2022年10月13日、トマト由来の酵素を用い自然界には存在しないバイオポリマーの合成に成功してきた住友ゴムは、本来の先頭モノマー以外のモノマーでもバイオポリマーが合成可能であることを発見したと、プレスリリースで報じた。この研究成果は、タイヤの性能向上に大きく寄与するものだという。では、タイヤの性能向上に貢献するバイオポリマーとはどのようなものなのだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

夢の低燃費タイヤ開発につながるバイオポリマー

住友ゴムは、東北大学の高橋征司准教授、金沢大学の山下哲准教授、埼玉大学の戸澤譲教授らと共同で、独自に開発したトマト由来の酵素である改変トマト由来酵素を触媒とすることで、ポリマーの先頭モノマーを選択できることを発見し、まったく新しいバイオポリマーの合成に成功したことを発表した。

  • 改編トマト由来酵素とタイヤ性能向上に有効なモノマーを組み合わせ、新しいバイオポリマーを開発した住友ゴム

    改編トマト由来酵素とタイヤ性能向上に有効なモノマーを組み合わせ、新しいバイオポリマーを開発した住友ゴム(出典:住友ゴム)

では、具体的にはどのような合成反応なのだろうか。下の図をご覧いただきたい。

  • 酵素を触媒として用いた合成反応のイメージ

    酵素を触媒として用いた合成反応のイメージ(出典:住友ゴム)

例えば、通常の天然ゴムの合成反応であれば、天然ゴム合成酵素を触媒とした場合、天然ゴムのポリマーには、先頭モノマーが上図のようについて合成反応が進む。また、改変トマト由来酵素を用いると、天然ゴムと同じ鎖長を保ったままで自然界に存在しないバイオポリマーを作ることができるという。さらに、これまでの先頭モノマー以外のモノマーでも、この改変トマト由来酵素を用いることで、天然ゴムと同じ鎖長を保ったままで合成できることも発見したのだ。

なお、この研究成果は、2022年10月9日から12日(現地時間)にアメリカ・ボーゼマンで開催された「The 33rd the Annual Association for Advancement of Industrial Crops (AAIC) meeting」で発表された。

これまで、住友ゴムらの研究チームは、トマト由来の酵素についての研究も重ねてきている。例えば2022年3月3日に発表された、大型放射光施設「Spring-8」を活用することでトマト由来の酵素の構造解明と機能改変に成功した研究成果は、今回の研究成果にも大きく寄与していることだろう。

いかがだったろうか。今回の研究で合成に成功したバイオポリマーには、タイヤ性能向上に有効な先頭モノマーを選択・使用しているという。今後、バイオポリマーにおける先頭モノマー選択の研究を進めていけば、2040年代には、さらに低燃費のタイヤが開発できるかもしれない。そして住友ゴムは、未来のタイヤで持続可能な社会の発展に貢献していくことだろう。