最近、SNSに星の写真をよく見かけるようになりました。スマートフォン(スマホ)の新しい機種がこぞって星空を写せるモードを採用したためですな。初期の写メやスマートフォンでは、星は全く無理だったのですが、15~20年かけてここまで進化してきたのでございます。

では、さぞかし最初の星の写真も苦労したのであろうと、いや、まあそうなんですが、ちょいとその辺かいつまんじゃおうと思います。あ、ぎり 天体映像をライブで観る望遠鏡の新型「eVscope2」を使えたので写真もひとつ掲載しますね。詳細は次回。

幕末から明治初期が舞台のNHKの大河ドラマ「晴天を衝け」では、しばしば写真が登場します。最後の徳川将軍の徳川慶喜は趣味が写真だったなんて紹介もございました。

明治が始まったのは1868年、いまから150年前ですが、このころがちょうど写真の黎明、普及期でした。ロンドンで初めての万博が開かれたのが1851年、晴天を衝けの渋沢栄一がパリ万博に派遣されたのが1867年ですが、そのころには写真はかなり一般化しています。国立国会図書館には、幕末から明治~大正~昭和初期にかけて活躍した人の肖像を掲載している「近代日本人の肖像」というサイトがあるのですが、こちらにもそのころの写真が掲載されていますな。1887年に亡くなった島津久光や1871年に亡くなった鍋島直正の写真は間違いなく19世紀のものです。

さて、この写真ですが、発明は1824年フランスの中部ブルゴーニュ地方在住のニエプスとされており、その世界初の写真も有名です。彼は当時、写生道具として使われていたカメラ・オブスクラを応用し、光の強弱を記録するアスファルトを使用し、写真撮影に成功します。なお、カメラ・オブスクラはこの連載の初期にカメラ箱って名前で紹介しています。小型の段ボール箱と虫めがね、白いレジ袋があれば作れますので、よかったらお試しください。ところで「カメラ箱」ですが、カメラというのは箱とか部屋という意味があるので、変な日本語なのですがご容赦くださいませー。

なお、ニエプスは写真の発明者として出生地のブルゴーニュのシャロン=シュル=ソーヌでは尊敬されているらしく、かなり立派な博物館が、あるそうです。行ってみたいですなー。

さて、ニエプスの写真は撮影にギラギラの太陽の光があっても1~2日はかかるというものでした。ようするに感度が非常に低いのです。

それを引き継いだのがカメラ・オブスクラなどを見世物にしていたダゲールで、ニエプスの成功を聞き、共同研究を始めます。そしてニエプスが亡くなったあとも研究をし、ヨウ化銀を使うことで鮮明かつ高速(といっても露出20分とか)に写真を撮影するダゲレオタイプを発明するのです。このダゲレオタイプについて発表の相談を持ちかけられた、フランスの議員で物理学者だったアラゴは、学会での大々的な発表会と、この発明特許をフランス政府が買い取るということにします。ということでパブリック・ドメインとなった写真技術は一気に世界に広がるのですな。まあ、すごかったからというのもあります。

肖像画は当時は金持ちや権力者の独占物だったわけですが、これが庶民に一気に広がったことが写真の歴史のサイトでは強調されておりますな。そうなんだ。ふーん。まあ、自撮りするもんね。いまでも。

しかし、まだ日中に写真を撮影するのに20分とかかかるわけで、じーっと我慢して動かずに撮影されなければならないわけです。まして暗い天体の写真なんか撮れるわけもないのです。もちろんこれは様々な改良が加えられていきます。また同じ銀を使うのでもダゲレオタイプとは違う手法も用いられ、それがその後のフィルムカメラにつながりますが、まあ長くなるのでこれくらいにしますな。

ところでダゲレオタイプを発表し、広めた立役者アラゴはパリ天文台の台長でもあり、これが天文学に革命を起こすことを見抜きます。そして、月の写真や星の写真が撮れるように改良することを推奨するのですな。

そうしてまずは月の写真が撮影されます。1940年にアメリカのJ.W.ドレイパーが望遠鏡で満月の写真を撮影しています。この写真パブリックドメインになっているはずなんですが、ちょっとわからないので、こちらの記事をポイントしておきます。なかなかよくとれておりますな。

太陽の方がもうちょっとあとです。アラゴの弟子でダゲレオタイプをダゲールから学んだフーコー(地球の自転を証明したフーコー振り子で有名)とフィゾー(光速度測定のフィゾーの歯車で有名)が1845年に撮影しています。こちらですな。これも観測データとして十分でございます。

そして、星の写真は、1850年になります。アメリカのハーバード天文台の大望遠鏡を使い、月の連続撮影をしていた(1851年のロンドン万博に出展)ボンドとホイップルが織り姫星(こと座のベガ)と北斗七星の星のひとつミザールとそのそばのアルコルの撮影に成功しています。ダゲレオタイプで撮影したので根性ですな。望遠鏡を日周運動で移動する星に向けるためにコントロールし続けないといけませんので。

なおホイップルは1851年に日食の撮影も行っております

さて、星雲の写真はどうでしょうか。月の写真を撮影したドレイパーの息子のヘンリードレイパーが1880年にオリオン星雲の写真を撮影していますな。これはパブリックドメインであった!口径28cmの望遠鏡で、露出51分! 根性でとらえたわけでございます。

さて、それから150年がたち、技術は本当に進歩しました。フランスで始まった写真術は、フランスで発明された最新の電視観望望遠鏡「eVscope2」にかかるとですねこんな感じです。

  • eVscope2

    ほぼライブでとらえたオリオン星雲(露出16秒)

  • eVscope2

    月は、0.08秒露出

  • eVscope2

    カラフルにとらえたM27星雲 1分半露出

従来機との比較などは次回に掲載しますねー。