アラガン・エステティックとして先進の美容医療を牽引する「アラガン・ジャパン」が、美容医療についての市民講座を開講。

医療法人社団喜美会、自由が丘クリニック理事長・古山登隆氏と、北里大学形成外科・美容外科 客員教授でNPO法人自由が丘アカデミー代表理事・大慈弥裕之氏が最先端の美容医療やその取り組みについて紹介した。

■美しい顔の基本型と老化の基本

「美容医療は安全であること、自然な見た目であること、やりすぎないこと、理論的であること、予防的であること……このようなものが揃ったときに初めて適切な美容医療になり、必ず幸せを運ぶ医療であると考えています」とは、古山氏。「日本人が目指すべき美しさについて」と題した講演を行った。

「元来、命を救うものが医療でしたが、医学の進歩とともに機能に目が向けられ、形態に目が向けられるようになってきました。私の専門である形成外科は、再建外科と美容外科の二つが揃って成立した科です。たとえば、交通事故でできた傷跡などを治療し、マイナスをゼロにする、元に戻すものは再建外科。より綺麗なものを目指すというものが美容外科ですが、私は再建外科のゴールも実は美しさだと考えています」

続いて、古山氏は美容医学における美しさを考える上で大切な「3LTB」について説明。3Lはフェイスライン、オージーライン、エステティックラインという3つのライン、Tはセントラル・トライアングル、Bはバランスのこと。老化による変化について解説した。

「さまざまなフェイスラインがある中で、一般的には頬に適度なボリュームがあって顎まで綺麗につながるフェイスラインが理想的とされています。2つ目のOGラインは一言で言うと曲線美で、これは顔においても重要な要素です。エステティックラインはロバート・リケッツが1954年に提唱した横顔の美しさの基準で、いわゆるE-lineのことです。鼻の先端と顎の先端より口元が少し下がっている形態が基本的には美しいとされています」

中国・韓国・日本といった北東アジアの蒙古系民族は骨格上、このE-lineがもともと弱いラインとされており、加齢によってその弱いラインが強調されていくという。また、年齢とともにオージーラインの曲線美も失われ、凸凹による影ができやすくなるといった傾向があるようだ。

「4つ目はセントラルトライアングルです。近年、人が人の顔を見る時どのようなかたちで認知するかというメカニズムが解明されています。まず、セントラルトライアングルという左右の目と口を見て、その後フェイスラインをチェックし、我々は人の顔を認知していますが、エイジングが始まっていくと目の上の凹んでくることになります。また、アニメなどのキャラクターもそうですが、フェイスラインや目・唇がきれいで、鼻が目立たないような顔は、きれいな印象の顔になりやすいです。しかし、年齢を経ることで唇も形が薄くなり、鼻はペースが横に広がって、先端が下がってくるという変化が起き、鼻の存在感が出てきます」

最後にバランス・シンメトリーもポイント。輪郭や目・鼻・口の形が同じでも位置だけ違うと印象が大きく変わり、年齢に従って額が広がって鼻が下がり、顎が縮むことでバランスが崩れてくるという。

「北東アジアの中国・韓国の美しさと比べたとき、ジャパンビューティーとして、どういうものを我々は目指していくか考えると、自然な見た目でその人の個性を活かした、安全で抑制の効いた美容医療が重要だと思います。『3LTB』は同じ顔をつくるということではなく、あくまで基本であって、その上に個性があるということです。最近は若い男性も美容に高い興味を持つようになり、こうした世代にダイバーシティとインクルージョンはより大切なキーワードになっています。こうした世代のライフスタイルに合った美容医療を提供していくことが必要ですし、形態だけでなく機能回復も含む美容医療が、今後の日本では重要な分野になってくるというのが私の見立てです」

■美容医療の現場では説明不足の実態も

次に大慈弥氏は「安全な美容医療について」という講演を実施。美容医療を安心して受けられる仕組みづくり、美容医療業界・学会と、所管する厚生労働省の取り組みを紹介した。

「美容医療は毎年増加しています。美容形成外科の国際学会(ISAPS)の統計では全世界的で年間2,500万件ほどのデータが集まっており、ボトックスやヒアルロン酸などの非外科的な治療方法が、いま世界的に増えています。特に日本は非外科的なものが8割以上を占めており、非手術的な治療が非常に好まれる傾向にあります」

施術の内容に関してはアメリカでは胸やお尻の施術が多く、日本では瞼など顔の施術が圧倒的に多いといった特徴があるそうだ。

「私は日本美容外科学会(JSAPS)で、より安全に安心して受けられる体制づくりに向けて行動してきました。令和元年度から厚労省ととともに、5つの学会が合同で美容医療での合併症の実態調査、重大な有害事象を回避するための診療指針となるガイドライン作成を続けています。まずは有害事象の実態調査ですが、全国で約3,000軒の美容外科・美容皮膚科が存在します。ネガティブな調査ということで回収率は2.7%ほどに留まっていますが、大学病院からは81%の回答率となりました」

また、治療を要する重度の合併症は感染、しこりや変形といったものだという。

「半年以上を経っても症状が取れない後遺症としてはしこりのほか、色素沈着、ケロイド・傷跡などが報告されました。それらの原因となった施術には、やはり負担の大きい外科的なものが多いという結果になっています。また、豊胸で使われるシリコン・インプラントなど、吸収されない材料による有害事象は今も続いていることがわかりました」

重大な合併症の報告や患者の声がなかなか公的な窓口に上がりにくい実態もあり、大慈弥氏は国が設置する相談窓口「医療安全支援センター」の認知向上を図りたいと語った。

「我々の学会ではホームページからアクセスしていただくかたちで患者さんの声を集めました。10日間ほどの期間で70件ほどの回答をいただき、その内訳は20代から40代の方の回答が多く、一般医療との違いとして美容医療に対する評価は高評価と低評価がきれいに2つに分かれている点が特徴です」

傾向として高評価には非手術的なものの割合が高く、低評価には瞼などの外科的なものが多いようで、低評価の理由には見た目という施術の結果・成果のほか、説明不足・対応、料金なども挙がったという。

「美容医療におけるインフォームド・コンセントについては、メリットばかり謳われがちで、医師からのリスク説明が足りていないことも少なくない傾向がわかります。特に日本の美容医療では、他の医療と違って未承認の材料が多く使われており、そのリスクの説明をもっと徹底させる必要があります。最後にガイドラインについては学会のホームページから誰でも閲覧可能です。2009年に消費者庁ができて以降、行政もさまざまな医療に対する問題点の把握に力を入れています。日本の美容医療のますます発展が確実視されるなかで、みなさんが安心して受けられるような体制づくりを続けていきます」