2012年6月のCOMPUTEXでも展示されていたが、2012年下半期、GIGABYTEからIntel Z77チップセットを採用したマザーボードに注目の新シリーズ「GA-Z77X UP」シリーズがリリースされた。

ここでは、GIGABYTE本社のマザーボード担当の開発責任者に、この「GA-Z77X UP」シリーズの特徴と機能、その効果について詳細に聞くことができたので、その内容をお届けしたい。

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【インタビュー】GIGABYTE本社のマザーボード開発責任者に聞いてきた(前編) - GIGABYTEマザーの設計・開発プロセス

GIGABYTE台湾本社Motherboardビジネス事業部 Innovation & Creative Value Center Deputy Division Director Product Planning DirectorのJackson Hsu氏(左)と、GIGABYTE台湾本社Motherboardビジネス事業部 Service & Marketing Center Division Director Product Planning DirectorのClaude Liao氏(右)にお話を伺った

UPシリーズの開発はIR3550チップ供給元と密接に連携して行った

――まず、新シリーズのキーフィーチャーを教えてください。

ひと言で言えば、デジタル電源回路と3D BIOSの2つになります。

まず、デジタル電源回路についてですが、新シリーズの電源回路は、VRD12.5に準拠しています。これはIntelの次世代プラットフォーム「Shark Bay」(CPUはHaswell世代になる)で求められる予定の規格であり、これを先取りした形になります。この点、他社のデジタル電源回路製品に対してもアドバンテージになると思います。

「Ultra Durable 5」のロゴ。対応品の製品パッケージなどで貼付を確認できる

デジタル電源回路に関しては、新シリーズに合わせ、新たな品質基準である「Ultra Durable 5」(UD5)を採用しました。UD5では、International RectifierのDC-DCコンバータ用マルチチップ・モジュール「IR3550」を採用するとともに、(最上位モデルGA-Z77X-UP7では)60A対応のパワーステージを採用しました。

こうした更新により、オーバークロック性能が向上する一方、通常時には発熱を抑えることが可能です。ちなみに、1フェーズあたり60Aとなると、例えば32フェーズのUP7で計算するとクレイジーなくらい容量に余裕が生まれますね。対して従来一般的な電源回路の場合、20~30A程度でフェーズ数も少ないわけですから、両者の間は何倍もの開きがあります。

実際にGIGABYTEのマザーボード上に実装されている「IR3550」チップ

GA-Z77X-UP7のソケット周りに並ぶ「IR3550」チップ。このモデルの場合32フェーズもの実装となる

デジタル電源回路は、基本的にIntelの仕様に準拠する形で進めてきました。我々の製品では、Intel Z77チップセット搭載製品の場合で4ゾーン(CPU、メモリ、VTT、iGPU)、iGPUの無いIntel X79チップセット搭載製品ではこれが3ゾーンになります。

――デジタル電源回路を採用することのメリットというのは、どのようなものでしょうか。

オーバークロック時などのように何か電源設定をしていこうという場合、デジタル電源回路ではOS上で動くユーティリティソフトからも電源回路を制御できる点がメリットになります。もちろんBIOSでも設定できますから、エンドユーザーは自由自在に設定、調節し、パフォーマンスを追求していけます。

――ではアナログ電源回路の時はどうだったのでしょうか。

アナログ電源回路では、ベンダーが作りこんだ範囲でしか設定、調節できません。自由度が大きく異るわけです。

――GIGABYTEのデジタル電源回路製品では、3DPOWERユーティリティからPWM回路の電圧やフェーズの制御ができますね。これを設定していく上で、ポイントとなるのはどのあたりでしょうか。

まずVcoreやDDRメモリ、ロードラインといった項目を設定していくのが効果的です。とくに重要なのはDDRメモリだと思います。現在、メモリコントローラがCPUに統合され、CPUの動作、発熱とも深く関わっていますから、最適な調整値を見つけることが重要です。

――こうしたオーバークロックに関するノウハウはどのように吸収しているのでしょうか。

オーバークロッカーから直接、あるいは各国のセールスを通じてフィードバックを吸い上げています。オーバークロックは経験が全てです。社内にもオーバークロッカーが居りますので、そこからもフィードバックが得られるというのも強みです。

――デジタル電源回路やUD5に関して、GIGABYTEはCOMPUTEX TAIPEI 2012で温度が低く抑えられることをアピールし、比較デモなどを行っていました。温度が低く抑えられる理由というのは、どこにあるのでしょうか。

キーコンポーネントとなるのはIR3550チップになります。GA-Z77X-UP7に関しては、設計開発の段階からIR3550の開発元と密接に情報交換を行っていました。そしてその協力関係が非常に良好だったと思います。

チョークコイルに関しても60A対応のものを採用していますし、その他のIR3550の周辺コンポーネントに関しても同等の品質を求めました。こうした点が積み重なり、オーバークロック時に求められる大電力に対応しつつ、通常使用時には温度を抑えられる設計に仕上げることができました。

COMPUTEX TAIPEI 2012で行われていたデモ。実際にUD5のIR3550で従来型MOSFETマザーよりも30度以上低い温度となっていた

――フェーズ数に関してですが、多ければ多いほど良いという一方で、一部では多ければ多いほど良いというものではない、という意見も聞きました。多すぎると効率が悪くなるという主張ですね。開発の現場から見て、どのくらいのフェーズ数が最適だとお考えでしょうか。

SKUにも関連してきますが、基本的にフェーズ数が多いほど1フェーズあたりの負荷は小さく抑えられることは事実です。そのため、一定のフェーズ数があった方が発熱を抑えられます。

しかし一概に言えるものではない、というのが実際です。SKUに関する話になりますが、ハイエンドであれば、ハイエンドユーザーの使い方に合わせたフェーズ数が必要であると考えられます。

しかしその一方で、エントリーモデルでは、もちろん発熱を抑えることは重要ですが、同時にコストを抑えるためにフェーズ数も抑えなければいけません。これとは別に、(CPUソケット周辺の)スペースによる制約というものも存在します。

ただ、先に申しました通り、多ければ多いほどパフォーマンスが上がると言う点は確かです。

――GA-Z77X-UP7で32フェーズ電源回路を実現できたわけですが、このフェーズ数を実現するにあたり、それを可能としたキーコンポーネントは何でしょうか。

やはりIR3550ですね。それも開発の段階からInternational Rectifierと密接に連携して設計したことが大きいと思います。

――オーバークロックランキングサイトを見ると、フェーズ数の多いモデルが上位を占めているわけではないように見えますが、いかがでしょうか。

我々の製品におけるオーバークロック設計というのは、フラッグシップモデルに限ったものではありません。メインストリーム向けの製品以上であれば、全てがオーバークロック可能な設計になっています。例えばメインストリーム向けのなかでも比較的安い価格設定のGA-Z77X-UD3Hでも、十分なオーバークロック性能が得られます。

ではそうしたGA-Z77X-UD3Hと、UP5やUP7といった上位の製品でどこが異なるのかと言うと、まずはフェーズ数の違いによりCPUが極限状態に達した状態での電源回路の余裕、そして上位モデルでは実際にオーバークロッカーから得られたフィードバックが盛り込まれている点になります。

12フェーズの電源回路を備える「Z77X-UP5」

後者は主にスイッチという形で実装されています。GA-Z77X-UP7では、BCLKや電圧をBIOSやユーティリティだけでなく、ハードウェアスイッチからも制御できるようになっています。オーバークロックにおける使いやすさの違いという点でも注目してみてください。

――電源回路の進化とともに、個々数年、各社ともヒートシンクのデザインが簡略化されていた印象です。しかしGA-Z77X-UP7ではフィンを採用し、そのデザインはチップセットの発熱が大きかったIntel 4シリーズの頃に先祖返りしたような印象も受けました。こうしたユニークなヒートシンクのデザインプロセスについて教えて下さい。

「GA-Z77X-UP7」のヒートシンク。アルミブロックよりも放熱効率の高い薄型で高密度なフィンタイプを採用している

ヒートシンクの開発では、まずはマザーボードの開発側がCPUフェーズ周りでどのくらいの電力を供給するかという設計仕様をヒートシンクのデザインチームに伝えます。そしてデザインチームはその仕様に合わせてヒートシンクをデザインします。実際にマザーボードを使用した際、どれだけ温度が上昇するのかという情報を伝えれば、それを冷却できるヒートシンクをデザインしてくれます。

GA-Z77X-UP7は極限のオーバークロックを目指すモデルですから、そうした点を考慮してフィンが採用されたわけです。ブロックに比べ、フィンは同一堆積でも表面積を稼げるため、より高いサーマル特性を引き出すことが可能です。

外観デザインに関しては、オレンジとブラックをテーマカラーにしています。我々の製品では、Intel X58チップセット搭載モデルの頃から、オーバークロックモデルにはオレンジとブラックというテーマカラーを採用しています。例えばこれがゲーミングシリーズだったら、Sniperシリーズ同様、グリーンとブラックというテーマカラーになるわけです。

オーバークロックモデルはオレンジとブラック(「写真は「GA-Z77X-UP7」)

ゲーミングモデルはグリーンとブラック(写真は「G1.Sniper 3」)

――液体窒素冷却は、自作ユーザーのなかでも限られたユーザーが行うものだと考えております。参考までに、GA-Z77X-UP7に搭載されているLN2(液体窒素)スイッチはどのように活用するものなのでしょうか。

LN2モードは、オーバークロック時にオンにしておき、例えばオーバークロックの途中でツール(ベンチマークソフトやCPU-Zなど)をインストールする必要があった場合にオフにするという使い方をします。

LN2モードがオフになると、CPUはその最低クロックまで動作クロックを落とすことができますので、オーバークロック時の不安定な状態よりも安心してツールの導入ができるわけです。

なお、LN2モードはOS起動中でもオン・オフ可能なので、安定状態に戻すために再起動するといった手間から開放されます。基本的にパワーユーザー向けの機能ですので、一般ユーザーにとってメリットがあるのかというと難しいところです。実際のところ誰が使っているかと言うと、トップのオーバークロッカー達ということで、そうした方からはフィードバックを得ています。

次回『GIGABYTE本社のマザーボード開発責任者に聞いてきた(後編) - GIGABYTEの今、そして今後の製品について』に続く