「新しい仕事のプロジェクトのために、予備知識を頭に入れておかないといけない」「転職のために、新たなスキルを身に着けたい」「会社の上司に資格を取れと言われた」など、必要な知識をインプットする目的は様々ですが、仕事や家族の世話などで手いっぱいのときは、なかなかまとまった時間が取れないのも事実。

そんなとき、通勤中や、病院の待ち時間などの空いた時間に効率よくインプットができたら嬉しいですよね。

そこで今回は、限られた時間で効率的にインプットするための工夫について、2024年6月に刊行された『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』(著・星友啓/あさ出版)から抜粋編集してご紹介します。

■省エネで情報を覚えるにはインプット前の習慣が肝心

やはり何事も準備が大切です。

特に「読むインプット」では、全体の文章を読む前に勝負が決まってしまうと言っても過言ではありません。

「読むインプット」を始めるにあたって、まずすべきことは、自分が何のためにインプットしようとしているのかを明確に意識すること、つまり【目的設定】です。

少し意外かもしれませんが、同じ情報をインプットする場合でも、その目的によって、効果的なインプットの方法が変わってきます。

例えば、政府の増税案についてのニュース記事があったとします。その日のメインニュースで、内容盛りだくさんです。

その記事を読むときに、「増税案の大筋をざっくり理解する」のが目的なのか、「増税案を批判するために材料を集めている」のかでは、その記事の読み方が変わってくるでしょう。

「大筋ざっくり」ならば、政府案のまとめを書いてある部分を重点的に読み、後の記事はサッと目を通すだけでいいのに対し、「批判」が目的ならば、政府案の詳細やその背景にある理由などを細かく読み込む必要があります。

インプットの目的によって、重点的に読むべき部分やかけるべき時間が大幅に変わってくるわけです。

■内容を読み始める前にインプットする目的を意識

そのため、「読むインプット」をする前に、インプットをする目的について改めて意識しましょう。その上で、どのようなインプットをするべきかをイメージすることが大切です。

次のような点について考えてみましょう。

・読みとるべき内容は何か
・どれほどの精度で読み込むべきか
・インプットした情報を何に使いたいのか

読み始める前にこうした点を意識するだけでも、目的にフォーカスすることができ、効果的なインプットにつながります。

【目的設定】は、ニュース記事のようなちょっとした「読むインプット」でも重要ですが、分厚い本やいくつもの資料を読み込まなくてはいけないときには、必要不可欠な習慣です。

こなすべき分量が少なければ、サクッと目的を意識して、どのような点を押さえるかくらいをイメージし、分量が多い場合は、事前にしっかりとインプットの戦略を立てるように習慣づけましょう。

星友啓

スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長/哲学博士/EdTechコンサルタント 1977年東京生まれ。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。その後渡米し、Texas A&M大学哲学修士、スタンフォード大学哲学博士課程修了。同大学哲学部講師 として論理学で教鞭をとりながら、スタンフォード・オンラインハイスクールスタートアッププロジェクトに参加。2016年より校長に就任。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて、教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコン サルティングにも取り組む。 著書に『スタンフォード式生き抜く力』(ダイヤモンド社)、『脳科学が明かした!結果が出る最強の勉強法』(光文社)、『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』『脳を活かすスマホ術』(いずれも朝日新聞出版)、『スタンフォード・オンラインハイスクール校長が教える子どもの「考える力を伸ばす」教科書』(大和書房)、『スタンフォードが中高生に教えていること』『「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと』(いずれもSBクリエイティブ)がある。

『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』(星友啓 著/あさ出版 刊)

学んだことを活かしたいと思っても、すぐに忘れてしまったり、身につかなかったり、なかなか実践できないという人のために、スタンフォード大学・オンラインスクール校長が、AI時代の情報社会を生き抜く効果的なインプット方法を、最新の脳科学と心理学に基づいて紹介します。多くの情報を素早くインプットして、なおかつ長期の記憶につなげる「脳が一生忘れないインプット法」を身につけられる一冊です。