最近では、「定年延長」の話題を耳にすることもありますが、一方で、定年前に退職して少しでも長く悠々自適な生活を送りたいと考える人もいるでしょう。しかし、早期退職を実現するためには、具体的にどのような準備や心構えが必要なのか悩むことがあるかもしれません。

そこで今回は、株式投資で資産2億円を築いて早期退職を達成し、『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門 「自分年金」を増やす最強の5ステップ』(ダイヤモンド社)を出版されたかんちさんに、早期退職のコツや実践されている「高配当株×優待株」の運用手法について、詳しくお話をうかがいました。

  • 早期退職を実現したかんちさん、シンプルな「高配当株×優待株」の運用手法とは?

■資産2億円で配当利回りが4%あれば、年収800万円の消防士と同じ収入になる

━━はじめに、かんちさんが株式投資を始めたきっかけを教えてください。

元々、祖母や父親など家族が株式投資をやっていて、自然と株に触れる機会が多かったんです。それがきっかけで私も始めました。株を始めたのは22歳ぐらいの時なので、普通の人より少し早かったですね。

家族に株を教わったわけではないですが、祖母も父も「長い目で見た時良さそうな株をずっと握っている」というスタイルでしたので、私も自然とそういった投資スタイルになりました。

株式投資を始めた具体的な動機としては、「お金に働いてもらって自分は楽したい」という気持ちがあったんだと思います。株を持っていると資産の増減はありますが、配当のある株を買い増していけば、配当金額だけは必ず増えていきます。ですので、「資産額の増減に関わらず配当金を増やそう」という感じでやってきました。

━━ご著書の中でも触れられていましたが、「資産2億円」で早期退職を決めた理由は何でしょうか。

辞めた当時は消防士の仕事をしていましたが、その年収は800万円ぐらいでした。「資産2億円で辞める」というのははじめから決めていたわけではないですが、株の資産が2億円に近づいていたので、「配当利回りが4%あれば、今の年収と同じくらいの収入になるから、辞めても生活は成り立つな」と思い辞めました。

生活費を株の配当で全部まかなえたら仕事を辞めても困りませんので、「生活費をいくら使うか」によって資産何億円で辞めるか決めるということですね。

実は、その前に資産が3億円あった時期もありましたが、リーマンショックでけっこう減ってしまったんです。そうした悪い状況を一通り経験しながらも、その後少しずつ資産が増えていきましたので、「これ以上悪くはならない、もうこれなら大丈夫」と思えたからというのもあります。

━━「資産いくらで辞めるか」というのは、その人の生活費から逆算して決めるのがいいんですね。

そうですね。年間300万円しか使わない独身の人なら、恐らく資産が1億円あれば、「年間300万円の配当+株主優待」で暮らしていけると思います。配偶者や子どもがいて4、5人家族となるとそれだけでは足りず、もう少し必要になる感じですね。

過去の経験から言うと、資産が減っても配当金や優待はそれほど下がらず、しばらくすると資産が回復してきます。ですので、資産が目減りした時のことはさほど気にし過ぎず、「配当金の中で暮らしていけるならそれでいい」と考えています。

資産を取り崩し続けていると、人間はやはり不安になりますので、一番良いのは「取り崩してもお金が増える」という状態にすることです。そもそも、もらう配当以上にお金を使わなければそうなるはずです。

■早期退職後の生活を考えておくことも大切

━━早期退職を考える場合、どのようなことを考慮しておくべきでしょうか。

早期退職には、向いている人と向いていない人がいると思います。向いていないのは、「会社が嫌だから」といって、やることもないのにとりあえず辞めてしまうような人です。反対に、趣味や人間関係がしっかりしている人は、辞めても暇になることはなく、良い生活が送れると思います。

ですので、お金のかからない趣味をたくさん持っておくのがいいですね。体も大切ですので、登山やランニング、テニスなど体に良くて、さほどお金もかからない趣味がいいと思います。

━━たとえば40代、50代で早期退職を考え始めた場合、 ハイペースで資産を増やしていかなければならないケースもあると思います。その場合、気を付けなければいけない点はありますか。

資産が増えるかどうかというのは、僕なんかは相場任せです。相場がいい時はすごく増えますが、相場が悪い時は下がったり平行線だったりという時もけっこうあるんですよ。けれど、焦っても仕方ないです。相場がいい時に増やせればいいという感覚で、あまり焦らずにいることですね。

計画を立てても、多分計画通りに行かないと思うんです。ダメな時も絶対にありますが、そういう時に「計画通りにやらないと、もうちょっと増やさないと」となると、レバレッジ(借入を利用し、自己資金のリターンを高めようとする方法)をかけて買ってしまうなど、やってはいけないことをしてしまうものです。それで負けると何倍も損をしますので、資産形成には良くないですね。

━━早期退職を考える人の中には、早く仕事を辞めると退職金が減ったり年金が目減りしたりすることが気になる人もいるようです。それについて、かんちさんご自身はどうお考えですか。

私は給料が一番高い49歳の時に退職していて、退職金は1,500万円ぐらいでしたが、もう少し勤めていればもっともらえたと思います。しかし、本来退職する時期まで11年という運用期間がありました。

退職金も全額株に投資していますので、実際の退職金は1,500万円でも、11年間運用した分資産が増えていて、3,500万円や4,000万円の退職金をもらったのと同じような効果が得られています。

年金は制度上、インフレだとそれに準じて年金の額も上がるようになっていますが、 インフレ率が3%だとしたら、年金は増えても2%ぐらいしか上がらないんです。そうすると、インフレに負けて年金は目減りします。

ですので、退職金を早くもらって自分で運用して資産を増やした方が、恐らくプラスになると思います。

■「高配当株×優待株」なら誰もが失敗なく投資できる

━━株式投資の中でも「高配当株×優待株」の投資をされている理由、 おすすめしている理由について教えてください。

株式投資で一番まずいのは、資産を溶かしてしまい、「もう株式投資なんかこりごりだ」という状態になることです。 しかし、分散投資をしながら「高配当で優待もある株」をたくさん買っていけば、そういう状態にはならないと思うんです。誰もが失敗なく、そこそこのところまで行けると思いますので、そういう面でおすすめですね。

もちろん、中には「ダメだった」という会社もありますので、集中投資しているともうそれで終わりです。しかし、分散投資していれば、10銘柄持っていて、1つぐらいダメでも他の9銘柄がカバーしてくれます。

━━良い銘柄を見つけるために、工夫していらっしゃることはありますか。

やはり、最終的にはしっかりと売り上げが増えて利益も増えているという株が好ましいですので、そうした株を見つけるようにしています。

たとえば、消費者に一番なじみがあるのが、飲食店の株ですよね。お店に行ってみて美味しかったりお店が混んでたりすると、やはりその株は大体株価が上がってきます。

私の場合、中部地方のお店に、他の地方の人が気付くより先に食べに行ってみて、お店がどのくらい混んでいるか見てみるんです。物語コーポレーションがやっている焼肉キングやブロンコビリー、あみやき亭など中部で強いお店はけっこうあります。

中部で成功すると全国にも展開していくので、先に株を持っておくと株価が何倍にもなるチャンスがあるんです。その際、なるべく株価が小さいうちに株を買っておくのがコツです。飲食の株は特に、伸び盛りの時に買うと面白いですね。

━━優待のある株を持っているとかなりお得ですか。

そうですね、優待は節約ととても相性が良いんです。たとえば、家族との外食に年間30万円使っている人がいるとします。そういう人が、すかいらーくやマクドナルドの株を買うと、優待がありますので、外食で使うお金が減っていくんですよ。最終的には、外食に年間30万円使っていたのが、もうお金を払わなくても外食できる状態になります。

また、飲食だけでなく、優待のあるスーパーの株を持っていれば、スーパーでの買い物が安く済みます。家電量販店の株を持っていれば、電化製品が安く買えたり無料で手に入ったりして、 どんどん生活コストが下がっていきます。

優待のある株を買えば買うほど、生活コストが下がり、年間300万円で暮らしていた人が200万円で暮らせるようになります。その余った100万円をまた株に投資すると、それこそ雪だるま式に資産が増えるんですよ。

━━かんちさん流の「高配当株×優待株」の探し方を教えてください。

割高な株はアウトと判断していますので、「PER(株価収益率)×PBR(株価純資産倍率)」が15倍以下に収まっている会社から探します。

あとは、マネックス証券の「銘柄スカウター」というツールを使っています。このツールでは企業の売り上げや利益を棒グラフで見られるのですが、それを見て、右肩上がりになっている株は今後も伸びる可能性が高いので、そういう株を組み合わせて買っています。

それと、毎年配当を増やしてくれる「連続増配株」を検索し、その中から利回り3.5%以上のものを選ぶのもいいと思います。たとえば今は利回り3.5%しかなくても、毎年増配してくれたら、3.8%、4%、4.5%…とどんどん利回りが良くなる場合があります。

必ず増配してくれるとも限りませんが、連続増配株で次に増配してくれないというケースはあまりないです。10銘柄のうち2銘柄ぐらいは平行線でも、あとの8銘柄ぐらいはちゃんと増配してくれますね。毎年増配があると、同じだけ株を持っていても配当金が増えるんですよ。

ちなみに優待については、高配当で優待がついている株を買うパターンと、優待だけ見て株を買うパターンと、2パターンに分けています。同じような優待内容の株があっても、日常生活で使うと思えば気にせずたくさん買っていますね。

『ほったらかしで年間2000万円入ってくる 超★高配当株 投資入門』(かんち 著/ダイヤモンド社 刊)

三重県在住の専業投資家・かんちさん。元消防士(公務員)で13年前に資産2億円に届きそうになったタイミングで、仕事が忙しそうな消防本署への異動辞令が出たことをきっかけに早期退職。退職してからは生活費のすべてを株の利益でまかなう生活を送っている。当初は48歳時点の年収800万円を配当金から生活費として引き出していたが、「まだ余裕がある」と思い年1000万円に増額、すると「いや、まだ余裕があるな」と思い年1500万円に増額した。米や食材、外食や日用品の多くを株主優待でまかなえていることもあり、国内外の旅行や妻への贈り物くらいしか、大きなお金を使うことがないものの、毎年株式投資のパフォーマンスが向上し、使っても使ってもお金が減らず……あと3年ほどしたら配当金から引き出す年間生活費を2000万円に増額するつもりだ。そんな悠々自適の高配当株ライフを送るかんちさんの投資手法は、至ってシンプル。投資初心者からベテラン投資家まで、広く参考になる簡単&シンプルな高配当株の探し方から自分年金1億円を貯めるロードマップ、高配当&株主優待株ベスト36まで、その投資術を初公開!

かんち

1961年三重県生まれ。資産約8億円・年間配当金2000万円超の現在60代・専業投資家。元消防士(公務員)。13年前、49歳のときに株式投資で資産2億円を築いて早期退職。それからは生活費のすべてを株の配当金・株主優待でまかなう生活を送っている。使い切れない配当金は再投資へ。投資家の父から“投資の帝王学”を学んで育つ。投資歴40年以上で保有銘柄は約600銘柄。投資初心者でもわかりやすく、判断基準が明確で、再現性の高い投資手法には、個人投資家の間で定評がある。資産が増え続けており、生活費の多くは株主優待でまかなえるため、死ぬまでに資産を使い切れないかもしれない危機感から、現在の年間生活費1500万円を65歳以降は2000万円に増やすつもり。