要な下地処理の工程です。塗装工事では仕上がりを綺麗にし、塗装を長持ちさせるために塗装する前に下地を整える下地処理を行います。
下地処理のうちケレン作業では下地の表面に付着した錆びや汚れ、剥がれかかった古い塗装などを落とします。また、表面が滑らか過ぎる場合には細かな傷をつけ、塗料が表面に密着しやすい状態にするのもケレン作業の一部です。
目立たない下地処理なので省略してもよいのではと思っている方もいるかもしれませんが、表面の状態が塗装に問題ない場合を除いてケレン作業は必須です。ケレン作業を行わずに塗装すると、塗装や建物にさまざまなトラブルが発生し、余計な費用や手間がかかってしまいます。塗装を依頼している業者からケレンが必要だと言われたら、省略せず必ずケレン作業を行うようにしましょう。
ケレンを行わないと塗料が剥がれやすくなることも
ケレンを行わないと、塗膜が下地の表面にきちんと密着しません。そのため以下のようなトラブルが発生します。
- 塗膜が早い段階で剥がれてしまう
- 塗膜が剥がれたせいで建材の錆びや劣化が進行する
下地に密着していない塗膜は雨や紫外線に晒されて簡単に剝がれてしまいます。折角塗装をしたのに早く剥がれてしまっては屋根や外壁を保護できませんし、再塗装の費用が余計にかかってしまいます。
屋根や外壁をきちんと保護できていないと錆びや劣化が進行してしまい、建物自体がダメージを受けます。建物自体の劣化が進んでしまうと修繕するのに多大な費用と労力が必要です。
ケレン作業には確かに多少の費用はかかりますが、トラブルと余計な出費を防ぐために必要な作業です。ケレン作業をしていないと高価な塗料を使っても塗装が長持ちしません。塗装の効果を減らしてしまわないためにケレンは必要です。
ケレンの目的
ケレンに関してしっかりしたイメージを持っていないと、何の目的でケレンを行うか分からない方もいるかもしれません。ケレンを行う目的はいくつかあり、それぞれの目的を達成していくことでご自宅の建材を長い間きちんと保護できる綺麗な塗装を実現します。何のためにケレンを行うか簡単に知っておくと塗装に必要な工程がイメージでき、業者との会話もしやすいでしょう。ここからはケレンの目的を詳しく解説します。
表面の汚れを取り除いて劣化の進行を遅らせる
ケレンの目的の1つは、屋根や外壁の表面の汚れを取り除いて、建材の劣化が進むのを遅らせることです。屋根や外壁には以下のような汚れが付着しています。
- 錆び
- 粉塵
- 塩分
また、古くなり剥がれかかった塗膜が残っている場合もあります。特に錆びや塩分は建材を劣化させてしまいます。綺麗に塗装しても塗装の内側で外壁の劣化が進行するのでは、塗装をした意味が薄れてしまうでしょう。
汚れを落とす際には、粉塵や塩分などの軽い汚れは高圧洗浄で落としつつ、下地の錆びや落としきれない汚れはディスクサンダーなどの電動工具やハンマーやワイヤーブラシなどの手工具を使って除去します。ケレンを行えば建材を劣化させるような汚れが取り除かれて安心して塗装できる状態になります。
汚れや錆びを落として平らにすることで仕上がりが綺麗に
汚れや錆びを落として下地の表面を平らにし、仕上がりを綺麗にするのもケレン作業を行う目的の1つです。屋根や外壁の塗装では、塗料を外壁の表面に均一に塗ることで綺麗な仕上がりにします。汚れや錆びが下地の表面に残った状態だと塗装しても凹凸が残ってしまい仕上がりが綺麗になりません。また塗装が早い段階で剥げてしまう原因にもなります。
塗装する前にひと手間かけてケレン作業をすると仕上がりの美しさが段違いです。そのため、下地処理として汚れや錆びを落として平らにするケレン作業をします。
表面にあえて傷をつけることで塗料乗りを良くする
ケレン作業では、下地の表面にあえて細かな傷をつける「目荒らし」と呼ばれる作業をする場合もあります。細かな傷によって小さな凹凸がついていた方が塗料の乗りがよいからです。あまりにも下地の表面がツルツルだと塗料がきちんと密着せず、剥落の原因になります。
カードなどツルツルしたものの表面にマジックで文字を書いておいたら、擦れた拍子に消えてしまったという経験をした方もいるかもしれません。それと似た現象が塗装でも起きるので下地の表面をザラザラにして塗料が密着しやすくします。
下地の表面に傷をつけるというと驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、塗装を長持ちさせるために必要なごく普通の作業です。目荒らしでできた凹凸は仕上がりの綺麗さには影響しない程度の大きさなので心配はいりません。
ケレンの種類と費用相場
ケレンは大きく分けて4種類あります。どのケレンも下地の表面の汚れや錆びを落とす作業であることには変わりありませんが、主な作業の対象や使う道具などが異なります。
それぞれのケレンでどのような作業をして費用の相場はいくらかを知っておくと見積書を見る際にも役立つでしょう。ここからはケレンの種類と相場について詳しく解説します。
錆びの徹底除去を行う1種ケレン
1種ケレンは腐食が非常に激しい対象に対して錆びの徹底除去を行うもので、最も強力なケレン作業です。一般住宅ではほとんど行われず、橋梁や船舶などで行われます。用いるのは表面に研磨剤を吹きつけ洗浄する「ブラスト工法」や「酸洗浄」と呼ばれる手法です。
錆びを落とす効果は抜群である一方で、騒音が大きかったり、粉塵が飛び散ったりして周囲に大きな影響を与えるため注意して作業を行う必要があります。また、作業者に危険が及ばないよう保護も必要です。
一般住宅ではなく橋梁や船舶に対して行う作業なので、作業期間は作業対象の規模にもよります。平米単価は約3,000~4,000円です。
深刻な錆びに有効な2種ケレン
2種ケレンは全体の30%以上に及ぶような深刻な錆びが発生しているときに用いるもので、橋梁や鉄塔などで行います。費用や手間が大きいので一般住宅ではあまり行いません。一般住宅で2種ケレンを行うなら、2種ケレンが必要な部分を取り替えた方が安く済む場合がほとんどです。2種ケレンではディスクサンダーや電動ブラシなどの電動工具を使用して錆びを落としていきます。
古い塗料とは別の塗料で新しく塗装する場合、2種ケレンでは古い塗料は全て剥がします。一般住宅ではなく橋梁や鉄塔に対して行う作業なので作業期間は作業対象の規模次第です。平米単価は約1,500~2,000円です。
死膜のみを除去する3種ケレン
3種ケレンは鉄筋コンクリートの建物や一般住宅などで全体の30%以下の部分的な錆びや5%以上の塗膜の異常が発生している場合に行います。3種ケレンはより細かく3種類に分かれ、錆びや塗膜に異常がある面積によってどのケレンを行うかが異なります。
一般住宅の場合は、3種ケレンか4種ケレンで対応する場合がほとんどです。3種ケレンではワイヤーホイル、ディスクサンダーなどの電動工具だけでなくワイヤーブラシ、ハンマーなどの手工具も使用して作業します。狭い場所や凹凸は研磨スポンジを使う場合もあります。
3種ケレンでは錆びや汚れのほかに剥がれかかった塗膜である「死膜」を除去し、劣化していない塗膜は残します。古い塗料とは別の塗料を新しく塗る場合でも劣化していない塗膜なら残せるのが2種ケレンとの違いです。
一般住宅であれば作業は基本的に半日から1日程度で終わります。平米単価は約600~1,000円です
目荒らしを目的とした4種ケレン
4種ケレンは錆びがあまり進行しておらず、塗膜に異常がある部分が全体の5%以下の場合に行い、下地の表面に細かな傷をつける目荒らしを目的としています。目荒らしをしつつ高圧洗浄などで取れなかった細かな汚れを落としていきます。下地のダメージや異常が少なければ4種ケレンだけでも対応でき、費用はあまりかかりません。
4種ケレンは一般住宅でも行う作業で、ワイヤーブラシ、研磨パッド、サンドペーパーなどの手工具を用いて作業します。
一般住宅であれば作業は基本的に半日から1日程度で終わり、平米単価は約200円~400円です。
塗装工事におけるケレンのタイミング
ケレンをいつ行うのか、どのくらい時間がかかるのかが気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。塗装工事でケレンを行うタイミングは決まっています。ケレンのタイミングや作業時間が分かっていれば塗装工事全体の見通しを立てやすくなるでしょう。ここからは塗装工事におけるケレンのタイミングを解説します。
ケレン作業は高圧洗浄後に行う
ケレン作業は下地処理の中で高圧洗浄の後に行う作業です。塗装工事全体のおおまかな工程は以下の通りです。
- 足場設置
- 下地処理
- 養生
- 下塗り
- 中間検査
- 中塗り
- 上塗り
- 完了検査
- 足場解体
外壁や屋根には粉塵やカビなどの汚れや古い塗膜、錆びが付着しています。下地処理として、まず汚れや錆びをある程度落とすために高圧の水で外壁や屋根の表面を洗い流す高圧洗浄を行います。
それから細かな部分の汚れや錆びまでしっかり落とすために、電動工具や手工具で下地の表面を綺麗にするケレンを行います。最後に、ひび割れなどを補修するためにひび割れにシーリング材などを埋め込む下地補修を行って下地処理は完了です。
下地処理をきちんとしていないときれいな塗装ができません。目立たない箇所の施工ではありますが塗装がうまくいくかどうかを左右する重要な工程です。ケレンだけでなく他の下地処理の工程も省略しないようにしてください。
基本的には1日で終わることが多い
ケレン作業は外壁の下地の状態にもよりますが、基本的には1日で終わります。あまり時間がかかる作業ではありませんが、スケジュールなどが不安であれば依頼する業者に聞いてみましょう。下地の状態を調べておおよその作業時間を教えてくれるはずです。
また、見積書には「ケレン費」という項目が立っておらず、ケレン作業にいくらかかるのか分からないケースもあります。ケレン作業の項目が見当たらない場合には「下地処理費」などの項目に下地の補修費用などと一緒になってケレン費用が含まれている場合もあります。また下地の状態によってはケレン作業がそもそも必要ないのでケレン費の項目が立っていない場合もあるでしょう。
見積書にケレン費が見当たらなかったら念のため業者にケレンを行うのかどうかと費用の内訳を聞いてみましょう。正式に依頼する前に見積書を見て分からない箇所を解消しておくのは支払いなどのトラブルを防ぐために非常に重要です。
家を長持ちさせるために下地処理から丁寧に
今回はケレンについて解説してきました。ケレンは綺麗に長持ちする塗装を行うためには必要不可欠な工程です。多少の費用はかかりますが、トラブルを防ぎ仕上がりを良くするために必要な作業なので、省かないようにしてください。
屋根や外壁を塗装する際にはご自宅を長持ちさせるためにも目に見えない下地処理から丁寧に行いましょう。下地処理は塗装の効果を最大限発揮するために非常に重要です。また、業者選びの際にはケレン作業もしっかりやってくれる業者を選びましょう。
業者の中にはケレン作業をきちんと行わない悪質な業者もいます。業者選びをする際には実績や評判などにも注目しつつ、見積書が明確か説明が丁寧かなどを見ると良い業者に依頼しやすくなります。丁寧なケレン作業をする業者を見つけてトラブルのない塗装を行ってください。