デザインの仕事に携わっていれば一度は経験するであろう仕事がロゴデザインです。ロゴ(ロゴタイプ)は、対象となる企業やサービスを抽象的もしくは直接的なメッセージを盛り込んだ文字をビジュアル化して表現したものです。見たときのインパクトを求められることもあれば、汎用性、柔軟性が必要とされる場合もあり、デザインの課題も予め設けられていますが、同時にそれがロゴデザインの面白さといえるでしょう。

ロゴデザインのコツは、ひたすらスケッチをするところにあります。筆者も学生の頃、ロゴデザインのクラスを受講したことがありますが、ひとつの課題に対して最低50のアイデアをスケッチすることが条件となっていました。ここでいうスケッチは、サムネイルのような小さいものでよいので次々とアイデアを描いていくプロセスを指します。この段階ではあまりディテールには拘らず、まるでおもちゃ箱をひっくり返すかのようにアイディアを思いのままに描いていくとよいでしょう。たくさん描いても結局最初に出したアイデアがよかったと思うときもあるかもしれません。それでも大量のアイデアを出し切るというプロセスを経ることによってのみ生まれるデザインもありますし、出し切ったからこそ最初のアイデアがよいとさらに自信をもてる場合もあります。

アイデア出しの作業はパソコンですることもできます。しかし、パソコンでアイデア出しを行うと、異なる書体の検討や絵の配置の調整といった細かいところがつい気になって、アイデアを出すというより作業に変わりやすい側面があります。スケッチは、ディテールではなく、全体的なイメージや思い描いているアイデアを漠然とした形でアウトプットするので、アイディア出しをするのであれば、パソコンで行うより手書きのほうが適しているといえるのです。

しかし、最終的な納品物としてロゴを仕上げる段階までパソコンは必要ないかといえば、そうではありません。従来、ロゴデザインのインスピレーションを得る手段といえば書籍や雑誌であったり、散歩をして周りを観察するような行動だったと思いますが、オンラインでも多くのロゴデザイン関連の情報を得ることができます。また、ロゴをテーマにしたコミュニティサイトが幾つも立ち上がっており、デザイナーが作ったたくさんのロゴをネット上で閲覧することもできます。LogosauceLo8osLogopondは、そういったロゴデザインを中心にしたコミュニティサイトです。会員になれば、コメントや採点、お気に入りのロゴを自分のコレクションに追加といった機能が使えるようになるほか、自分が作ったロゴをサイトに掲載することができます。非会員でもすべてのロゴを検索、観覧することが可能で、いずれのサイトも最近追加されたロゴをRSSで配信しているので、RSSリーダーをロゴのインスピレーションを得るギャラリーにすることも可能です。

カスタマーサービスのASPを提供しているUserScapeのブログではロゴがどのようにデザインされたのかプロセスをみることができます。スケッチブックには様々なコンセプトが書き込まれています

logosauce、lo8osは、ユーザーがデザインしたロゴを観覧、評論できるコミュニティサイト。共に最近投稿されたロゴのRSSを配信しています

Logopond でも他のサイトと同様、人気ロゴを見るページがありますが、こちらではタイポグラフィーや配色などデザインの性質によって異なるベストが掲載されています

こうしたギャラリー系のサイトを巡回するだけでなく、最近のトレンドを調べる上でもWebは大変役に立ちます。例えば、Brand Newというブログでは、企業ロゴのリデザインを紹介しており、コメント欄には興味深いディスカッションが展開されています。従来のロゴと今のロゴが比較できるのでどのようにロゴが変化しているのか、そして多くのロゴのリデザインを見ることで、どういうロゴデザインが今求められているのかを知ることができます。もちろん、リデザイン後のほうが前より優れているとはいえないケースもあり、ロゴの魅力とは何だろうと改めて考えさせられるサイトといえます。

様々なロゴのリデザインを紹介するブログ「Brand New」。紹介されている記事の内容もロゴがどのような経緯でできたのか紹介されている場合もあり興味深いのですが、毎回多く残されているコメントを読むのも面白いです

小滴、スパイラル、影など15種類の特長と例が幾つか挙げられているロゴトレンドに関する記事。多くのロゴを見ることで気付かされることもきっとあるはずです

今のロゴデザインのトレンドを知りたい方はGraphic Design USAが掲載している「15 Trends Taking Shape in Logo Design」という記事が参考になります。2003年の記事なので少し古いのですが、今にも共通しているロゴデザインの15のトレンドとその例がまとめられています。例えば、虹色のような透明感のあるものやエコを意識したグリーンを基調にしたロゴは今でもよく見られるトレンドです。こうしたトレンドに合わせるのもよいですし、あえてそこから逃れてデザインを考えるのもよいのではないでしょうか。

ロゴを作るプロセスは長く険しいものですが、こうしたインスピレーションを得るための情報を集めることがそのプロセスを楽しくしてくれるかもしれません。