アパート経営で落とせる経費を一覧化!注意点も知って正しく申告を

fudousan636535353 マンション・アパート経営

アパート経営者を悩ますもののひとつに確定申告、とりわけ帳簿付け(仕訳)があります。多くの経営者は「これは経費で落とせるのかな」「これは経費にならなさそう」「これはどの勘定科目にすればいいのだろう」などと迷いながら、帳簿付けをしているのではないでしょうか。

そこで本記事では、アパート経営者のみなさんがスムーズに帳簿付けができるように、アパート経営に関する必要経費の考え方、必要経費として落とせるものと落とせないもの、注意点について解説していきます。

アパート経営の経費の考え方

まずアパート経営に関わる税金と必要経費の考え方を確認していきましょう。アパート経営を始めると、その利益に対して所得税や住民税が課税されます。

税金 説明 計算式
所得税 個人の所得に対して課される税金 課税所得×税率-控除額
住民税 都道府県民税と市町村民税を合わせた税金 課税所得×10%+均等割

所得税や住民税の計算の基礎になる課税所得は、次のように計算します。

課税所得 = 不動産所得(※) + 給与所得など
(※不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費)

つまりアパート経営にかかった必要経費が多ければ課税所得の額が少なくなり、所得税や住民税が軽くなるという仕組みです。

ただ、アパート経営に関係のある支払いであっても、必要経費として認められるものとそうでないものがあります。また必要経費とされる性質の支払いであっても、例えば携帯電話のように事業でも私用でも使用している場合はそれぞれの使用割合で按分し、事業分のみを計上する必要があります。

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アパート経営で経費で落とせるもの

先ほどアパート経営に関係のある支払いであっても、必要経費として落とせるものと落とせないものがあると述べました。そこで、具体的にどのようなものが必要経費として認められるのかを見ていきましょう。アパート経営者がよく使っている勘定科目は次の通りです。

勘定科目名 説明
◎租税公課 土地・建物や事業に対してかかった税金
◎損害保険料 建物を火災や災害などから守るためにかけた保険料
◎修繕費 建物・物品の修理代
◎減価償却費 建物本体・附帯設備の取得費を一定期間にわたり経費処理で使う勘定科目
◎借入金利子 アパートローン等の利息
◎地代家賃 敷地を借りている場合の賃借料
●水道光熱費 土地・建物管理のための上下水道料金・電気料金など
●旅費交通費 関係先を往来するための交通費・宿泊費など
●通信費 関係先と情報をやり取りするための電話料金・郵便料金など
●広告宣伝費 入居者募集のための広告・宣伝に使う費用
●接待交際費 関係先への手土産代・飲食費など
●消耗品費 10万円未満もしくは使用可能期間が1年未満の消耗品代
●貸倒金 回収できない滞納家賃の経費処理で使う勘定科目
○新聞図書費 アパート経営に関する書籍代・新聞代・雑誌代
○管理諸費 敷地・建物・設備を管理するための費用
○支払報酬 税理士・司法書士・弁護士等に支払う報酬
○支払保証料 保証会社・保証機関にアパートローン等の保証人になってもらった場合に支払う保証料
◎その他の経費(●雑費) どの勘定科目にも属さない少額の費用
◎専従者給与 青色事業専従者に支払う給料
※解体撤去費・立ち退き料 アパートを解体・撤去するための費用、入居者の立ち退き料

【記号の意味】◎不動産所得の勘定科目 ●一般用の勘定科目 ○増設した勘定科目 ※営業外費用

それでは各分類で詳しく解説していきます。

アパート経営の基本知識について、詳細に知りたい人はこちらをご覧ください。

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不動産所得の勘定科目

不動産を取得する際に計上できる経費について紹介していきます。計上が可能な経費は以下の内容になります。

  • 公租公費
  • 損害保険料
  • 修繕費
  • 減価償却費
  • 借入金利子
  • 地代家賃

中には大きな金額を経費で計上することができる科目もありますので、順にみていきましょう。

公租公課

公租公課は、アパートの取得時にかかる税金や、アパートの敷地・建物の維持、賃貸事業などにかかる税金の費目です。具体的には次のものが該当します。

  • 固定資産税・都市計画税:所有している不動産に対して毎年課税
  • 登録免許税・不動産取得税:アパートの取得時に課税
  • 事業税:10室以上のアパートを賃貸経営している場合に収益に対して毎年課税
  • 自動車税・印紙税(収入印紙の購入費用)など

ここで注意したいのが自動車税です。個人事業主がアパート経営とプライベート兼用で同じ自動車を使う場合は、全額を計上するのではなく、アパート経営で使用した分とプライベートで使用した分を区別して按分率を決め、アパート経営で使用した分のみの金額を計上します。これを家事按分といいます。

按分率を決める方法は走行距離、使用時間、使用日数などが考えられます。例えば、アパート経営で使用した走行距離を記録しておき、総走行距離との割合を計算します。アパート経営として頻繁に使用するのであれば、平日はアパート経営用、休日はプライベート用と日数で按分することもできます。税務署から質問されたときに根拠をもって説明できるようにしておきましょう。

損害保険料

損害保険料は、賃貸経営しているアパートを火災や災害などから守るためにかけた保険料の費目です。具体的には次のものが該当します。

  • 火災保険料
  • 地震保険料
  • 施設賠償責任保険料など

長期契約の場合、初年に数年分の保険料を一括で支払いますが、必要経費の計上はその契約年数で割って毎年その年の分を計上します。これを期間按分といいます。例えば10年契約の火災保険に加入し、初年に保険料20万円を一括で支払った場合、毎年計上する金額は次の通りです。

【10年分の火災保険料】20万円 ÷ 【契約年数】10年 = 【毎年の計上額】2万円

実際の支払いは保険に加入した年に済ませていますが、契約満了の翌年まで毎年2万円ずつ計上するのを忘れないようにしましょう。

また、賃貸アパートと自宅が同じ建物の場合は、先ほど述べた自動車税と同じように家事按分が必要です。アパート部分と自宅部分の面積で按分率を求めて、アパート部分のみの金額を計上します。

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修繕費

修繕料は、アパートの設備・物品の修理に要した費用の費目です。

修繕料として計上できる条件は次の通りです。

  • おおむね3年以内を周期として行われる修理、または1件の修理の金額が20万円未満の場合
  • 修繕費か資本的支出かが判別がつかない修理で、金額が60万円未満、またはその資産の前年末の取得価額のおおむね10%以下の場合

具体的には次のことが該当します。

  • 建物の壁面・ベランダの塗装の塗り替え
  • ドア・トイレ・台所・換気扇・給湯器などの修理
  • 畳・障子・襖などの交換
  • 入居者退去後の原状回復に要する費用(ハウスクリーニング、鍵の交換など)

修理と呼ばれるものであっても、資産の使用可能期間を延ばしたり、価値を高めるための支出は、資本的支出に該当し必要経費として計上できません。資本的支出については、後で詳しく説明します。

減価償却費

減価償却費は、アパートの建物本体・附帯設備の取得費を一定期間にわたり経費処理で使う費目です。

事業のために用いられる建物・設備・備品などの資産は時の経過とともにその価値が減っていきます。これを減価償却資産と言います。減価償却資産の取得費は経費として計上できますが、取得時に全額計上するのではなく、その資産の使用可能期間で分割し、毎年減価償却費として計上します。

アパートの場合は建物の本体と附帯設備が減価償却資産に該当しますが、土地は対象になりません。建物本体と附帯設備の取得費を国税庁が定める法定耐用年数で期間按分します。

例えば、木造のアパートを2,000万円で建てた場合の建物本体の減価償却費は、次のように計算します。

【建物本体の取得費】2,000万円 ÷ 【木造住宅の法定耐用年数】22年 = 【毎年の計上額】約9万円

建物本体の法定耐用年数は次の通りです。

  • 木造:22年
  • 木骨モルタル造:20年
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造:47年

附帯設備の法定耐用年数は、電気設備、給排水・衛生設備、ガス設備などに分けられますが、おおよそ15年です。減価償却費は実際に毎年支出するわけではありませんが、大きな金額になるので、忘れずに計上しましょう。

減価償却費の計算に役立つ耐用年数ついて、より詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

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借入金利子

借入金利子は、借入金の利息の費目です。具体的にはアパートローンの金利や手数料が該当します。

融資を受けている金融機関から年末に、その年に返済した元金と金利の内訳を書いた書類が送られてきます。また、融資を受けたその年の手数料も経費の対象となります。

地代家賃

地代家賃は、土地・建物の賃借料や使用料の費目です。具体的にはアパートの敷地を借りている場合の賃借料が該当します。

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一般用の勘定科目

次に、アパート経営するうえでごく一般的に利用する経費の内容をご紹介します。計上できる勘定科目は以下の通りです。

  • 水道光熱費
  • 旅費交通費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • 接待交際費
  • 消耗品費
  • 貸倒金

このように、経営するうえで多くの科目が経費として計上することができます。では、勘定科目の内容について簡単に紹介していきます。

水道光熱費

水道光熱費は、上下水道料金・電気料金・燃料費などの費目です。具体的には次のものが該当します。

  • アパートの共用部分の電気料金
  • 敷地内を清掃・水撒きするための水道料金など

水道光熱費も自宅と共用している場合は、家事按分が必要です。

旅費交通費

旅費交通費は、関係先に行き来するときの交通費や宿泊費などの費目です。具体的には次のものが該当します。

  • アパートや管理会社などの関係先に行き来したときの電車代・バス代・タクシー代
  • アパート経営セミナーに参加したときのガソリン代・高速道路料金・駐車場代・ホテル代など

自動車税と同じように、自動車をプライベートで兼用する場合は家事按分が必要です。

通信費

通信費は、関係先と情報をやりとりするために必要な電話料金・郵便料金などの費目です。具体的には次のものが該当します。

  • 電話料金
  • 携帯電話料金
  • 郵便料金
  • インターネット料金など

通信費も自宅・プライベートと共用する場合は、家事按分が必要です。

広告宣伝費

広告宣伝費は、入居者募集のための広告費用・宣伝費用の費目です。具体的には次のものが該当します。

  • 不動産情報誌・サイトへの情報掲載料
  • チラシの作成費用
  • チラシのポスティング費用など

接待交際費

接待交際費は、関係先の接待費用・交際費用の費目です。具体的には管理会社・税理士事務所などへの手土産代・飲食代・慶弔費などがあげられます。

アパート経営とは関係のない人、例えば家族や親戚に対するものは経費で落とせません。特に法人化をして賃貸経営をしている場合はどの場合に計上するのかの基準を決めておきましょう。

消耗品費

消耗品費は、金額が10万円未満もしくは使用可能期間が1年未満の消耗品代の費目です。具体的には次のものが該当します。

  • 文房具・伝票・印鑑・名刺などの事務用品代
  • 10万円未満のパソコン・デジタルカメラなどの備品代
  • 蛍光灯・電球・電池などの日用品代
  • コンビニの複写機を使用したときのコピー代
  • クラウド会計ソフトの利用料など

貸倒金

貸倒金は、回収できない滞納家賃を損失として計上する際に用いる費目です。

ただし、滞納家賃を貸倒金として計上できるのは、滞納家賃の回収が確実にできなくなった場合のみで、滞納者が法人の場合は会社更生・民事再生・破産宣告など、個人の場合は自己破産・債券放棄などが必要です。

したがって、貸倒金を計上する場合は税務署や税理士などに相談することをおすすめします。

増設した勘定科目

アパート経営していくうえで、管理に必要であるとみなされる経費が対象になります。勘定科目の内容は以下の順で解説していきます。

  • 新聞図書費
  • 管理諸費
  • 支払報酬
  • 支払保証料
  • そのほかの経費および雑費
  • 専従者給与

新聞図書費

新聞図書費は、アパート経営や不動産に関する書籍代・新聞代・雑誌代などの費目です。電子書籍・雑誌読み放題サービスの代金も、アパート経営の参考のために購入した分は、必要経費として計上できます。

管理諸費

管理諸費は、アパートの敷地・建物・設備を管理するための費用の費目です。具体的には次のものが該当します。

  • アパートの賃貸管理委託の費用
  • 浄化槽の点検・清掃料金
  • 消防設備・ケーブルテレビ・インターネット設備の点検・整備料金
  • その他害虫駆除、樹木剪定等の費用など

支払報酬

支払報酬は、税理士・司法書士・弁護士などの士業・専門家に支払う報酬の費目です。金額や件数が少ない場合は、管理諸費に計上することもできます。

支払保証料

支払保証料は、アパートローンを組んだ際に保証会社や保証機関に保証人となってもらったときに支払う保証料の費目です。長期契約の保険料と同じように、保証料はローンの借入時に一括払いをしますが、借入期間で按分して毎年経費として計上します。

その他の経費あるいは雑費

その他の経費あるいは雑費は、どの勘定科目に該当しないもので、件数や金額が少ないため新たに勘定科目を設けるまでもない費用の費目です。

ただ決算書の雑費の金額が大きくなるのは好ましくないので、そのようなときは自分で勘定科目を増設することができます。この章で取りあげている新聞図書費、管理諸費、支払報酬、支払保証料も増設した勘定科目です。

自分が長期にわたって帳簿付けをしやすく、また税務署の担当者にも分かりやすいように、科目名を工夫し、どの支払いをその勘定科目に計上されるのかの基準を決めましょう。

専従者給与

専従者給与は、青色申告をしている場合で、アパート経営者の配偶者・親族に対してアパート経営に伴う仕事の対価(給与)を支払った場合の費目です。仕事の内容は、アパート経営に関する経理事務や入居者募集チラシの作成・配布などが考えられます。

専従者給与を計上するための条件は次の通りです。

  • 青色申告者(アパート経営者)が「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出している
  • 青色事業専従者(配偶者・親族)は青色申告者と生計を同一にしている
  • 青色事業専従者は青色申告者の扶養親族ではない
  • 青色事業専従者の年齢が従事した年の12月31日現在で15歳以上である
  • 青色事業専従者の従事期間が一定期間(原則6か月を超える期間)以上である
  • 従事者給与の支払いは届出書に記載方法に則り記載金額の範囲内である
  • 専従者給与の金額はその仕事の対価として適当である

白色申告の場合は専従者給与の計上はできませんが、条件に該当すれば白色事業専従者控除が受けられます。後で詳しく説明します。

解体撤去費・立ち退き料

アパートが老朽化したため建替えたり、アパート経営をやめたときにアパートを解体・撤去するための費用や、それに伴い入居者に支払った立ち退き料も必要経費で落とすことができます。

仕訳をするときは、次の勘定科目で処理します。

  • アパートの解体撤去費:固定資産除却費
  • 立ち退き料:雑損失

立ち退き料についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

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経費とならないもの

アパート経営に関係のない支払いが必要経費とならないのは当然のことですが、関係がある支払いであっても必要経費とならないものがあります。

必要経費とならないもの 説明
借入金の元本部分 アパートローン等の元本
資本的支出 資産を新たに構築したとみなされる支出
白色申告者の専従者給与 白色申告を行っている場合の配偶者・親族従事者に対する給与
個人的な税金等 所得税・住民税など

これらの支払いを誤って計上すると、申告の訂正・修正をしなければならないだけでなく、税務署から悪質と判断されると過少申告加算税・重加算税が課されることもあるので、あらかじめ確認しておきましょう。

借入金の元本部分

借入金の元本部分、具体的にはアパートローン等の元本部分の返済金は必要経費として計上できません。理由は、金銭の貸借は会計上の損益にあたらないためです。会計上の損益とは売上・費用・利益をいいます。その関係は次の計算式の通りです。

利益 = 売上 - 費用

通常はこの利益が課税対象となります。では、この関係をアパートローンに当てはめるとどうなるでしょうか。

【利益】 = 【売上】元本分借入金 - 【費用】元本分返済金 ※この式は誤りです

しかし、これでは借入金と返済金の差額部分が利益となり、それに対して課税されてしまいます。つまり、この式は誤りです。元本分返済金は費用とならず、元本分借入金も売上には当てはまりません。

したがって借入金の元本分返済金は毎年支払いが発生しますが、費用にはあたらないため、必要経費と認められず節税効果がありません。

資本的支出

資本的支出も必要経費として計上できません。資本的支出とは、固定資産の修理等のために支出した金額のうち、その価値を高め、または耐久性を増すこととなると認められる部分の金額をいいます。例えば次のようなものが該当します。

  • 避難階段の取り付けなど、物理的に付加した部分についての費用
  • 用途変更のための模様替えなど、改造・改装の費用
  • 機械の部品を特に品質・性能の高いものに交換した場合、その金額と通常の交換費用の差額

一般的に1件の修理の金額が20万円を超えるものが資本的支出とされます。そして、資本的支出に該当する費用は減価償却費の対象となります。

資本的支出と修繕料についてより詳しく知りたい方は国税庁のサイトの情報をお読みください。

国税庁資本的支出と修繕費

国税庁修繕費とならないものの判定

白色申告者の専従者給与

白色申告をしている場合の配偶者・親族従事者に対する給与も必要経費として計上できません。ただ、専従者給与の説明でも少しふれたように、白色事業専従者控除が受けられます。白色事業専従者控除を受けるための条件は、次のとおりです。

  • 白色事業専従者(配偶者・親族)は白色申告者(アパート経営者)と生計を同一にしている
  • 白色事業専従者の年齢は従事した年の12月31日現在で15歳以上である
  • 白色事業専従者の従事期間は一定期間(その年を通じて6か月)を超えている

白色事業専従者控除に該当すると、次のどちらか低い金額の控除が受けられます。

  • 配偶者の場合:86万円/配偶者ではない親族:1人につき50万円
  • 控除前の不動産所得の金額を従事者数に1を足した数で割った金額

ただし、白色事業専従者控除を受けると、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなるので注意が必要です。

青色事業専従者給与と白色事業専従者控除についてより詳しく知りたい方は国税庁のサイトの情報をお読みください。

国税庁青色事業専従者給与と事業専従者控除

個人的な税金等

個人的な税金等も必要経費とは認められません。具体的には次のものが該当します。

  • 所得税
  • 住民税
  • 法人税
  • 贈与税
  • 罰金・科料・反則金・過料など

個人的な税金を誤って計上しないよう留意しておきましょう。

アパート経営の経費の注意点

最後に、アパート経営の帳簿付けや確定申告に関する注意点を見ていきましょう。あらかじめ大事なポイントを押さえておけば、短い申告期間でもあわてずに済み、節税効果も高めることができます。

アパート経営の利益は確定申告をおこなう

1つ目は、アパート経営で利益が出た場合は確定申告をする必要があることです。毎年2月16日から3月15日の間に前年の収入・支出分を税務署に提出します。アパート経営で利益が出た場合もそのときに申告する必要があります。

なお、確定申告の期間はその年によって変わります。2021年は混雑緩和のため申告期限が4月15日まで延長されています。毎年1月になると国税庁のサイトにその年の確定申告特集確定申告書等作成コーナーがアップされるのでそちらを確認してください。

青色申告・白色申告とは

個人事業主の確定申告は、青色申告白色申告があります。さらに青色申告は3つの記帳方法があります。主な違いを次の表にまとめてみました。

申告の種類・方法 青色申告:複式簿記  青色申告:簡易簿記 青色申告:現金式簡易簿記 白色申告
特別控除額 55万円/電子帳簿保存またはe-Tax申告の場合は65万円 10万円 10万円 なし
所得要件 なし なし 前々年の不動産所得と事業所得の合計が300万円以下 なし
作成する帳簿
  • 総勘定元帳
  • 仕訳帳

(必要に応じて次の帳簿も)

  • 現金出納帳
  • 預金出納帳
  • 買掛帳
  • 売掛帳
  • 固定資産台帳
  • 給与台帳など
  • 現金出納帳
  • 売掛帳
  • 買掛帳
  • 経費帳
  • 固定資産台帳

(標準簡易帳簿)

現金出納帳
(現金以外の取引がある場合はその帳簿も必要)
  • 法定帳簿
  • 任意帳簿(売掛帳や固定資産台帳など)
事前に税務署に提出する書類
  • 青色申告承認申請書
  • 青色事業専従者給与に関する届出書(配偶者・親族に給与を支払う場合)
  • 青色申告承認申請書
  • 青色事業専従者給与に関する届出書(配偶者・親族に給与を支払う場合)
  • 青色申告承認申請書
  • 現金主義の所得計算による旨の届出書
  • 青色事業専従者給与に関する届出書(配偶者・親族に給与を支払う場合)
なし

この表からもわかるように、この4つのなかでは青色申告の複式簿記が特別控除額が最も大きく、節税効果が高い反面、作成・保存しなければならない帳簿が多く、記帳方法も複雑なのがデメリットであると言えます。

しかし、会計ソフトを利用すれば、日々の取引内容を入力するだけで簡単に記帳できますし、税務署や税理士が帳簿付けを指導してくれるサービスもあるので、青色申告の複式簿記を選ぶことをおすすめします。

アパート経営が赤字になったときは

アパート経営が黒字の場合は確定申告が必須ですが、赤字の場合でも確定申告をすることをおすすめします。

本業で勤務先からの給与所得があれば、副業のアパート経営で損失が出た場合でも、確定申告をすれば損益通算といって、他の所得と差引計算ができるため、最終的に所得税が安くなり、源泉徴収されていた所得税の還付を受けられる可能性があるからです。

例えば、本業の給与所得で3,000万円、副業のアパート経営で1,000万円の赤字が出た場合、差引2,000万円が所得の金額になります。

【給与所得】3,000万円(黒字) + 【不動産所得】▲1,000万円(赤字) = 【所得】2,000万円

ただし、不動産所得の損失のうち次のものは損益通算の対象になりません。

  • 貸出している不動産が趣味・娯楽、保養・鑑賞目的の場合(別荘等)
  • 不動産所得の損失の中に土地購入のための借入金利息がある場合

なお、不動産所得のほかに次のものが損益通算の対象になります。

  • 事業所得
  • 譲渡所得
  • 山林所得

家事按分でプライベートと分ける

2つ目は、帳簿付けをするときは、事業分とプライベート分をしっかりと区別して、事業分のみを必要経費として計上することです。

定期的に支払うものは一旦按分率を決めてしまえば、事情が大きく変化しない限りそのまま計算・計上できます。按分率を決めるときに特に注意したいのは、税務署の職員から質問されたときでも根拠を示して説明できるようにしておくことです。疑問や不安がある場合は、税務署や税理士にあらかじめ確認しておきましょう。

正しく領収書を保管する

3つ目は、領収書を正しく保管することです。まず、領収書の保管期間を確認しましょう(個人事業主の場合)。

確定申告の方法 青色申告 白色申告
原則 7年 5年
例外 前々年度の所得が300万円以下の場合:5年 消費税の課税事業者となっている場合:7年

続いて、領収書の処理・保管方法について考えていきましょう。支払いの件数が多い場合は、支払月別に箱・封筒に入れて、1週間ごとに会計ソフトに入力し、保管するのがおすすめです。少ない場合は、勘定科目別に封筒に入れたり、ノートに貼って保管し、ある程度まとまったら会計ソフトに入力するのがよいでしょう。

支払いのその日のうちに領収書の余白に「誰と・何を・どうしたか」をメモしておくと、会計ソフトに入力がスムーズにできます。領収書が発行されない場合は出金伝票を作成しておきましょう。

なお、紙の領収書をスキャナで読み取ったり、スマホやデジタルカメラで撮影し、電子データで保管することもできるようになりました。ただし、一定の要件を満たし、所轄の税務署長の承認を受ける必要があります。

キャッシュレス決済の場合は紙の領収書は不要です。利用明細のデータが領収書の代わりになるので、電子データか紙にプリントして保管しましょう。領収書の件数を削減するためにアパート経営専用のクレジットカードを作成しておくと便利です。

利益に応じて法人化を考える

4つ目は、安定して利益が出るようになったら、アパート経営の法人化を検討することです。所得税の税率よりも法人税の税率が低くなる課税所得の金額が800万円~900万円のラインが法人化を検討する目安と言われています。法人化をするメリット・デメリットは次のとおりです。

メリット デメリット
  • 所得税・住民税の節税ができる(法人税・法人住民税のほうが安い)
  • 資産の分散ができる
  • 欠損金の繰越ができる
  • 相続対策になる(役員報酬の形で資産の移転・継承ができる)
  • 厚生年金に加入できる
  • 出資を受けられる
  • 社会的信用が高まる
  • 法人を設立するための多額の費用が必要
  • 赤字が出ても課税される
  • 厚生年金に加入しても労使折半ができない

なお、公務員の場合は、賃貸経営が事業規模(10室以上あるアパート)であるときは、副業禁止規則に抵触する可能性が高いので注意が必要です。

まとめ

本記事では、アパート経営に関する必要経費の考え方、必要経費として落とせるものと落とせないもの、注意点について解説してきました。アパート経営の必要経費について理解が進むと、スムーズに帳簿付けができるようになるばかりでなく、必要経費を正しく漏れなく計上できるようになり、節税効果をより高めることができます。

いまでは、国税庁のe-Taxや確定申告書等作成コーナー、クラウド会計ソフトといったオンラインツールが普及し、税務署や税理士などの専門家もオンライン・オフラインでサポートをしてくれます。これらのツールやサポートを活用し、帳簿付け・確定申告に挑戦してみましょう。

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