現在、世界の50%のソフトウェアはレガシーアプリケーションだが、そのうちの80%が今後2年以内にモダナイズすると言われている。今日のビジネスに必要とされるスピード感に見合うDevSecOpsで業務をモダナイズするためには、マイクロサービス化の重要度が高まっている。加えて、コンテナをどう活用するのか、実際に使用する際にシステム上でのモニタリングはどうあるべきなのかなどの検討も求められる。

そうしたなか、2023年11月9日に「マイクロサービス化でモダナイゼーションを実現する」と題したオンラインセミナーが開催された。セミナーには、レッドハット、Splunk、日立ソリューションズの3社が登壇。3つのセッションを通して、モダナイゼーションに向けたジョイントソリューションの活用法、それを踏まえたモダナイゼーションのベストプラクティスが紹介された。

VUCA時代のビジネスにおいて、マイクロサービスが重要な理由

最初のセッション「Red Hatが考える”マイクロサービスによるモダナイゼーション”」では、レッドハット株式会社 テクニカルセールス本部 エコシステムソリューションアーキテクト部 ソリューションアーキテクト 稲葉 海斗氏が登壇し、マイクロサービスが必要とされる背景や、マイクロサービスのもたらすメリットとその必要性について言及した。

  • 登壇する稲葉氏

近年のビジネスシーンはVUCAの時代に突入した。変化が激しく予測が困難な状況に適応するためには、DX(デジタル・トランスフォーメーション)によってデジタル時代に対応した組織や事業に変革していく必要がある。稲葉氏は、「DX推進にはクラウドネイティブアーキテクチャの採用が重要であり、その中核を成すのがマイクロサービスアーキテクチャなのです」と強調した。

従来のアプリケーションは、多くのサービス機能を1つのユニットとして構築する、モノリシックアーキテクチャが主流であった。この手法だと、1つの機能に手を加えようとしたときに、それぞれの機能が密接に関わりあっているため、全体へ影響を及ぼすこととなる。

一方、これと対になるマイクロサービスアーキテクチャとは、独立した業務機能(サービス)ごとにアプリケーションを分割し、コンテナ化することで、疎結合なシステムを構築する仕組みを言う。このアーキテクチャを用いることで“分割化”が叶えられ、それぞれの機能を独立して動かすことができる。それによって、市場への投入時間の短縮や対障害性の向上、メンテナンス性の改善、優れたスケーラビリティ、容易なデプロイ、オープン性の向上など多くのメリットを得ることができるのだ。

  • モノリスとマイクロサービスの比較図

しかし、マイクロサービスアーキテクチャにも弱点がある。それは、メリットである“分割化”によってもたらされる、開発のオーバーヘッドや運用工数の増大、トラブルシューティングの複雑化などだ。これらの課題を解決するのが、コンテナの開発・管理・スケーリング・ネットワーキングの自動化を実現する“コンテナオーケストレーション”である。

「当社で提供している、クラウド開発プラットフォーム『Red Hat OpenShift』は、コンテナオーケストレーションツールであるKubernetesをベースにしています。その上にエンタープライズに求められるさまざまな機能を付随しており、コンテナ化されたアプリケーションのセキュリティ、自動化、オーケストレーションをトータルで支援します」(稲葉氏)

  • RedHat OpenShiftの構成図

Red Hat OpenShiftの主な特長としてまず挙げられるのが、堅牢化されたコンテナ実行環境だ。コンテナスタックのあらゆるレベルとアプリケーションサイクル全体のセキュリティに重点を置いた機能を備える。また、コンテナアプリケーションを本番適用するために必要な機能をトータルで提供するとともに、「Operator(自立運用のフレームワーク)」によるシステム全体の自立運用化を実現する。

IDCのレポートによると、Red Hat OpenShiftの導入によりアプリケーションの開発サイクルが29%迅速化し、投資回収期間も10カ月に短縮するなど、さまざまな効果が確認されている。

「レッドハットでは、Red Hat OpenShiftをはじめ、モダナイゼーションに対してトータルでサポートする製品群を提供しています。モダナイゼーションの課題に直面しているのであれば、ぜひ我々にご相談ください」と稲葉氏はメッセージを送り、セッションを締めくくった。

複雑なクラウドネイティブ環境の問題検知と原因特定を叶える「オブザーバビリティ」

続くセッション「Splunkで実現するオブザーバビリティ」では、Splunk Services Japan合同会社 技術統括本部 ソリューション技術本部 Senior Sales Engineer, Observability 大谷 和紀氏が登壇。新たな概念であるオブザーバビリティのポイントや、Splunkだからこそ実現できる真のオブザーバビリティについて、事例を含めて解説された。

  • 登壇する大谷氏

前セッションでも語られた通り、マイクロサービス化によって得られるメリットは多いが、“分割化”されることで非常に複雑な環境となる。

「複雑化した環境では、どこで問題や障害が発生しているのかを従来のモニタリングで特定することが難しくなってきています。これを解消するために今注目を浴びているのが、新たな概念『オブザーバビリティ』です」(大谷氏)

従来のモニタリングは、インシデントが検知されるとアラートを発報し、原因調査は管理者が行う必要があった。一方でオブザーバビリティは、インシデント検知とアラート発報にくわえて、管理者による“迅速な原因の特定”を可能にする。複雑な環境下における未知のインシデントに備え、何かが起きたときに原因を解明できるようにシステムの全体像を把握できる状態にしておくのがオブザーバビリティの考え方だ。

Splunkが提供する「Splunk Observability Cloud」は、クラウドネイティブ環境でのエンドツーエンド観測を実現。複数の製品群から構成され、インフラやバックエンドのアプリケーションからブラウザ、モバイルアプリケーションまで網羅的かつ高度なモニタリングを実現し、インシデントを効率的に管理する。

特にクラウドネイティブ環境において重要となるのが、「分散トレース on APM」という機能だ。これにより、アプリケーションの動作状態をリアルタイムで可視化し、速やかに分析することが可能となる。

さらにもう一つの特長として、業界標準のOpenTelemetryが用いられている点が挙げられる。これによって、自由度の高い操作やカスタマイズでデータ収集・分析が可能になる。

  • Splunk Observability Cloudの構成図

    複数の製品群から構成される「Splunk Observability Cloud」

セッション内では、ある小売業でのケーススタディも紹介された。この事例では、Red Hat OpenShiftとほかのAPMソリューションを併用していたが、監視が不十分であったため、「Splunk Infrastructure Monitoring」と「Splunk APM」を採用。これによってクラウドネイティブ環境の可視化と統合管理を効果的に行える環境を実現した。その結果、システムの可用性と信頼性を改善するとともに、運用の効率化や顧客体験の向上が達成されたという。

最後に、大谷氏は「コンテナやマイクロサービス環境では、従来よりも変化が激しく、未知の状況に備える必要があります。そのためには、テレメトリーデータを一箇所に集め、関連付けることなどが重要であり、Splunkのオブザーバビリティ製品群がこれを実現するための鍵となります」と強調した。

モダナイゼーションを成功に導く5つのベストプラクティス

最後のセッションとなる「モダナイゼーションを推進するRedHatとSplunkの連携ソリューション」では、株式会社日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部 スマートワークソリューション本部 インフォメーションシェアリングソリューション部 主任技師 桐生 貞義氏が登壇した。このセッションでは、まずDXの中核となるモダナイゼーションの成功要因について、具体的なアプローチとソリューションが提示された。

  • 登壇する桐生氏

桐生氏は「モダナイゼーションに成功している企業の傾向を調べると、共通してある5つのプラクティスを踏んでいるということがわかってきました。それらがモダナイゼーションの成功に結び付いてくると考えられます」と述べた。

5つのプラクティスとは、以下の通りだ。

  1. 監視とアラートはサービスを運用するチームが設定できる
  2. アプリケーションやサービスを構築するための導入パターンを再利用できる
  3. アプリケーションやサービスを構築するためのテストパターンを再利用できる
  4. あるチームが提供するツールの改善に他のチームが貢献できる
  5. 構成管理ツールで構成を管理する

「小さな組織で迅速にDXを推進していく動きが多いなかで、すべてのプラクティスは組織全体の“共有”を促進していることが明らかとなりました」と語った桐生氏は、モダナイゼーションにおける“共有”の重要性を強調した。

プラクティス1~4においては、チーム間が協力し情報共有を促進することが不可欠であり、そのためには、組織文化の変革が必要となってくるという。
基本的な導入ガイダンスとして、5つのプラクティスは大きく3つのステップに分けられる。

ステップ1…「1. 監視とアラート」、「2. 導入パターンの再利用」、「5. 構成管理」
ステップ2…「3. テストパターンの再利用」「4. ツールの改善に他のチームが貢献」
ステップ3…各組織に応じた対応

モダナイゼーションを成功させた企業の傾向として、特に最初のステップの3つのプラクティスを積極的に実施しているという。

最初のステップの実現を強力に支援するソリューションとして、前段のセッションで提示されたレッドハット「Red Hat OpenShift」とSplunkの「Splunk Observability Cloud」が挙げられた。
具体的には、Splunk Observability Cloudが「1. 監視とアラート」の機能を提供し、Red Hat OpenShiftは「2. 導入パターンの再利用」と「5. 構築管理」を実現する。

日立ソリューションズは、これら2つのサービスを連携させたソリューションを提供しており、企業の効果的、効率的なモダナイゼーション成功を叶えるためのサポートを行っている。

最後に桐生氏は、「モダナイゼーションへの取り組みは、組織によって異なるものの、初期の段階で小規模な実証実験(PoC)から始めることを推奨します。日立ソリューションズでは、レッドハットとSplunkの連携ソリューションを通じて、企業のモダナイゼーション支援を行っているので、ぜひお問い合わせください」と視聴者にメッセージを送り、セッションの幕を閉じた。

お問い合わせ先

統合ログ管理プラットフォーム Splunk
https://www.hitachi-solutions.co.jp/splunk/

Red Hat ソリューション
https://www.hitachi-solutions.co.jp/redhat/

[PR]提供:日立ソリューションズ