医療レーザー脱毛を検討している方の中には、「ヤグレーザー」という言葉を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか?しかし、ヤグレーザーがどのような特徴を持ち、アレキサンドライトレーザーやダイオードレーザーとはどのような違いがあるのか、よく分からないという方もいるかもしれません。
本記事では、医療レーザー脱毛で主に使用される3種類のレーザーの特徴と、ヤグレーザーのメリット・デメリットやおすすめの人などをまとめてご紹介します。
1 医療レーザー脱毛の仕組み
医療レーザー脱毛は、メラニン色素に反応するレーザーを照射し、毛の成長に関わる組織(主に毛乳頭・毛母細胞、またはバルジ領域)に熱ダメージを与えて破壊することで、長期的な脱毛効果を得る仕組みです。
エステ・サロンで行われる光脱毛(フラッシュ脱毛)との大きな違いは、発毛組織にダメージを与えるだけでなく、破壊できる点にあります。発毛組織を破壊することは医療行為にあたるため、医療機関以外では行うことはできません。
照射方法は2種類ある
医療レーザー脱毛には主に2つの照射方法があり、それぞれアプローチする部位と熱の与え方が異なります。
熱破壊式(HR)
熱破壊式は毛乳頭・毛母細胞を主なターゲットとし、高出力のレーザーを1発照射する方法です。ヒゲやワキ、VIOなどの濃くて太い毛に対して高い効果が期待でき、即効性があります。ただし、毛穴の奥にレーザーを届かせるため高出力となり、施術時の痛みが強いです。
蓄熱式(SHR)
一方、蓄熱式はバルジ領域(※)をターゲットとし、低出力のレーザーを連続照射する方法です。メラニン色素の量に左右されないため、濃い毛だけでなく産毛に対しても効果が出やすいとされています。
バルジ領域は比較的浅い場所に位置しているので、低出力でもダメージを与えることができ、施術時の痛みは比較的少ないです。ただし、脱毛効果を実感できるまでに2週間~1ヶ月程度かかります。
※バルジ領域…発毛の指令を出している組織
蓄熱式は脱毛効果がない?
蓄熱式の照射方法は、熱破壊式と比べて「脱毛効果がない」と言われることがありますが、これは効果を実感できるまでに要する時間に差があることが関係していると考えられます。
熱破壊式は毛乳頭や毛母細胞にダメージを与えて破壊するため、早い場合は施術の翌日~数日以内に毛が抜け始めることもあり、効果を実感しやすいです。
一方、蓄熱式はバルジ領域にじわじわとダメージを与える仕組みなので即効性はありません。自然に毛が抜け落ちるまでにだいたい2週間~1ヶ月程度かかる傾向にあり、本当に効いているのかすぐには分からないことから、「効果がない」と誤解されるケースが多いのです。
この2つの照射方法は、ダメージを与える部位やメカニズムが異なることにより、効果を実感できる(毛が抜ける)までの日数に差があるものの、どちらの照射方法でも最終的に得られる脱毛効果は同じだとされています。そのため、自分の毛質や肌の状態、痛みへの耐性などを加味して選ぶようにしましょう。
ただし、それぞれ得意な毛質や肌質が異なることから、熱破壊式と蓄熱式どちらか一方ではなく両方を使い分けられる環境が整っているクリニックで施術を受けると、より効果的な脱毛が期待できると言われることもあります。クリニックによって導入している脱毛機器は異なるので、自分の希望に沿った施術を受けられるかどうか事前に相談することが大切です。
2 医療レーザー脱毛で使用されるレーザーについて
医療レーザー脱毛では主に「アレキサンドライトレーザー」、「ダイオードレーザー」、「ヤグレーザー」の3種類が使用されています。これらのレーザーはそれぞれ異なる特徴を持ち、得意とする毛質や痛みの強さなどの違いがあります。
アレキサンドライトレーザー
アレキサンドライトレーザーは、アレキサンドライト結晶を用いたレーザーで、 脱毛だけでなく、シミやそばかす、青あざなどの治療にも使われています。医療レーザー脱毛で使用される3種類のレーザーの中では最も波長が短い(755nm)です。
波長が短いとメラニン色素に強く反応するので、特に太くて濃い毛に高い効果を発揮します。 そのため、色白で毛が目立ちやすい日本人の肌と相性が良いです。また、シミやくすみの改善、肌のトーンアップ、毛穴の引き締めといった副次的な効果も期待できると言われています。
ただし、メラニン色素に反応しやすいという特性上、日焼けした肌や色黒の肌、色素沈着のある部分への照射は難しいケースがほとんどです。また、メラニン色素が少ない産毛に対しては基本的にはあまり効果が見られないとされています。さらに、波長が短いためレーザーが肌の深部には十分に届かず、毛根が深い毛の脱毛には向いていません。
ダイオードレーザー
ダイオードレーザーは、半導体を利用して発振するレーザーです。脱毛のほか、美容皮膚科の治療にも用いられています。医療レーザー脱毛で使用される3種類のレーザーの中では、中間の波長(800~940nm)を持ち、産毛から濃い毛まで幅広い毛質に対応できるバランスの良さが特徴です。
アレキサンドライトレーザーと比べてメラニン色素への吸収率が低いため、火傷のリスクが抑えられ、軽い日焼けや色黒の肌にも照射することができるとされています。また、比較的痛みが少ないところもメリットの1つです。
大きなデメリットはないとされていますが、アレキサンドライトレーザーやヤグレーザーと比べると効果を実感できるまでに時間がかかることもあり、部位によって照射するレーザーを使い分けるのがおすすめとされています。
ヤグレーザー
ヤグレーザーの「ヤグ」は、イットリウム(Yttrium)、アルミニウム(Aluminum)、ガーネット(Garnet)の頭文字を取ったものです。YAG結晶に微量のネオジム(Nd)を加え、強い励起光を照射することでレーザーが発生します。
医療レーザー脱毛で使用されるレーザーの中で最も波長が長く(1064nm)、皮膚の深い部分にまで届くのが特徴です。そのため、根深い毛にアプローチしやすく、特にヒゲやワキ、VIOなどの濃くて太い毛に高い効果を発揮します。
また、波長が長いことから肌表面のメラニン色素への吸収率が低く、肌色に左右されずに照射が可能です。
なお、ヤグレーザーは1度に照射できる範囲が狭いため、広範囲の施術には時間がかかる可能性があります。そのため、ヒゲ、ワキ、VIOなどの狭い範囲の施術に使用されるケースが多いです。
3 医療レーザー脱毛で使用される脱毛機器について
医療レーザー脱毛に使用される脱毛機器は、搭載しているレーザーの種類と照射方法の組み合わせがさまざまです。これらの組み合わせによって得意な毛質・肌質や痛みの感じ方が異なります。1種類のレーザーしか使用できないものもあれば、脱毛機器によってはレーザーを切り替えて照射できたり、複数のレーザーを同時に照射できるタイプもあります。ここでは、代表的な脱毛機器をレーザーの種類ごとに紹介します。
アレキサンドライトレーザーを搭載している代表的な脱毛機器
ジェントルレーズプロ(熱破壊式)
ジェントルマックスプロ(熱破壊式、ヤグレーザーとの切り替え可)
ジェントルマックスプロプラス(熱破壊式、ヤグレーザーとの切り替え可)
エリートプラス(熱破壊式、ヤグレーザーとの切り替え可)
クラリティツイン(熱破壊式、ヤグレーザーとの切り替え可)
サンダーMT(熱破壊式、ヤグレーザーとの切り替え可)
スプレンダーX(熱破壊式、ヤグレーザーと同時照射)
ダイオードレーザーを搭載している代表的な脱毛機器
メディオスターNeXT PRO(熱破壊式に切り替え可)
メディオスターモノリス(熱破壊式に切り替え可)
ラシャ(熱破壊式に切り替え可)
クリスタルプロ(熱破壊式に切り替え可)
ソプラノアイスプラチナム(熱破壊式に切り替え可、3種類のレーザー同時照射)
ソプラノチタニウム(熱破壊式に切り替え可、3種類のレーザー同時照射)
ライトシェアデュエット(熱破壊式)
ライトシェアクアトロ(熱破壊式)
ヤグレーザーを搭載している代表的な脱毛機器
ジェントルヤグプロ(熱破壊式)
ジェントルマックスプロ(熱破壊式、アレキサンドライトレーザーとの切り替え可)
エリートプラス(熱破壊式、アレキサンドライトレーザーとの切り替え可)
クラリティツイン(熱破壊式、アレキサンドライトレーザーとの切り替え可)
サンダーMT(熱破壊式、アレキサンドライトレーザーとの切り替え可)
スプレンダーX(熱破壊式、アレキサンドライトレーザーとの切り替え可)
4 ヤグレーザーのメリット・デメリットは?
医療レーザー脱毛で主に使用されている3種類のレーザーの特徴と代表的な脱毛機器について簡単にご紹介しました。ここからはヤグレーザーに焦点を当てて、ヤグレーザーのメリット・デメリットやどんな人におすすめなのかを詳しくご紹介します。
ヤグレーザーのメリット
ヤグレーザーは、表皮のメラニン色素の影響を受けにくいため、日焼けした肌や色黒の肌にも照射が可能という点が大きなメリットです。
また、波長が長いため肌の奥深くまでレーザーが届き、毛根が深い毛に適しています。特にヒゲやワキ、VIOなどの濃く根深い毛に対して高い効果が期待できるでしょう。加えて、真皮層まで熱エネルギーが届くことでコラーゲンの生成を促進し、肌のハリやキメを整える美肌効果が期待できるとも言われています。
ヤグレーザーのデメリット
一方、ヤグレーザーのデメリットとして最たるものは、他のレーザーと比べて痛みが強いことです。これは、肌の深部まで熱エネルギーを伝えることができることが関係しており、濃い毛が密集している部位では特に強い痛みを感じやすくなります。そのため、人によっては施術を続けるのが難しくなってしまうこともあります。
ただし、冷却機能が備わっている脱毛機器を導入していたり、麻酔を使用して施術を受けられるなど、少しでも痛みを和らげることができるような取り組みを行っているクリニックは多いです。ヤグレーザーでの施術を検討する場合には、導入している脱毛機器について調べたり、事前にテスト照射を受けて痛みの程度を確認したり、麻酔の使用が可能かクリニックに相談するとよいでしょう。
なお、照射時の痛みはずっと続くわけではなく、施術を重ねて毛が細くなり毛量が減ることで和らいでいくのが一般的です。
ヤグレーザーでの脱毛は何回で完了する?
脱毛を完了とする基準は自分が希望する仕上がりによっても異なりますが、一般的には自己処理がほぼ必要なくなる状態を指します。ヤグレーザーを使用した脱毛では、5回程度施術を受けることで目に見えた効果を実感することができるとされ、だいたい10回程度で満足する人が多いようです。ただし、毛の濃さや部位によっても、脱毛の進み具合は変わります。そのため、ヤグレーザーでの施術に限らず、何回受ければ脱毛が完了すると言い切ることはできません。
ヤグレーザーがおすすめの人
医療レーザー脱毛では特徴が異なる3種類のレーザーが主に使用されているため、十分な脱毛効果を得るためには脱毛したい部位や自分の毛質、肌の状態、痛みの感じ方などを考慮して最適なレーザーを選ぶことが大切です。
ヤグレーザーは波長が長いため肌の奥深くまでレーザーが届きやすく、特に毛根が深い毛に対して高い効果が期待できます。そのため、ヒゲやワキ、VIOなどの濃く根深い毛の脱毛を希望する人におすすめです。
また、波長が長いことでメラニンへの吸収率が低いため、日焼けした肌や色黒の肌、色素沈着がある部分にも対応しやすいレーザーとなっています。肌の色や状態を理由に他のレーザーでは施術を受けられなかった人でも、ヤグレーザーであれば施術を受けられるかもしれません。
さらに、光脱毛や医療レーザー脱毛では、まれに硬毛化と呼ばれる現象が起こることがありますが、ヤグレーザーは硬毛化のリスクが比較的低く、万が一硬毛化した場合にも再度照射することで改善が期待できるとされています。そのため、脱毛後に硬毛化してしまった毛の対策を考えている人にもおすすめです。
5 硬毛化とは?
硬毛化(こうもうか)とは、光脱毛や医療レーザー脱毛の施術後に、本来は脱毛により目立たなくなるはずの毛が、太く硬くなったり、濃く見えたりする現象のことを指します。硬毛化自体は毛の量が増えるわけではありません。
硬毛化の明確な原因は分かっていませんが、主に以下のような要因が関係しているのではないかと考えられています。
原因①照射時のエネルギー不足
現時点で硬毛化の原因として有力視されている説の1つが、「照射時のエネルギー不足」です。照射されたレーザーのエネルギーが十分でない場合、発毛組織が完全に破壊されず、中途半端に刺激を受けた毛が修復しようと活性化し、結果として太く硬い毛が生えてしまうのではないかと考えられています。
原因②毛の性質による影響
産毛のような薄い毛はメラニン色素の量が少ないため、レーザーが十分に反応せず、発毛組織を破壊するほどのエネルギーが伝わりにくいことがあります。このため、照射後の回復過程でかえって硬毛化が起こる可能性があるという説もあります。
原因③毛周期の変動によるもの
レーザーの照射による熱刺激が毛周期に影響を与え、成長サイクルが乱れることで、毛の成長が促進され、太くて硬い毛が生えやすくなるのではないかという説もあります。
硬毛化が起こりやすい部位
硬毛化は、もともと太く濃い毛よりも、顔、背中、二の腕、うなじなどの産毛が多い部位や色素が薄い毛で起こりやすいようです。ただし、すべての部位で発生する可能性があり、その発生率は1~10%程度といわれています。
10~30代の比較的若い世代で起こりやすい傾向があるものの、年齢に関係なく誰にでも発生する可能性があります。現時点では、硬毛化を完全に防ぐ方法は確立されていません。
硬毛化が起きた場合の対処法
硬毛化してしまった場合、まずはしばらく様子を見て、自然に改善するのを待つ方法があります。その他の対処法としては、レーザーの出力を上げる、異なる波長のレーザーに変更して再度照射を行う、熱破壊式から蓄熱式の照射方法に変えてみるなどの方法が一般的です。
硬毛化が疑われる場合は、自己判断で剃ったり処理したりせず、まずは施術を受けたクリニックに相談しましょう。クリニックによっては、硬毛化に対する追加施術を保証している場合もあるため、事前に保証内容を確認しておくと安心です。
6 自分に合ったレーザーを選ぼう
医療レーザー脱毛にはいくつかの種類があり、それぞれ得意な毛質や肌質が異なります。その中でもヤグレーザーは、ヒゲやVIOなどの濃く根深い毛に高い効果を発揮し、色黒の肌や日焼けした肌にも照射しやすいのが大きな特徴です。一方、他のレーザーと比べて痛みを感じやすいというデメリットもあります。不安がある場合は、痛みを感じにくい脱毛機器が導入されているかどうかや麻酔を使用して施術を受けられるかどうかなどを事前に確認しておくとよいでしょう。
スムーズに脱毛を進めるには、レーザーの種類ごとのメリット・デメリットを理解し、自分の毛質や肌質に適したものを選ぶことが大切です。ヤグレーザーは、比較的導入しているクリニックが少ないと言われているため、事前に対応クリニックをしっかりと調べ、自分に合った施術を受けられるよう準備を進めましょう。
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