今回は、当研究所が2011年9月22日~9月27日に実施した「スマートフォンでのネットショッピングに関する利用実態調査」の結果から、スマートフォンに対応したネットショッピングサイトの現状についての課題をレポートします。同調査はモバイル・インターネットWEB上で行われ、841人(うちスマートフォンユーザー213人)の有効回答をもとにした分析となっています。

スマートフォンECサイトで強化していくべきポイント、陥りがちなポイント

昨今スマートフォンの普及が急速に進む中、ネットショッピングサイトにおいてもスマートフォンの対応が重要になりますが、スマートフォンネットショッピングサイトの構築は上手くできていますか?

今回は、スマートフォンネットショッピングサイトにおいて、強化していくべきポイント、陥りがちなポイントについて考察したいと思います。

今回の調査結果で、ここ半年の間にスマートフォンでネットショッピングを利用したかを調査したところ、「利用した」と回答した人が45.5%、「半年以上前に利用した」と回答した人が4.7%と、合わせて50.2%の人がスマートフォンでネットショッピングを利用した経験があることがわかりました。

これらスマートフォンでネットショッピングを利用したことがあると回答した人を対象に、スマートフォンでネットショッピングを利用した際の満足点について調査したところ、以下の結果となりました。

これは実際にスマートフォンでネットショッピングを利用した際に、商品画像の確認もしやすく、タッチパネルによるスクロールができることにより操作もしやすく、よりPCサイトに近いインターフェースがスマートフォンならではのメリットだと思います。

また、その他フリー回答では「外出先でもわざわざPCを立ち上げる必要はなく、気軽に購入できる」という回答も見受けられ、スマートフォンでのネットショッピングは上記のような手間が省けるというメリットも、ユーザーが利用しやすい環境にいると言えるでしょう。

反対に、スマートフォンでネットショッピングを利用した際の不満点について調査したところ以下の結果となりました。

これらは限られたページ内で情報を埋め込まなければならないフィーチャーフォンサイトでのネットショッピングにも共通して言える点ですが、「ページ内のリンクヶ所が分かりづらい(18.6%)」という回答は、フィーチャーフォンサイトでは無い、スマートフォンサイトに限った課題ではないのでしょうか。

実際に筆者も商品説明などのテキストは非常に見やすいと思いますが、テキストとテキストリンクの違いが分かりづらいと感じることがあります。

これは私見になりますが、ページ内のテキストリンクをリンクと認識させるには、たとえばテキストリンクをボタン画像にするなど一目でリンクと認識させるための工夫がされていればユーザーも混乱することなく快適にネットショッピングを行えると思います。この点については実際にネットショッピングをする側の立場になって考え、見直す必要があるのではないかと思います。

約7割が「フィーチャーフォンでは商品画像が見にくいから利用しなかった」と回答

次に、スマートフォンにしてから初めてネットショッピングを利用したと回答した人を対象に、「なぜスマートフォンにする前のフィーチャーフォンでネットショッピングをしなかったのか」と質問したところ、「商品画像が見にくいから」と回答した人が72.7%と圧倒的な差をつけた結果となりました。

フィーチャーフォンサイトではスマートフォンサイトと比べ、商品画像を拡大して確認することができず、画質も低下します。フィーチャーフォンサイトとスマートフォンサイトでの違いが顕著に表れている結果と言えるでしょう。

ネットショッピングは見かけよりも中身が重要?

さらに、スマートフォンにしてから初めてネットショッピングを利用したと回答した人を対象に、利用した理由について質問したところ、「操作がしやすいから(63.6%)」「商品画像が見やすいから(27.3%)」「テキストが読みやすいから(22.7%)」という結果となりました。

上記の結果は、商品の画像が見づらいなどのフィーチャーフォンサイトの問題点も解決されているため、スマートフォンユーザーがネットショッピング利用に至ったのだと考えられます。

また、筆者が個人的に見やすくて利用しやすいと思うスマートフォンショッピングサイトは、若い女性向けに圧倒的な支持を受けているファッション通販サイト「夢展望」です。

夢展望のスマートフォンサイトは、トップページを開くと商品がジャンルごとに分かれていて非常に見やすく、また、商品画像も様々な角度で複数撮影されており、拡大・縮小が可能でより商品の形や色のイメージがしやすくなっています。このような工夫は、実店舗で実物を手にして商品を選ぶという感覚を非常に上手く再現しています。

実際に夢展望の広報担当者に、スマートフォンサイトからの売上について伺ったところ、2010年12月時点では1%だったが、現在では15%にまで急増していることが明らかになりました。これは、昨年から女性のスマートフォン所有率が伸びていることから、利用ユーザーがフィーチャーフォンからスマートフォンへと移行している傾向にあると考えられます。

夢展望のスマートフォンサイトでは、若い女性にも分かりやすいサイトになっていることや、購入までの流れがスムーズなことも支持を受けている点が成功の要因ではないでしょうか。

スマートフォンネットショッピングサイトを構築するにあたり、見た目がオシャレでカッコイイショッピングサイトを作る傾向にあります。しかし、本当にユーザーが求めていることは、ショッピングサイトの構築がシンプルで分かりやすくできているかなど、顧客中心の視点で考えることの方が転換率やサイトの顧客ロイヤルティを高めることに繋がるのではないかと筆者は考えます。

調査テーマに関するご要望については、Facebookの当研究所ファンページで受け付けていますので、お気軽に声をかけてください。

今回引用した調査データは当研究所のWebサイトで一部公開しています。

<本稿執筆担当 : 大江 ふみえ>

著者紹介

MMD研究所

MMD研究所(モバイル・マーケティング・データ研究所)は、モバイルユーザーマーケットのリアルな動向を調査・分析し、社会へ提供することを目的として2006年9月に設立されたマーケティングリサーチ機関(運営は株式会社アップデイト)。本コラムでは、同研究所による調査データをもとに、ヒットにつながる効果的なマーケティング手法について考察していきます。