Tシャツ・サイトのThreadlessで「CORNELIUS loves Threadless」が開催されている。お題はコーネリアスの新譜のタイトルである「Sensuous」。締め切りは7月17日だ。これまでに応募された作品の一覧はココ。賞品は現金1,500ドル、コーネリアスのサイン入りCDのほか、MOTO ROKRやムーグのテルミンなど盛りだくさんだ。もちろんThreadlessで製品化もされる。

売れないTシャツはつくらない

Threadlessは、ネットでTシャツのデザイン・コンペティションと販売を行っているサービスだ。「CORNELIUS loves Threadless」はテーマが設けられた特別なコンペで、通常はテーマ自由のコンペがほぼ毎週行われている。コンペに参加するにはThreadlessにTシャツのデザインを登録するだけ。それを見たThreadlessユーザーが5つ星で評価し、コメントを書き残す。そして毎週9つ前後の作品が選ばれる。デザイナーは賞金を得られるが、それ以上のメリットがThreadlessでの製品化だ。Threadlessは男物のTシャツを1枚15ドル、女の子用と子供用を17ドルで販売している。一般的な知名度は低いが、根強いリピーターが多く、昨年は1,600万ドル相当のTシャツを販売した。

面白いのは7年前にThreadlessを立ち上げたのが、高校を卒業したばかりの若者2人だったということ。陳腐なデザインのTシャツがたくさん売られているのを目にし、それらが売れ残ったコストは自分たちが気に入ったTシャツの値段に上乗せされていると思った。ならば、ムダなTシャツを作らずに、人々から支持されたTシャツだけをプリントすれば、より多くのかっこいいTシャツを安く流通できるはず、と考えた。米国でちゃんとデザインされたTシャツは20ドル前後。少数しか作られないThreadlessのTシャツが15ドルというのは安い。セール時は10ドルで販売される。Tシャツの製造コストはデザインによって異なるが、最も安いタイプで1枚4ドル程度だという。

今年の春のセールでThreadlessから購入したTシャツ2枚。動物名のイニシャルのTシャツは絵柄のアイディアについて話しかけられることが多い

しばらくThreadlessの販売セクションをチェックしていただけると分かるが、ほとんどのTシャツが短期間で売り切れてしまう。関心してしまうほど、キレイに売れる。ポイントは、製品化する作品選びにある。メンバーコミュニティの投票によるランキングを採用しているが、5つ星評価のスコアが高い作品がそのまま製品化されるのではない。5つ星評価をベースに300作品程度を選び出し、さらに運営者がユーザーからの評価やコメント、「買ってみたいと思う」にマークされた数などを総合的に検討して、最終的に製品化する作品を決めるのだ。たとえば5つ星評価のスコアについても、最終選考ではまんべんなく高スコアで平均が高い作品より、むしろ平均は低くとも0星と5星が多い作品を評価したりするそうだ。無難にまとまっているよりも、インパクトの強い作品の方が売れるのだという。

サービスの土台は投票・コメントしてくれるメンバーであり、参加を促進する方法もユニークだ。例えば、メンバーが購入したTシャツを着た写真をThreadlessに投稿したら1.50ドル相当のポイントをもらえる。それがTreadlessで採用されたら15ドル分のポイントになる。Threadlessギャラリーを見ていると時々、有名人がモデルになっているのを発見する。たとえば今は、Macエバンジェリストで知られるガイ・カワサキ氏の写真が掲載されている。

Tシャツ以外はトラブル続き

潜在的な購入者であるメンバーが気に入ったデザイン/アイディアに投票し、勝ち残った作品だけを製品化する──効率的で何にでも応用できそうなビジネスモデルと思うかもしれない。ところが、これがなかなか難しいようだ。Threadlessを運営するskinnyCorpは、Threadlessの手法を他のプロダクトに応用したサービスをいくつか展開しているが、いずれも苦戦しているのだ。たとえばインディ音楽を扱う15 Megs of Fameでは、メンバー投票で勝ち残った楽曲をレコードレーベルに売り込もうとしたが、うまく行かずにサービスをクローズしてしまった。OMG Clothingという、Tシャツにプリントするスローガンを募り、上位の作品をデザイナー・製品化するというサービスもあった。Tシャツを違った角度から扱ったのだが、サービスの焦点をしぼり過ぎてふるわず、結局はThreadlessに統合されてしまった。現在Naked and Angryというネクタイの柄を募るサービスは生き残っているが、存続が微妙な雰囲気だ。

運営者があの手この手で盛り上げているThreadlessに対して、その他のサービスはメンバーコミュニティの流れに任せきっているような雰囲気がある。突きつめれば、運営者はTシャツが大好きで、センスもあるのだ。矛盾しているようだが、コミュニティの意見を重視しながらも、売れるかどうかの最終的な判断は運営チームが独断的に下すところが、活発なコミュニティ活動につながっているのだろう。コミュニティの力を土台にしたサービスであっても、全てをコミュニティまかせでは盛り上がらない。チーフ・コミュニティ・オフィサーとなり得る存在が舵取りをしてこそ、コミュニティがビジネスに結びつくのは興味深いところだ。