昨今、『MAとは何か、MAが提供する価値とは?』と問われることが多いですが、。最近の私の定義は「MAとは、ユーザーのWEB上の世界での行動とリアル世界での行動を一元管理し、マーケティングプロセスの一部または全部を自動化するツールである」です。

マーケティング活動の中でもデジタルマーケティングに求められる要求が多くなってきているのは、みなさんご存知の通りです。ユーザーの「インターネット上の世界での行動」と「リアル世界での行動」を別のものとしてとらえるのではなく、それぞれの世界をシームレスに繋げ評価する事が重要になってきています。

以下は、かつてのリアル世界を中心としたマーケティング活動に、ダブルファネルの要素をかけ合わせたものです。自動車や電化製品などの購買活動を想像して頂ければ、想像がつきやすいかもしれません。

MAについてご理解頂いている方であれば、もうこの図を見ただけで何を示しているのかおわかりだと思います。1990年代~2000年頃のマーケティング活動は、ほとんどがリアルの世界だけで完結するものでした。B2Cにおいて、例えば電化製品または自動車でも、テレビや新聞、またWEB上で商品を「認知」した後は、すぐにリアル店舗へ訪問し販売員や営業マンと話をし、その場で意思決定して購買をする。意思決定まで時間がかかる商材であればその場で紙のカタログなどを預かり、後日営業マンと電話やメールでやりとりをするという流れになると思います。

また、購買後にも、その製品のメンテナンスやアップデートに関するご案内が郵送で届きます。評価がよければ、さらに口コミで拡散するというモデルでした。ファネルの下部、リレーションシップマネジメント以下の部分は非戦略的な要素が多く、マーケッターからも優先度を下げられがちであったことはいうまでもありません。

この図にリアルの世界とインターネットの世界、そして、この非戦略的な部分を落とし込んだものが以下の図解になります。

この図にリアルの世界とインターネットの世界そしてこの非戦略的な部分を落とし込んだものが、以下の図解になります。

一方で、現代のマーケティング活動は、全く同じ商材であっても劇的に変化しています。以下の図はデジタル世代のマーケティングであり、上記の図と比較して頂くと明らかな差に気づかれると思います。

リアル店舗が無い中で、B2Cで商品を売るなんて1990年代には考えにくかったことが、現代ではスタンダード化しています。たとえば高価な自動車を買う場合であっても、かつての購買プロセスとは大きく違います。リアル店舗に訪問する前に「どの車を買うか」という意思決定が70%ほどまで行われているということは、さまざまなマーケティング系メディアでも言われていることです。WEBで認知し、WEB上で顧客登録をし、資料をダウンロードし、ユーザーの口コミを見て、SNSでユーザーと意見を交換し、それから来店して試乗する、という流れのほうがスタンダードなのかもしれません。

私も個人的に最近TESLAを購入しましたが、テスラの販売プロセスは、これまでの自動車ディーラーとは一線を画すものでした。購入前に記載したブログがこちらです。

■TESLAのマーケティングを体感してみた

アラートの意味

前置きが長くなりましたが、今回のテーマである「アラート(イベント通知)の重要性」は、ここにあります。アラートとは、リードがAの行動をしたら特定のメールアドレスなどに何らかの指示を出す、という機能になります。MAツールの中にもアラート機能が無いものが稀に存在しますが、今回取り上げるMarketoではアラートは存在します。

アラートは、リアルの世界とデジタルの世界を繋ぐことに大きく寄与します。たとえば、リードがWEB上でフォームに個人情報を入力して資料をダウンロードしたら(←インターネットの世界)、営業にアラートを送って電話をかけてもらう(←リアルの世界)ということが可能です。仕組みは以下の通りです。

  • アラート通知の設定1:スマートリストと呼ばれる、起動条件設定を設定します。この画面の場合は『特定のメール「20160518_事例ご紹介メール」というメールを、(匿名ではない)リードが開封したら~』 という条件設定になります

  • アラート通知の設定2:項番【1】の『~したら』の続きをここで設定します。ここでは『20160518_事例ページ案内メール開封通知』というメールを、セールス所有者へ送信するという設定になります。これで『リードが【1】したら【2】を実行する』という文法でプログラムの設定ができます

  • アラート通知の設定3:プログラムの実行頻度条件を最後に設定します。リードがメールを何度も開いたら、何度でも通知が来るほうがよいのか、一回通知がきたら、以降は送らないほうがよいのかは業務によって変わるため、適時変更してください

  • アラート通知の設定4:アラートメールテンプレートの作成画面です。この時「ただ開封された」だけの情報ではなく、出来る限り「メールで要件が完結するように、必要な情報を盛り込む」必要があります。弊社の場合は、無味乾燥な文面にならないように、対面形式の文面を記述しています。Marketoのデータベースにある必要情報をメール文面に埋め込んでいるため、具体的な指示を記述することで、コミュニケーションコストを軽減させることができます

この仕組を使うことによって、デジタルとリアルがシームレスに繋がります。あとは、私たちマーケッターのアイデア次第で、いかようにでもコントロール可能になります。以下に、いくつかの例を示しておきます。

①(ECの場合)商品購入ページでかご落ちした瞬間に、インサイドセールスにアラートを出して口頭でセールスをする。

②特定のWEBページを指定回数以上見た人がいた場合、その人のデモグラフィック情報(前回の連載に記載)が指定エリアの担当のフィールド営業にアラートを出し、そのまま飛び込み訪問をしてもらう。

③特定の製品ページを特定回数以上見たにも関わらず、24時間以内に購買に至らなかった人の場合、営業事務スタッフ等にアラートを出して特定の製品のサンプルを送付する。サンプル受領後に再度WEBページを見たことがわかった場合、営業にアラートを出してすぐに電話するように指示をする。

④応募者に対し、こちらが内定を出したあとの返答待ちの期間において、応募者が自社WEBサイトを閲覧していたタイミングで採用担当者にアラートを出し、メールや電話等でその後どうか、というフォローをする。社員の声等のページなど、深く見ていた場所に応じて、入社後の不安を解消するトークをする。

など、アラートを活用することによって、営業活動だけではなくすべてのオンライン活動とオフライン活動をつなげることが可能となります。

著者プロフィール

永井俊輔

1986年、群馬県生まれ。2009年に早稲田大学を卒業後、株式会社ジャフコに入社。M&Aやバイアウトに携わった後、株式会社クレストへ入社。2016年より代表取締役社長に就任。入社後、CRMやMAを活用して4年間で売上を2倍に拡大させ、クレストをサイン&ディスプレイ業界の最大手に成長させた。その一方、起業家として成熟産業にITを組み合わせて新たな価値を生み出し、生涯に100の企業を立ち上げることを目標としている。「デジタルマーケティング格差がゼロの世界を作りたい」という思いから、2015年10月にグリードナーチャリング株式会社を創業。2017年には初の書籍となる「できる100の新法則実践マーケティングオートメーション