本連載では、サーバやネットワーク機器が格安で手に入るリユースサービスの"使いどころ"を探るべく、実際に活用しているユーザの事例をいくつか紹介していく。今回は、データライブのリユースサーバを活用しているベッコアメ・インターネット ビジネスソリューション部 営業グループ リーダー 一宮弘典氏と、データライブ代表取締役社長の山田和人氏に対談していただいた。

ベッコアメインターネット


元々ISP事業を展開する企業として創設されたが、現在は、法人向けサービスに力を注いでおり、ハウジングサービスやホスティングサービスを自社回線を利用して格安で提供。ワンストップのきめ細かいサポートで、ユーザー企業から好評を博している。

http://www.bekkoame.co.jp/

ISPの草分けから法人向けサービスへ

古くからのインターネットユーザなら、「ベッコアメ・インターネット」という名前に聞き覚えがあるだろう。

同社は1994年にISP(インターネット・サービス・プロバイダ)として創業。この業種では先駆的な存在である。

だが、「キャリア(回線事業者)のISP事業への直接進出やYahoo! BBのモデム配布などによりユーザ数が減少」(一宮氏)した結果、2004年にプロバイダ事業とコンシューマ向けホスティング事業をGMOインターネットに売却。現在は、法人向け事業に特化し、DCをメインに事業を展開している。

台東区にある社屋の2フロアをDCとして使用しているほか、iDC(インターネット・データセンタ)を借り受けての再販も行っている。ISP時代からバックボーン回線を保有しており格安な料金でハウジングやホスティングサービスを提供できるうえ、技術に詳しい社員を抱え、ワンストップのサービスを実現できる点などが同社の強みだ。

今回、山田氏との対談をお願いした一宮氏は、営業部門に所属し、サービス企画を主な業務とする営業マン。ただし、「お客様の要件に合わせて機器を購入しなければならないことがありますし、エンジニアでは費用面で判断しかねるケースもあるため、仕入れ交渉に関わることもしばしば」(一宮氏)と言い、サービス企画に留まらず、機器の仕入れに携わることも多いようだ。「サーバの組み立てを行うこともあり、通常の営業職では得られないような人脈もできて面白い」(一宮氏)と語る、ユニークな人物である。

―大量のサーバを保有しているそうですね。

ベッコアメ・インターネット ビジネスソリューション部 営業グループ リーダー 一宮 弘典氏

一宮: 当社では早期復旧の観点から、予備機や代替機を常時保有しています。コスト面からリユース機器を充てることが多いのですが、品質面では新品と全く変わらないレベルですね。全体では300~400台のサーバを保有しており、そのうちリユースサーバは10数台です。

代替機という目的以外では、緊急に導入しなければならない場合などにリユース機器を購入することもあります。

―リユースサーバを選択された理由をお聞かせください。

一宮: 最近のサーバは、コア数を増やす方向で進化しているため、世代が1つ2つ変わっても、劇的な性能向上は期待できません。もちろん、これは実行するアプリケーションにもよるのかもしれませんが、2、3年前の製品であっても最新モデルと大差はないでしょう。

品質面に関しても、ベンダーさんの努力の甲斐あって、ずいぶん前から安定しています。 数年使った程度では、故障を危惧する必要もないのではないでしょうか。当社ではHP製のリユースサーバを多く使用していますが、中古ゆえに生じる問題は起きていませんね。

当社ではリユースサーバを、当社が提供するSaaS形態サービスのバックグラウンドとしても一部利用しています。

―ホスティングサービスの利用者が新品かどうかを意識することはありますか。

一宮: ユーザからすると、壊れずにきちんと使えればいいという発想になるので、割り当てられたサーバがリユースかどうかを聞いてくる方はほとんどいらっしゃいません。

メーカや機種を尋ねられるもまずありません。問い合わせがあるのは、サーバのスペックやOSの種類、ソフトウェアの構成といったところまでですね。

データライブ 代表取締役社長 山田和人氏

山田: DCを運営する企業の中にはノーブランドのサーバを採用されるケースもありますよね。そういういった意味では、お客様はハードウェアに対するこだわりはあまりなく、大切なのは、「スペックと使えるかどうか」なのでしょう。

なお、ノーブランドの新品サーバも確かにコストパフォーマンスが高いのでしょうが、リユース市場では、NECや富士通などの国産ベンダーのサーバがそれに匹敵するような価格、もしくはそれ以下で手に入ることが多くあります。今後は、こちらも有効な選択肢になるのではと考えています。

価格面に加え、納期の早さもメリット

―データライブを利用することになったきっかけをお教えください。

一宮: 東京IT新聞で、山田社長のインタビュー記事を見たのがきっかけです。それから、代替機の調達に対する考え方を大きく変えました。

これはベンダーにもよるのかもしれませんが、サーバの導入には、納期が読めないという問題があります。とりわけマイナーチェンジがあった際には、その直後に出荷が止まることがあり、納品が先送りにされるケースがあるのです。

そうした問題に悩まされているときに上記の記事を読み、問い合わせてみようという気持ちになりました。データライブさんは在庫があれば即時納入してくれますし、お互いの会社が近いため、緊急時には受け取りに出向くことも可能です。故障が発生してもすぐに代わりを用意できるパートナーがいるというのは、当社にとって大きな強みの1つになりますね。

例えば、以前、お客様向けに提供していたサーバが故障し、当日中に代替機を導入しなければならないことがあったのですが、この時はデータライブさんが仕入れたばかりのサーバを回してくれて、なんとか間に合わせてくれました。しかも、通常どおり、きちんと検品を行ってくれていたので、今でも安心して使えています。こういう人間的な対応がとてもありがたいですね。

山田: 営業スタッフには、きちんとした対応をするよう常に心がけさせています。とは言え、当社としては、当たり前の対応をさせていただいているという意識です。業界が未成熟であることから、当たり前の対応が目立っているのかもしれません。

ユーザ視点での調達に感謝

―価格や品質面以外にも、データライブに魅力を感じていらっしゃると聞きました。

一宮: 製品の購入に加えて、技術的な情報交換ができたり、特殊なパーツを仕入れてくれたりすることも魅力に感じています。例えば、筐体の前面を覆うプラスチックのパネルフィラーなどは、買いたくても買えないものなんですよね。そういったパーツも頼めば譲ってくれたりします。

山田: ありがとうございます。お客様からは「かゆいところの部品をよくそろえてくれている」と、おほめいただくことがあります。こうした部分は、うちならではのサービスかもしれませんね。

一宮: そのような姿勢に、「侠気」を感じますね。データライブさんは「お客様にどれだけのことができるか」を常に追求している会社だと思っています。通常の企業であれば損得勘定だけで動くところを、ユーザの立場に立って考えてくれているので大変ありがたいです。

―価格面ではいかがですか。

一宮: 当社にとっては魅力的な価格です。製品にもよりますが、私たちが購入しているモデルは、新品と比べてだいたい半額から4割くらいで購入しています。

山田: そうですね。ベッコアメ・インターネット様は、ホスティングという事業の性質上、2、3年前の比較的高性能の製品を購入されるケースが多く、そのあたりだと価格はだいたい新品の40-50%といったところになります。7、8年前のモデルであれば、さらに安価に提供できますね。

一宮: 代替機を提供する際には、お客様に通常提供しているものと同等、もしくはそれ以上の性能のものを用意しなければなりません。したがって、高性能のサーバを安価に提供してくれる相手を見つけておくことは、非常に大切なんです。

―リユース品の利用前と後で、イメージは変わりましたか。

一宮: 実は私はIT業界に従事するようになってまだ2年ほどなのですが、この業界に入ってきた当時は、故障時の対応について、安価な代替機を用意するというオペレーションに頼るよりも、ベンダーの保守サービスを利用すべきだろうとの考えを持っていました。

その後、今のサーバはあまり壊れないことがわかり、また、コストを抑えてサービスの提供料金を下げたいほうが良いとの考えに変わり、リユースサーバを積極的に導入しています。そもそも、ベンダーの保守サービスを利用するよりも、予備機や代替機を用意していたほうが、故障時により早く復旧できるんです。

山田: ベッコアメ・インターネット様を含め、DCのエンジニアは技術レベルが高いと、常日頃から感じています。ベンダーの保守にはあまり頼っていないようですよね。

一宮: 当社は回線からサービスまでをワンストップで提供して一元管理しているので、障害発生時の原因切り分けが容易なのです。

―最後に、データライブへの要望があればお聞かせください。

一宮: 当社とデータライブはお互いに距離が近いので、製品購入以外での付き合いも深めていきたいですね。

IT系企業と言えば、渋谷や六本木など東京の西部に脚光が当たりますが、秋葉原から浅草にかけてのエリアには、企業の数も多く、伸びる余地は十二分にあると感じています。今後は「東東京」をキーワードに浅草や秋葉原のIT業界における地位を向上していければ、うれしいですね。

山田: 当社もベッコアメ・インターネット様と手を携えて、地区全体の地位を向上させていけたら幸せです。