全国に構える 10 校の専門学校と大学で情報処理教育を提供する、電子開発学園。1990 年代に通信衛星による遠隔教育を開始するなど、教育現場での ICT 利用を積極的に推進してきた同学園では、2016 年 4 月、さらに先進的な取り組みとして、タブレット デバイスとクラウドを活用した総合学習システム「PINE-Cloud」を、専門学校に設けている大学コースの学生に向けて提供を開始しました。

大学コースの学生は、配付されたタブレット デバイス上から PINE-Cloud を利用することにより、時間や場所にとらわれずに学習を行うことができます。同プロジェクトでは日本マイクロソフトの製品が全面的に採用されており、配付デバイスには Surface 3 が、PINE-Cloud の提供基盤には Microsoft Azure が、そして学生とのコミュニケーション ツールとしては Office 365 がそれぞれ利用されています。これにより学習のモチベーション向上や、効率の向上、コミュニケーションにおける課題の解決など、多くのメリットを生み出しています。

プロファイル

1968 年に北海道電子計算機専門学校 (現在:北海道情報専門学校) として開校し、現在では全国に 10 校の専門学校と大学を運営する、電子開発学園。これまでに 80,000 人を超える IT 人材を輩出している同学園は、「産 (産業)、学 (学園)、研 (研究所)」の 複合グループである「eDCグループ」を構成しており、最新技術の習得を行えることを強みとした品質の高い教育サービスを提供しています。

導入の背景とねらい
学生の学習時間を確保するべく、タブレット デバイスとクラウドの活用を検討

情報処理教育に特化した専門学校として 1968 年に創設され、現在は全国で専門学校と大学を展開する、電子開発学園。IT システムやマルチメディア、ビジネスなど、多岐にわたる専門的なカリキュラムを提供する同学園は、国家試験での高い合格率や就職率の高さで、各業界から高い評価を受けています。

電子開発学園が運営する北海道情報専門学校

電子開発学園
学園本部
本部長
恵藤 健二 氏

コンピューターの黎明期から情報処理教育を実践してきた電子開発学園は、教育現場における ICT の利活用を積極的に推し進めてきたことでも知られています。たとえば 1991 年には、PINE-NET と呼ばれる衛星通信を用いたインタラクティブな授業を開始しており、専門学校を卒業すると同時に、同学園が運営する北海道情報大学の卒業資格も取得することのできる「大学併修制 (大学コース)」を PINE-NET を通じて提供するなど、同学園は常に先進的な取り組みを行ってきました。

電子開発学園 学園本部 本部長 恵藤 健二 氏は、こうした ICT の利活用を早くから進めてきた意図について、次のように説明します。

「経済環境の変化や IT 人材への期待向上に伴い、学生が在学中に学習すべき項目は日々新しくなっていくとともに増加の一途をたどっています。電子開発学園における ICT 活用は、このような状況下で『実践的、専門的な学習ができる環境を提供する』という視点で取り組みを進めており、1990 年代から運用を開始した PINE-NET もその 1つになります。通信衛星を用いた遠隔講義を行う当システムは、ブロードバンド回線の一般化に合わせ、現在では高速専用回線を用いた PINE-NET II に刷新されています。また、大学の講義映像を e ラーニング システムの構築に利用するなど、常に発展も続けています」(恵藤 氏)。

電子開発学園
学園本部
課長
白木 祐二 氏

実践的、専門的な学習環境の提供を主な目的として推し進められてきた ICT の利活用ですが、電子開発学園 学園本部 課長 白木 祐二 氏は、長年かけてこのような教育を実践してきたことが、同学園における別の強みも生み出していると続けます。

「1980 年代からコンピューターを用いた教育 (PINE-CAI) を開始していますが、そこで用いられている教材は、『対面授業と同等の品質』をテーマに当学園が独自で制作してきたものです。産業界から得たノウハウをもとに制作しているオリジナルのテキスト教材や、実際の講義映像といったコンテンツは、長年かけて蓄積されてきたこともあり、その網羅性と有用性が大きな特徴です」(白木 氏)。

教育現場における先進的な ICT 活用を行ってきた電子開発学園ですが、2014 年度からは新たなステップとして、タブレット デバイスとクラウドの活用をテーマとした取り組みの検討が開始されました。

「これまで開発してきた電子コンテンツや個別学習システムを、場所に制限されず、いつでも、どこからでも利用できるように発展させたいと考えていました。また、モバイル ファースト、クラウド ファーストといわれる昨今、IT に特化した専門学校として次に取り組むべきテーマを考えた場合、タブレット デバイスとクラウドの活用は、必然の選択でもありました」(恵藤 氏)。

システム概要と導入の経緯、構築
Surface 3 をきっかけに日本マイクロソフト製品を全面採用したことで、複雑化していたプロジェクトがシンプル化できた

十分な学習時間を提供できる環境づくりを目指した同プロジェクトは、2015 年 4 月、電子開発学園内で発足した検討委員会のもとで、本格的な検討が開始されました。恵藤 氏は、同プロジェクトにおいては、「PINE-Cloud」と名付けられた新たな教育サービス基盤の開発と、それを学生が利用するための配付デバイス選定の双方が、並行して進められたと振り返ります。

「電子コンテンツの閲覧だけでなく、講師から学生へ向けた課題出題とその提出、解答から集計、そしてその結果にもとづく学生への指導まで、あらゆる教育をタブレット デバイス上で行うことを目指し、PINE-Cloud に必要な機能の検討と開発を進めました。システムの本番環境はどこにおくのか、そして PINE-Cloud を利用するデバイスは何を採用するのか、といったことを検討する必要がありましたが、PINE-Cloud 開発の進捗に伴ってそれぞれに求められる要件も変化し、要件定義と製品選定に苦労しました」(恵藤 氏)。

さまざまな試行錯誤の結果、PINE-Cloud はここに記載した機能を提供するべく、開発が進められた。「システム開発」「デバイス選定」「基盤選定」を統一して検討が進められる必要があったが、開発の進捗に拠る事項が多い背景で、実際はそれぞれ個別プロジェクトのように検討が進められたという

たとえばタブレット デバイスの場合、検討当初は iPad で PINE-Cloud を利用する計画でしたが、開発の進捗に伴い Windows 環境で制作されてきた電子コンテンツをそのまま利用できるようにするため、iOS の採用は見送られました。その後、さまざまなメーカーの Windows タブレット デバイスで検討を進めましたが、スペック、ペン入力の精度、操作性といった面が PINE-Cloud の利用デバイスに最適だという確証が得られず、決定には至らない状況でした。

そのような中、2015 年 6 月に日本マイクロソフトより Surface 3 の案内を受けたことをきっかけに、同プロジェクトの進捗は加速したと、白木 氏は言います。

「案内を受けて初めて Surface 3 に触れたのですが、まずペン入力の精度に驚きました。紙のノートに書き込むようにスムーズに使えるため、電子教材や資料を閲覧するだけでなく、その場でメモを書き込むような使い方も十分にできると感じたのです。加えて、キーボードを接続すればすぐに入力デバイスとしても利用が可能ですので、Visual Studio などの開発ツールを立ち上げてそのままプログラミング実習で活用することもできます。Surface 3 は、PINE-Cloud の利用シーンを大きく拡大し得るデバイスであり、携行性にも優れていて、文句がありませんでした」(白木 氏)。

さらに恵藤 氏は、同時期に案内を受けた Microsoft Azure についても、PINE-Cloud の提供基盤として価値を感じたと続けます。

「PINE-Cloud は、これまで蓄積してきた電子コンテンツを利用するため、システムの規模が大きくなっていました。また学生の個人情報も取り扱うため、高い信頼性と可用性が求められます。東日本と西日本にデータセンター拠点をもち、クラウドセキュリティ・マークもゴールドを取得している Azure は、PINE-Cloud が求める基盤の要件をクリアしていました。またデバイスと提供基盤のそれぞれをマイクロソフト製品で統一すれば、連携はスムーズにでき、プロジェクトもシンプルに進められることも期待したのです」(恵藤 氏)。

優れたペン入力の精度と操作性を評価し、電子開発学園では 2015 年 10 月に、学生へ配付するデバイスに Surface 3 の採用を決定。その後、高い可用性と信頼性を評価し、PINE-Cloud の提供基盤にも Azure を採用することを決定します。さらに、日本マイクロソフトが提供する総合的なソリューションに価値を感じ、これまで教職員向けに導入していた Office 365 を学生向けでも利用することに決定しました。

「Exchange を使ったコミュニケーションや OneDrive によるファイル共有などが、PINE-Cloud では対応しきれない部分を補完できると考え、Office 365 のアカウントも Surface 3 とともに学生 1 人ひとりへ提供することにしました。Surface 3 の採用検討をきっかけに、これまで個別に近い形で検討が進められ複雑性が増していたプロジェクトを、1 社の製品でまとめることができたといえるでしょう。これらは、総合的にサポートしていただけるという安心感ももちろんですが、プロジェクト全体に統一感を持たせる意味でも大きく、結果として PINE-Cloud サービス インまでの期間とクオリティを最適化できたと感じています」(恵藤 氏)。

導入ソフトウェアとサービス

  • Microsoft Azure Virtual Machine
  • Microsoft Azure Storage
  • Surface 3
  • Microsoft Office 365

導入メリット

  • Surface 3 と Office 365 の導入により、利便性が高く最新の IT を利用できる環境を学生へ提供でき、学習へのモチベーションの向上が行えた
  • Azure を採用したことで、クラウドを利用した独自開発の総合学習システム「PINE-Cloud」について、セキュリティを確保した可用性の高い基盤を提供することができた
  • 日本マイクロソフト製品を全面採用したことで、複雑化していたプロジェクトをシンプル化し、短期開発でクオリティの高いサービスを提供開始することができた

導入の効果
移動などの「すきま時間」だけでなく、自宅における学習意欲も向上

PINE-Cloud の開発は、電子開発学園のグループ会社である株式会社SCC (以下、SCC) が担当し、2015 年 10 月以降におけるデバイスと提供基盤の決定から数か月で、構築と検証が進められました。その後、2016 年 4 月より、大学コースを選択する約 300 人の新入生へ Surface 3 を配付し、総合学習システム「PINE-Cloud」の運用を開始しました。

白木 氏は、短期開発ながら問題なくサービス インできた背景として、日本マイクロソフトの製品で統一したことのメリットを挙げます。

「短期間で効率よく構築と検証を進めるために、日本マイクロソフト、SCC、電子開発学園の 3 者が密接に連携してプロジェクトを進めました。当学園からはセキュリティと信頼性の確保を強く依頼しましたが、基盤となる Azure 自体が高い信頼性を持っていたことと、SCC と日本マイクロソフト間で過不足なく構築していただいたこともあり、非常にスムーズに進行できたと思います。基盤とデバイスがそれぞれ別の製品ベンダーだった場合、ここまでスムーズには進行できなかったでしょう。また、構築面だけでなく、運用方法や使い方の提案などについても、日本マイクロソフトから具体的なアドバイスがあったことが印象に残っています。何か質問すれば必ず回答を得られましたので、不安を抱くことなくサービス インを迎えることができました」(白木 氏)。

さらに、日本マイクロソフトの製品で環境を揃えたことが、サービス稼働後においてもさまざまなメリットを生み出していると言います。

「サービス インしたばかりではありますが、学生や講師からは好意的な意見が多く寄せられており、既に大きな効果を感じています。当初は『すきま時間での学習』を主な効果として想定しておりましたが、Surface 3 や Office 365 といった最新の IT 環境を提供したことで学生のモチベーションが向上し、自宅での学習意欲も高まったという声が上がっています。学習意欲の向上は、授業参加の積極化や講師とのコミュニケーションの活発化につながりますので、今後、大学コースの学習効果は大幅に高まることが期待できるでしょう」(恵藤 氏)。

「これまで存在していた、学生とのコミュニケーションにおける課題が解消できたことも、大きな効果です。というのも、必ずしも全学生が PC や携帯電話を持っているわけではないため、全学生と確実に連絡をとる手段を講じることができなかったのです。Surface 3 と一緒に Office 365 のメール アカウントを付与したことは、この課題を解決すると同時に、今後コミュニケーションを活性化するための基盤も整備することができたといえます」(白木 氏)。

学生はネットワークを経由することで、場所にとらわれず、PINE-Cloud 上で学習を行うことができる

Surface 3 の配付と同時にアカウント提供した Office 365 により、学生とコミュニケーションを行うための手段も確保できた

また、デバイスと OS の持つ優れた操作性が、Surface 3 の活用シーンを想像以上に広げていると、恵藤 氏は笑顔で語ります。

「タブレット デバイスはビューワーというイメージを持っていましたが、遠隔地どうしで同一の教材を見ながらディスカッションしたり、キーボード入力によるプログラミング作業で活用したりと、学生はさまざまな用途で活用しています。操作性が高いという Surface 3 の特徴も起因だと思いますが、キーボード接続の有無で自動的にタブレット モードとキーボード モードが切り替わる Windows 10 の利便性も、学生が積極的に活用している理由だと思います」(恵藤 氏)。

4 年後には大学コースに通う全学生への配付が完了予定。さらなる活用が見込まれる PINE-Cloud について、今後はその利便性を追及していく

PINE-Cloud によって、今後さまざまな学習効果の向上が期待される電子開発学園。同学園に入学する大学コースの新入生には毎年 1 人 1 台の Surface が配付され、4 年後には、大学コースに通う全学生への配付が行われる予定です。

利用者が年々増加し、さらなる活用が見込まれる PINE-Cloud について、同学園では「PINE-Cloud と Office 365 の融合」と「アカウントの統合」という 2 つの取り組みを構想しています。

「PINE-Cloud と Office 365 には、部分的に重複する機能があります。たとえば PINE-Cloud に備わっているストレージや掲示板、メッセージといった機能は、Office 365 のカレンダーや OneDrive、Skype などで代用できます。現場のニーズを聞きながら機能を統合し、使い勝手と運用負荷を最適化していきたいと思います。また、現在は、PINE-Cloud と Office 365 の 2 つのアカウントを運用していますが、Azure Active Directory などを用いることで、シングル サインオンの環境構築やアカウント統合も進めていく予定です」(白木 氏)。

さらに、今回のプロジェクトをきっかけに発足した検討委員会では、PINE-Cloud に次ぐ取り組みについても今後検討していくと、恵藤 氏は意気込みます。

「電子開発学園は、教育現場における ICT 利活用を、他校に先駆けて実践してきたという自負があります。これからも IT 業界に優秀な人材を送り込むことを使命として、先進的な取り組みを進めていく予定です。PINE-Cloud の取り組みを通じて、日本マイクロソフトが、当学園が目指すチャレンジについて『実現する方法を一緒に探してくれるパートナー』であることを強く感じました。今後の取り組みについても、日本マイクロソフトの協力を仰ぎながら常に模索し、実践していきたいと考えています」(恵藤 氏)。

ユーザー コメント
「サービス インしたばかりではありますが、学生や講師からは好意的な意見が多く寄せられており、既に大きな効果を感じています。当初は『すきま時間での学習』を主な効果として想定しておりましたが、Surface 3 や Office 365 といった最新の IT 環境を提供したことで学生のモチベーションが向上し、自宅での学習意欲も高まったという声が上がっています。学習意欲の向上は、授業参加の積極化や講師とのコミュニケーションの活発化につながりますので、今後、大学コースの学習効果は大幅に高まることが期待できるでしょう」

電子開発学園
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本部長
恵藤 健二 氏

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