Q

部下と話をしている時、自分が部下の話を乗っ取ってしまっていることに気が付いてハッとすることがあります。つい黙っていられず、遮ってでも意見を言ってしまうのです。「傾聴することの大切さ」を聞くにつけ、「なぜ自分はちゃんと部下の話を聞けないのだろうか。これでは部下のやる気が育たない」と自己嫌悪に陥ってしまいます。何かいい対処法はあるでしょうか?(千葉県 NTさん)

A

上司がそのまた上司の話を遮ることはないでしょう。上司の話を部下が遮ったら、それこそ機嫌を損ねて大変な事態に発展しそうです。つまり、部下の話を遮ったとしても自分の立場に影響がないからこそ、思うままに介入できるのです。

どんな人でも相手を尊重していれば、その話に割って入ることなどできません。つまり、上司が聞く姿勢を変えなければ、事態は改善されないのです。

では、聞く立場としてはどのような意識を持ってばよいのでしょうか。多くの上司は部下が話す時間を"無駄な時間"ととらえている節があります。だから、それ以上聞いても無駄だという意識が働くわけです。

しかし、本当にそうなのでしょうか? 部下の話には、自身のプロジェクトやチームの業績を向上させるヒントが多くあるはずです。まず、部下の話から有意義な情報を"仕入れる"という意識が必要です。

例えば、雑誌の記者はインタビューをする時、取材対象者の話に適切な相槌を打ち、話し手を気持ちよくさせながらじっくりと聴きます。それは、インタビューを情報の"仕入れ"という大切な時間ととらえているからです。

良質な記事を書くにはより多くの良質な情報が必要ですから、間違っても話の途中で口を挟んで時間を浪費することなどはしません。逆に、話が脱線しそうになると、適切な質問を投げかけて自分が欲しい情報を入手できるよう修正をかけていきます。話を詳細に聞きながらの質問ですから、相手も決して不機嫌にはならないわけです。

傾聴とは、「熱心に聞くこと」です。何となくではなく、能動的に聞くことは簡単ではありません。しかし、教えるために聞くのではなく、「聞く(質問する)ために聴く」ととらえてはいかがでしょう。適切な質問をするのに必要な情報を集めるために取材をするというイメージです。適切な質問とは意外に難しいものです。

だからこそ、能動的に聴く意味が出てくるのです。ちなみに、「注意してきく」という意では、「聞く」よりも「聴く」を使います。部下の話を聴きながら質問を重ねていくことで、自身で様々な気付きを得ますし、場合によっては提案が生まれることもあるでしょう。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.7(2008年11月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。