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抵当権抹消は自分でできる?書類を揃えて法務局に申請しよう

不動産売却
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ローンを組んでいた家を売る場合には、抵当権を抹消しなければなりません。この手続きは専門家に依頼すると費用がかかるため、自分で行いたいと思っている人は多いのではないでしょうか。

実は抵当権抹消手続きは、手順に従って進めていけば自分で完了させることが可能です。今回は、自分で抵当権を抹消する方法をはじめ、追加で書類が必要になる特殊なケースの対処法について詳しく解説していきます。

併せて売却したい物件が遺産のときの抹消手続きはどのように行えばよいかも紹介するので、抵当権抹消の手続きをはじめる前に内容を把握しておき、スムーズに手続きを進められるようにしましょう。

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そもそも抵当権とは何か

抵当権抹消を行う手順について確認していく前に、まずは抵当権の概要を解説していきます。抵当権とは、お金を借りた際に貸した側(債権者)が借金の担保として不動産を確保しておく権利のことです。

口頭でも法的効力はあるものの、債権者が自身が貸したお金を優先的に返済してもらえるようにするには登記が必要となります。そのため、銀行などの金融機関で住宅ローンを組む際などには、必ず抵当権設定の登記を強制されます。

登記の完了後、債務者がローンを全て返済してしまえば、金融機関にとって抵当権はもう必要ありません。しかしその場合、金融機関側が自ら抵当権の抹消手続きをしてくれることは皆無でしょう。

抵当権抹消の基本

次に、抵当権抹消の基本について理解を深めましょう。

ローンを完済したら、金融機関が確保していた抵当権の価値はなくなります。しかし、権力がなくなった抵当権は、そのまま放置しても根本から消失されることはありません。

債務者側が抵当権を抹消する手続きを行わなければ、永遠に抵当権は存在し続けるのです。

抵当権抹消をする理由とは

そもそも抵当権抹消をなぜ行うのでしょうか。その理由としては、大きく次の3つの事項があげられます。

  • 不動産の売却の際に不利になる
  • 相続手続きの手間が増える
  • 書類の管理が難しい

それでは、それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。

不動産の売却で不利になる

住宅ローンを完済したら早いうちに抵当権抹消の登記を行っておかないと、いざ売却や融資の必要が生じた場合すぐに手続きを進められません

急によい買い主が現れたり有利な条件での融資が受けられる話をもちかけられたりしても、抵当権抹消登記の手続きをしている間にそのチャンスを逃してしまう可能性があります。

相続手続きの手間が増える

抵当権抹消の登記をしていない不動産を相続する場合には、相続する人が抹消登記の手続きを行うことになります。

そして相続人が抹消登記をする際、まずは相続の手続きをしなければなりません。相続手続きは遺産分割の協議をしたり相続税を申告したりなど、大変な工程を経て完了します。それからはじめて、抵当権抹消登記の手続きに取りかかることができるのです。

このように抵当権抹消登記は不動産の名義人が行うのと比べて手続きが複雑になるため、借入れ金を返済できた不動産に関してはすぐに抹消の登記を行っておくことをおすすめします。

書類の管理が難しい

住宅ローンを全て返済し終えると、金融機関より抵当権抹消登記の手続きに必要となるいくつかの書類が送られてきます。その後、抹消登記の手続きを行わないまま長期間これらの書類を放置しておくと、紛失してしまう可能性があることは否めません。

金融機関からの送付から長期間が経過した書類の再発行は難しいケースがあるので、抹消登記の手続きをきちんと完了させるためにもできるだけ早めに抹消登記の手続きをしておいてください。

住宅ローンを完済した直後なら、抵当権抹消登記の手続きは簡単に行えます。

ローンを完済しても抵当権は抹消されない

抵当権は住宅ローンなどを組むときにつけられるのですが、完済できたからといって自動的に抹消されることはありません

金融機関側も抹消手続きを行ってくれないので、不動産の所有者自らが手続きを進めていく必要があります。

抵当権抹消を依頼した場合の費用

抵当権抹消の登記は、必要書類を用意し法務局に抹消登記の申請を行うことで完了します。この手続きを司法書士に依頼した場合の費用相場を次の表にまとめました。

【土地が1筆・建物1個の場合の抵当権抹消費用】

登記申請の登録免許税 2,000円(不動産の個数×1,000円/土地と建物だと最低2,000円かかる)
司法書士報酬 10,000~20,000円+消費税
その他雑費 2,000円ほど(登記簿謄本の確認・郵送費など)
合計額 15,000~25,000円

なお抵当権抹消登記を自分で行えば司法書士への報酬分を節約することが可能です。その場合の登記費用は、土地建物1筆ずつの不動産で3,000~5,000円ほどが相場になります。

自分で抵当権抹消を行う手順

自分で抵当権抹消登記を行うときの手順は次の通りです。

  1. 登記申請書を入手する
  2. 売却予定の不動産を管轄する法務局へ相談する
  3. 金融機関から受け取る書類があるか確認する
  4. 登記申請書を作成する
  5. 作成した書類を法務局へ提出する
  6. 申請手続き完了
  7. 申請処理が終わったら一部書類を返却してもらう

これからそれぞれの項目について詳しく解説していくので、1つずつ確認していきましょう。

抹消登記は司法書士に代理でしてもらうのが当たり前だと思っている人は少なくありません。しかし想像以上に簡単に行えるので、ぜひチャレンジしてみてください。

登記申請書を入手する

登記申請書は実際に法務局に行ってもらうこともできますが、法務局のWebサイトからダウンロードするほうが手軽なのでおすすめです。

落ち着いて準備できるよう、できるだけ早い段階で記入例と一緒にダウンロードしておきましょう。

なお、敷地権とは土地と建物が一体となっているマンションなどの区分建物において、所有者がもっている敷地を利用する権利のことをいいます。

抵当権抹消登記申請書の様式はこちらからダウンロードしてください。

”法務局「抵当権抹消登記申請書」「抵当権抹消登記申請書(敷地権つき区分建物の場合)」”

また、抵当権抹消登記申請書の記入例は以下の資料を参考にしてみてください。

”法務局「抵当権抹消登記申請書の記入例」「抵当権抹消登記申請書(敷地権つき区分建物の場合)の記入例」”

売却予定の不動産を管轄する法務局へ相談する

抵当権抹消の手続きは、対象となる不動産が所在する地域を管轄する法務局でしか行えません。まずは、自分の不動産が該当する法務局はどこなのかを調べましょう。

その後、必ず管轄法務局に抵当権抹消の手続きを行いたい旨を相談しておいてください。なぜなら手続きの詳細が法務局ごとに異なるからです。

なお、法務局は各県ごとに1つあるのですが、北海道だけは4ヶ所に分かれています。北海道に所在する不動産の抵当権を抹消する場合には、最寄りの法務局に電話をして管轄の確認を行うようにしましょう。

主な法務局の連絡先は次の通りです。

法務局 所在・連絡先
東京法務局 〒102-8225
東京都千代田区九段南1-1-15
電話03-5213-1234
札幌地方法務局 〒060-0808
札幌市北区北8条西2丁目1番1
電話011-709-2311
仙台地方法務局 〒980-8601
仙台市青葉区春日町7-25
電話022-225-5611
横浜地方法務局 〒231-8411
横浜市中区北仲通5丁目57番地
電話045-641-7461
さいたま地方法務局 〒330-8531
さいたま市浦和区高砂3丁目16番58号
電話048-863-2211
千葉地方法務局 〒260-8518
千葉市中央区中央港1丁目11番3号
電話043-302-1312
水戸地方法務局 〒310-0061
水戸市北見町1-1
電話029-227-9911
宇都宮地方法務局 〒320-8515
宇都宮市小幡2-1-11
電話028-623-6333
前橋地方法務局 〒371-8535
前橋市大手町2丁目10-5
電話027-221-4466
静岡地方法務局 〒420-8650
静岡市葵区追手町9-50
電話054-254-3555
甲府地方法務局 〒400-8520
甲府市北口1丁目2番19号
電話055-252-7151
長野地方法務局 〒380-0846
長野市旭町1108番地
電話026-235-6611
新潟地方法務局 〒951-8504
新潟市中央区西大畑町5191番地
電話025-222-1561
名古屋地方法務局 〒460-8513
名古屋市中区三の丸2-2-1
電話052-952-8111
津地方法務局 〒514-8503
津市丸之内26-8
電話059-228-4372
岐阜地方法務局 〒500-8729
岐阜市金竜町5丁目13番地
電話058-245-3181
福井地方法務局 〒910-8504
福井市春山1丁目1番54号
電話0776-22-5090
金沢地方法務局 〒921-8505
石川県金沢市新神田4丁目3番10号
電話076-292-7810
富山地方法務局 〒930-0856
富山市牛島新町11番7号
電話076-441-0599
京都地方法務局 〒602-8577
京都市上京区荒神口通河原町東入上生洲町197
電話075-231-0131
神戸地方法務局 〒650-0042
神戸市中央区波止場町1番1号
電話078-392-1821
奈良地方法務局 〒630-8301
奈良市高畑町552
電話0742-23-5534
大津地方法務局 〒520-8516
滋賀県大津市京町3丁目1番1号
電話077-522-4671
和歌山地方法務局 〒640-8552
和歌山市二番丁2番地
電話073-422-5131
広島地方法務局 〒730-8536
広島市中区上八丁堀6-30
電話082-228-5201
山口地方法務局 〒753-8577
山口市中河原町6-16
電話083-922-2295
岡山地方法務局 〒700-8616
岡山市南方1丁目3-58
電話086-224-5728
鳥取地方法務局 〒680‐0011
鳥取市東町2丁目302番地
電話0857-22-2191
松江地方法務局 〒690-0886
島根県松江市母衣町50番地
電話0852-32-4200
高松地方法務局 〒760-8508
高松市丸の内1番1号
電話087-821-6191
徳島地方法務局 〒770-8512
徳島市徳島町城内6-6
電話088-622-4171
高知地方法務局 〒780-8509
高知市小津町4番30号
電話088-822-3331
松山地方法務局 〒790-8505
松山市宮田町188番地6
電話089-932-0888
福岡地方法務局 〒810-8513
福岡市中央区舞鶴3-9-15
電話092-721-4570
佐賀地方法務局 〒840-0041
佐賀市城内2丁目10番20号
電話0952-26-2148
長崎地方法務局 〒850-8507
長崎市万才町8番16号
電話095-826-8127
大分地方法務局 〒870-0045
大分市城崎町二丁目3番21号
電話097-532-3161
熊本地方法務局 〒862-0971
熊本市大江3丁目1-53
電話096-364-2145
鹿児島地方法務局 〒890-8518
鹿児島市鴨池新町1番2号
電話099-259-0680
宮崎地方法務局 〒880-8513
宮崎市旭2丁目1番18号
電話0985-22-5124
那覇地方法務局 〒900-8544
那覇市樋川1-15-15
電話098-854-7950

【北海道の法務局】

札幌管内 法務局 所在・連絡先
函館地方法務局 〒040-8533

函館市新川町25-18 函館地方合同庁舎

(0138)23-7511
旭川地方法務局  〒078-8502

旭川市宮前1条3-3-15 旭川合同庁舎

(0166)38-1111
釧路地方法務局 〒085-8522

釧路市幸町10-3

(0154)31-5000

金融機関から受け取る書類があるか確認する

住宅ローンの返済が終了したら、金融機関より抵当権の抹消登記に必要な次の4つの書類が届きます。

必要書類一覧 書類内容
弁済証書 住宅ローンが完済されたことを証明する書類
登記済証または登記識別情報 抵当権の設定時に法務局から発行される書類
登記事項証明書 法務局の登記簿に登記されている情報の内容を証明する書類(※発行から3ヶ月以内のものが必要)
登記委任状 住宅ローンを組んだ金融機関が抵当権抹消に関する登記を委任するための書類

これら全ての書類が揃っているかどうかを確認しましょう。

もし見当たらない場合は、後述の「自分で抵当権を抹消するときのよくある疑問/必要な書類を紛失したらどうする?」の記載内容を参考にしながら再発行の手続きを進めてください。

登記申請書を作成する

それでは、抵当権抹消登記申請書の作成手順を詳しく見ていきましょう。項目ごとに表にまとめて解説していくので、丁寧にチェックしてください。

先述の「自分で抵当権抹消を行う手順/登記申請書を入手する」で紹介した、法務局のサイト内の記載例と照らし合わせながら行うのがおすすめです。

【抵当権抹消登記申請書の作成手順】

記入項目 記載内容
登記の目的 抵当権抹消登記」と記載する
原因 完済した日付を記入する。完済日の確認後「平成○○年○月○日 弁済」と記載
抹消すべき登記 登記した日付と番号を記入する。抵当権設定契約証書に書かれている日付と番号の確認後「平成○○年○月○日受付第○○号」と記載
権利者 自身の情報を記入する。所有する不動産に共有持分者がいる場合は共有持分者の名前も記載
義務者 ローンを貸した金融機関の代表者の情報を記入する。代表者名のほか金融機関の本店がある住所と金融機関名も必要
添付書類 抵当権抹消登記に添付する書類の一覧を記入する
申請日の情報 対象の不動産を管轄する法務局にあてた申請日を記入する。管轄法務局の確認後「平成○○年○月○日 ○○法務局(管轄法務局名) 御中」などと記載
申請人兼義務者代理人 金融機関から発行された委任状に記載した申請人の情報を記入する。一般的には自身の情報を記載
登録免許税 登録免許税として支払う金額を記載する
不動産の表示 登記する不動産の情報を記載する。この箇所は「別紙記載のとおり」として「不動産の表示」とタイトルをつけた別紙に不動産情報をまとめることも可能

”参考:法務局「抵当権抹消登記申請書の記入例」”

作成した書類を法務局へ提出する

登記申請書を完成させ提出書類が揃ったら、法務局に提出しましょう。提出方法は郵送するか窓口に直接提出するかの2択から選べますが、窓口への提出なら担当がチェックをしてくれるので不備をなくしやすいです。

書類作成や書類準備に対して不安を感じる人は、できる限り直接窓口に出向くようにしてください。また、書類には印鑑を捺印しなければならない箇所があるので、窓口に申請しに行く場合は印鑑を忘れないように持っていきましょう。そうすれば印鑑の押し忘れのミスを防げます。

通常の申請ならば印鑑は認印で問題ありません。なお、書類を提出する際には補正日も窓口で確認しておいてください。補正日とは、「申請に不備がないかどうかをこの日までに確認する」という日づけです。

提出した申請書に万が一不備があった場合には、こちらの補正日以降に法務局より「書類の作成に使用した印鑑をもって補正に来てほしい」との連絡が入ります。

申請手続き完了

書類を提出した後、法務局で書類の審査が行われます。法務局より何の連絡もなく、提出書類に問題がなさそうなら、補正日以降に「登録完了証」という書類を受け取りに行きましょう

この受け取りの際には、申請書作成時に使用した印鑑が必要となるので必ず持参してください。登録完了証を受け取れば、抵当権抹消登記の手続きは完了です。

なお、審査に要する日数は法務局によりまちまちですが、一般的には1週間~10日ほどを目安にしておくとよいでしょう。登記を申請した日に登記が完了することは、まずほとんどありません。

申請処理が終わったら一部書類を返却してもらう

ローン完済後に金融機関から送られてきた書類や抵当権抹消登記のために入手した書類の中には、申請したあと金融機関に返却しなければならない書類があります

そのため法務局に提出する際には、返却する必要がある書類にコピーをつけて提出するようにしてください。そうすれば、申請が受理された後に原本を返却してもらえます。

受け取った書類は、金融機関より送付された書類と一緒に専用の返却用封筒を同封されているはずなので、そちらを利用して金融機関に送り返しましょう。

抵当権抹消で追加の書類が必要な4つのケース

抵当権抹消登記の手続きにおいて、追加の書類が必要になる場合があります。

抵当権を設定したときから抹消登記をするまでの間に、自分の身の回りや金融機関の内部に変化があるのであれば、何かしらの書類を付け加えなければならないのです。

この章では大きく4つのケースを取り上げて解説していくので内容をしっかりとチェックし、書類提出の際に不備のないようにしましょう。

抵当権設定時から住所や名前の変更がある場合

抵当権が発生した時点から現在までの間に、不動産の名義人の名前や住所が変わっている場合には、住民票や戸籍謄本が必要になります。

なお、住民票が「市町村が住民について、住んでいることを証明するもの」であるのに対し、戸籍謄本は「身分事項(人の出生・死亡・婚姻・離婚・縁組などの重要な身分関係)を証明するもの」です。

そのため、住民票は現在居住している市もしくは区の役所に行けば入手できるのですが、戸籍謄本に関しては本籍地の役所に本人が出向いたり、郵送で請求したりする手間を要します。

ローンを組んだ金融機関の合併や移動があった場合

抵当権抹消登記を行う際、金融機関より受け取る「登記委任状」をはじめとするいくつかの必要書類には、その書類を作成している時点での情報が記されています。

しかし時間の経過とともに、金融機関の合併や移動があったりなどして経営体制が変更された場合は大変です。抵当権抹消登記の必要書類を金融機関より、もう一度もらい直さなければいけません。

さらには、書類作成時から現在に至るまでの変更履歴を、全て書面で証明する必要がでてきます。そのため商号や本店が変わった場合は、変更の経緯が分かる登記簿謄本を添付するようにしましょう。また合併の場合には、抵当権抹消登記の前提として金融機関の移転登記やその他の変更登記が必要になる可能性も高いです。

その移転登記や変更登記にかかる費用は、一般的に自己負担となります。こちらのケースと、ローン完済直後に抵当権抹消登記を行った場合の費用と比較すると、およそ2倍もの差額が生じます。

ローンを組んだ金融機関の代表者が替わった場合

この場合も先述の「ローンを組んだ金融機関の合併や移動があった場合」と同様、抵当権抹消に関する必要書類を金融機関より再度送ってもらわなければなりません

さらに、金融機関の代表者が変わったことを証明するための登記事項証明書や、過去の情報を調べるための閉鎖登記簿などの取得が必要になるケースもあります。

住所変更登記をしていなかった場合

住所に変更があったにも関わらず長期間放置していたため、住民票の除票(※1)などの取得が不可能になった場合には、法務局に上申書(※2)を提出しなければならない状況にもなり得ます。

その際、通常の抵当権抹消登記では不要な「実印」が必要になることがあります。そして、捺印した印鑑が実印だと証明するために、発行後3ヶ月以内の印鑑証明書までもが必要になってしまうのです。このように要らない手間と費用がかかるので、住所変更をしたときには早めに住所変更登記をしておきましょう。

(※1)住民票の除票:転出や死亡などにより、住民基本台帳から除かれた住民票のことをいいます。

(※2)上申書:上部機関や自分よりも役職的に上の人に意見を伝えるために使用される書類です。裁判所や警察、会社宛てなどあらゆるシチュエーションで用いられています。

遺産の抵当権抹消は相続手続きから

売却したい不動産が相続した遺産の場合の抵当権抹消は、抹消登記をはじめる前に「相続手続き」を完了しておかなければなりません。

相続手続きの流れは、次の3ステップです。

  1. 遺産を確認して分割の協議
  2. 相続する不動産の名義変更
  3. 相続税の支払い

中でも、遺族が揃って行う分割協議には時間を要することが多いです。早く抵当権を抹消するためには、協議を先延ばしにせずできる限り早めに終わらせるようにする心がけが必要となります。

遺産を確認して分割の協議

まずは、相続人の確定をしてください。具体的には、亡くなった人(被相続人)が誕生してから死亡するまでの戸籍謄本を入手し、財産を相続する権利をもっているのは誰なのかを確認します。

次に、被相続人が遺言書を残しているかどうかを調べましょう。自筆で書かれた遺言書が見つかった場合は、その場で開封してはいけません。必ず、家庭裁判所に持って行って検認してもらってください。

遺言書の有無の確認と同時進行で、どのような遺産が残されているかの確認を行います。この際には、プラスとマイナスの財産を全て調べることが必要です。

1つでも見落としがあると、後から遺産分割のやり直しをしなければならず面倒なことになるので注意して調査しましょう。相続人の確定や遺言書の確認が終了したら、相続に関わる全ての人に連絡をとってください。

その後の過程は、遺言書があるかないかで変わってきます。遺言書があれば、それに基づき遺産の分割を行うだけで済むのですが、遺言書がなかったり遺言書に記載されていない財産があったりする場合は、相続人が遺産分割の協議を行う流れとなります。

そして、協議の結論がでて全ての相続人が合意したら「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員に署名・押印を求めましょう。そこではじめて、遺産分割の実行がスタートします。

相続する不動産の名義変更

相続する不動産の名義変更は、遺産分割協議が終了した後に行うことが可能です。法務局に出向いて土地と建物の「所有権移転登記」を行ってください

こちらの登記により、不動産の名義が被相続人から法定相続人など、相続した配偶者や子どもなどに変更されます。なお、相続登記(名義変更などの所有権移転登記)を行う際は、次の書類が必要です。

【法定相続人が1名、あるいは法定相続分で相続をする場合】

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 法定相続人の戸籍謄本
  • 法定相続人の住民票
  • 相続する不動産の固定資産税評価証明書

【遺産分割協議で決めた割合で相続する場合】

上記の書類のほかに次の2点の書類が必要です。

  • 法定相続人の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書

これらの書類は法務局や市町村役場をはじめ、複数の機関より取り寄せなければいけないので、できるだけ早めに準備しておきましょう。

相続税の支払い

相続税には、遺産の総額や相続人の人数などにより相続税がかからない範囲の金額があります。このことを相続税の「基礎控除」と呼びます。

そして基礎控除は、法定相続人の人数により変わります。基礎控除を出す計算式は次の通りです。

3,000万円 +(法定相続人の数×600万円)= 基礎控除

相続人が妻と子ども2人のケースで考えてみましょう。すると「3,000万円 +(3人×600万円)= 4,800万円」が相続税の基礎控除額となります。

このように、法定相続人の人数が増えれば増えるほど、基礎控除額は大きくなるのです。そして相続税の納税義務は、各法定相続人の相続総額が基礎控除額を超過する場合に発生します。なお相続税額は、各相続人が実際に手に入れた財産に直接税率をかけて算出するわけではありません。

実質的な遺産額より基礎控除額を引いた残額を、民法が定めた基準となる相続分(法定相続分)に比例した割合で割り振った額に税率を乗じます。

実際の計算では、法定相続分により比例配分した法定相続分に応じた取得額を下の表にあてはめて計算します。

相続税の速算表(平成27年1月1日以後の場合)】

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

こちらの速算表で算出した各法定相続人の税額を全て合わせたものが、総相続税額となります。

ちなみに、次の記事には不動産売却の相続税についての詳細が記載されています。非常に参考になるので一度チェックしてみてください。

不動産の相続には税金がかかる?税金額の計算方法から控除まで解説!
故人が不動産を所有したまま亡くなった場合には、その不動産に対して相続税がかかります。しかし、多くの方が不動産の相続税の計算方法がわからずに困っていることでしょう。この記事では、相続税が発生する場合と、どのように計算すればいいのか解説します。

自分で抵当権抹消をするときのよくある疑問

自分で抵当権抹消をするときには、着手する前や手続きの最中に色々な疑問が生まれるはずです。そこで、専門家に頼らず自分で抵当権を抹消する際によくある疑問をQ&A形式でまとめました。

今回は大きく3点の疑問を紹介していくので、抵当権抹消を行う際の参考にしてください。

必要な書類を紛失したらどうする?

「自分で抵当権抹消を行う手順/金融機関から受け取る書類があるか確認する」でも記載しましたが、抵当権抹消の登記を自分で行う際に必要な書類は次の4点になります。

  • 弁済証書
  • 登記済証または登記識別情報
  • 登記事項証明書
  • 金融機関の登記委任状

上記のうち、金融機関から受け取った書類である「弁済証書」や「金融機関の登記委任状」は、金融機関の担当者にお願いすれば再度発行してもらうことが可能です。しかし、「登記済証」や「登記識別情報」「登記事項証明書」などの権利書に関しては再発行することができません

こちらの書類をなくした場合に手続きをするためには、登記申請の代理人となる司法書士など有資格者が金融機関に対しての本人確認情報を作成し、登記申請を行う必要があります。

もしくは、登記を申請した後、法務局より金融機関に対して通知がなされる「事前通知制度(※)」を活用して登記申請をするのも1つの手段です。事前通知制度とは、登記官が登記義務者の真実性をチェックする制度です。通知から一定期間内に申し出をしなければ、申請された登記は処理されません。

ただしこれらの本人確認情報の作成には費用がかかり、事前通知制度を利用する際には時間を要する点をあらかじめ認識しておきましょう。

前述で解説した書類と合わせ、金融機関の会社法人等番号の確認も必要です。

なお、書面での法人番号の提示が必要な場合は、国税庁/法人番号公表サイト内の法人情報の画面を印刷したものを使用してください。)

オンラインで抵当権抹消は可能なのか?

登記・供託オンライン申請システム」を使えば、オンラインでの抵当権抹消を行うことが可能です。登記・供託オンラインシステムは平成23年4月より開始されたサービスで、法務局のオンライン申請システムとは別のシステムとして運用されています。

こちらのサービスを利用すれば、法務局の登記部門などの窓口に出向く必要はありません。ネット環境さえあれば、申請や請求を行ったり電子公文書を取得したりできるのです。

電子公文書とは、紙面を原本として受領するのではなく、パソコンで作成した電子ファイルを原本として保存・移管される文書のことを指します。

ただし、作成した書類や弁済証書などの必要書類は残念ながら電子化できないので、郵送で送付するか窓口に出向くかして提出しましょう

これまで多くの公文書は紙に印刷したものを原本として保存されていましたが、今後は一貫して電子的に管理する方針が示されています。

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根抵当権抹消だと何が違うのか?

不動産を担保にした融資では、債務者が借入れ金を返済できなくなった場合に備えて「抵当権」を設定します。この抵当権の中でも、極度額(※1)が定められており、極度額の範囲内であれば何度でも借入れと返済を繰り返すことが可能なのが「根抵当権」です。

根抵当権を利用すると1つ目の借入れ残債がありながらも次の融資を受けられ、返済期間も未設定となります。そのため、抵当権なら借入れた融資を完済して金融機関が同意すれば抹消の手続きを行えるのに対し、根抵当権は1つの借入れ融資を完済した後でも権利が消滅することはありません。

そして根抵当権の抹消を望む場合には、債権者との交渉や元本確定(※2)を行う必要があります。根抵当権は、借入れの度に設定しなければならない抵当権と比べ、初回一度の設定で済むため登記の手間と費用を節約することが可能です。

債務者にとっては融資の実行にまつわる手続きを簡略化できるので、不動産を所有する企業や経営者が融資を反復利用することを目的として権利を獲得するケースが多く見られます。このように、「抵当権」と「根抵当権」はいずれも「不動産を担保にする」ことに変わりはないものの、融資に関わる規定や抹消手続きの方法が全く異なるのです。

(※1)極度額:根抵当権により担保できる債権の合計額の限度です。

(※2)元本確定:極度額の範囲内で借入れを繰り返していたものを中止した時点で、借入金額を確定させることです。

まとめ

これまで見てきたように、抵当権の抹消は手順に沿って行っていけば自分で簡単に終了できる手続きです。できるだけ費用をかけずにマイホームを売却したい場合には、自分で抵当権抹消をして売却費用の節約を図ることができます。

また、売却予定の物件が遺産であるなら、まずは相続の手続きを行う必要があります。遺産分割の協議をした後、相続する不動産の名義を変更し相続税を納付してから申請を行うようにしてください。

その他に、抵当権の設定時から住所や名前に変更があったり、ローンを組んだ金融機関の合併や移動があるなどした場合は、手続きに必要な書類が追加されるので見落としのないよう注意し、適切な手順を踏んで円滑に抵当権抹消の手続きを進めましょう。

※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
https://www.land.mlit.go.jp/webland/
https://www.rosenka.nta.go.jp/
https://www.retpc.jp/chosa/reins/
https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021-fudousan-anke-to.pdf


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