定年が視野に入り、退職後の年金がいくらになるか気になる方もいるでしょう。夫婦で厚生年金を受給する場合、最高でいくらもらえるのでしょうか。今回は厚生年金の最高額を受け取れる条件や計算の仕組みについて解説します。

※2024年7月時点での情報を基に計算しております。年金受給額の計算方法は今後見直される可能性もあります。

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夫婦で年金の最高額を受給するには?

会社員の方が受け取れる年金として、老齢厚生年金と老齢基礎年金の2つがあります。夫婦で最高の場合とは、夫・妻ともに会社員としてそれぞれ最高額を受給することです。

厚生年金と基礎年金、それぞれの最高額について見ていきましょう。

老齢基礎年金の最高額は?

老齢基礎年金は、年金の仕組みの「1階」に当たる部分です。加入期間が長いほど年金額は多くなります。令和6年の場合、老齢基礎年金の最高額は81万6,000円です。

ちなみに、会社員の方の場合は「2階」に相当する厚生年金がありますが、自営業者の方などは通常は1階の基礎年金のみです。

基礎年金だけでは老後の生活を支えられないことは明らかなため、自営業者などの方はとくに年金以外の資産を多く用意しておく必要があります。

老齢厚生年金の最高額は?

年金制度の「2F」にあたる老齢厚生年金の受給額について、2003年(平成15年)4月以降の加入期間分の計算式は以下のとおりです。

平均標準報酬額×5.481/1,000×加入月数

計算式からわかるとおり、報酬が高いほど、加入期間が長いほど年金受給額が増える仕組みです。

平均標準報酬額とは、1カ月分の給料を「31万円以上33万円未満」といったように等級分けしたもので、です。具体的には標準報酬月額と標準賞与額の総額を、年金の加入期間で割って求めます

ただし、受給額の計算において、標準報酬月額は65万円、標準賞与額は150万円を年3回が上限です。

また、厚生年金の加入期間を長くするため、中卒で働くと想定して16歳から加入するとします。

よって、老齢厚生年金の最高額を受給するための理論上の条件は以下となります。

  • 6歳から70歳まで厚生年金に加入し、その間は常に63万5,000円以上の月額報酬を得る
  • 賞与を毎年3回、1回あたり150万円以上を受け取る

この条件での年収は1,230万円以上で、平均標準報酬額は102万5,000円です。

よって老齢厚生年金の最高額は下記のとおりです。

102万5,000円×5.481/1,000×648カ月=364万480円

理論上の夫婦の最高受給額は?

老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせると、445万6,480円が最高額という結果になりました。

夫婦ともに最高額を受給すると、年間で891万2,960円、1カ月あたりにすると約74万円です。

ただし、計算される受給額は額面上のもので、実際にはここから住民税や健康保険料などが天引きされます。

住む地域などによって異なりますが、天引きされる金額は10~15%程度が目安となります。

夫婦で最高額を受給している人はどのくらいいる?

年間で891万2,960円という計算結果になりましたが、あくまで理論上の話です。

厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、個人で月額30万円以上を受給している方は、1,599万6,701人のうち12,496人、そのうち女性は326人のみです。

よって、夫婦ともに最高額を受給しているケースは非常に少ないと考えられます。

50代後半の夫婦が老後の年金生活に備える方法

年金生活に備える方法は、年齢やライフステージによって大きく異なります。ここでは、定年が視野に入ってきた50代後半の夫婦の場合で解説します。

年金の受給予定金額を確認する

まず、実際に受給できる予定の年金額を確認しておきましょう。50代後半であれば、これまでの年金の加入実績により、受給予定額もある程度正確に把握できます。

受給予定額を確認するには、以下のような方法があります。

  • ねんきん定期便を確認する
  • ねんきんネットで確認する
  • お近くの年金事務所や年金相談センターで尋ねる

手元に年金定期便がなく、ネットの操作も分からない場合は、年金事務所などを訪問するのが良いでしょう。

年金事務所の受付時間は、平日は午前8時30分から午後5時15分まで、週の初日は「時間延長」で午後7時まで相談可能です。

また、毎月第2土曜は午前9時30分から午後4時まで受付をしていますので、平日に訪れるのが難しい方はこの日を利用しましょう。

退職後の家計簿を作成する

次に、年金生活に入ったときの家計簿を作成し、いくらの支出が必要かを明らかにします。

現役時代と異なり、会社関連の交際費やランチなどの飲食代は不要になりますので、カットできる支出もあるでしょう。

一方で、退職後に趣味を始めたいなど、新たな出費が生まれるケースもありますので、今の段階でわかるものはリストアップしてください。また老後に関しては、介護に関する支出も想定しておく必要があります。

家計簿を作成するうえでは、夫婦が話し合いをすることが大切です。お互いが納得したうえで、どの支出を削るか増やすかを決めないと、将来大きな問題となり、夫婦関係に支障をきたす恐れがあります。

家計簿の支出と年金受給額を比較すれば、年金でいくら足りないのかがわかります。

対処法を検討する

年金だけでは不足する分について、対処方法を検討しましょう。具体的には、下記のような方法が考えられます。

  • 退職金を含め預貯金を使う
  • 年金の繰り下げ受給をする
  • 65歳以降もしばらくは厚生年金に加入しながら働く
  • 退職後はパート・アルバイトをする

十分な資産があるなら、計画的に切り崩していけば問題ありませんが、そうではない方も多いでしょう。足りない分をどう補填するか、年金生活に入る前に検討を始めてみてください。