Sunway TaihuLightのアプリケーション開発

Top500で1位の新しいスパコンが出来ると、それを使った大規模計算が行われ、その論文がGordon Bell賞を狙って投稿されるのが常である。TaihuLightの前に、中国は天河2号でTop500の1位になったのであるが、中国からGordon Bell賞候補の論文は出て来ず、中国の大規模アプリケーション開発の遅れを印象付けることになってしまった。

これに対して2016年6月のISC16でTaihuLightがTop500で1位になり、2016年11月のSC16では、6件のGordon Bell賞最終候補の内の半分の3件がTaihuLightを使った大規模計算の論文となり、その内の気象計算の論文がGordon Bell賞を受賞した。

この成果は、中国がアプリケーション開発でも急速に力を付け、世界のトップレベルに並んできたことを強く印象付けるものであった。

次の図はTaihuLightのアプリケーション開発のまとめで、100以上の研究機関で60以上の大規模アプリケーションが開発されていると書かれている。アプリケーションの範囲は、気象・気候、航空宇宙、海洋環境、ライフサイエンスなど、アプリケーションの分野は19におよぶ。

この中の6件がTaihuLightの全系を使うフルスケールのアプリケーションで、その中の3件がGordon Bell賞の最終候補論文に選ばれた。それ以外にも19件の半分規模のアプリケーションと100万コア級のアプリケーションが22件含まれているという。

TaihuLightのアプリケーション開発状況

前に掲げたものと重複するが、次の表は、TaihuLightとTop500の2~5位のスパコンのピーク演算性能、メモリ容量と、主要なベンチマークの性能を比較したものである。

TaihuLightは、ピーク演算性能は125.4PFlops、メモリ容量は1310TBで、ピーク演算性能は2位の天河2号の2倍以上である。一方、メモリ容量は、大雑把に言うと2~5位のシステムと同じクラスである。

TaihuLightのLinpack性能はダントツであり、MFlops/Wも高い値を出している。Graph500のGTEPSは天河2号と比べると1桁以上高いが、Sequoiaと同程度である。また、Graph500では京コンピュータが1位であり、TaihuLightは2位となっている。HPCGはメモリバンド幅が効くベンチマークで、TaihuLightは4位というランキングになっている。

全体として見ると、TaihuLightはすべての分野で1位と言うわけではないが、まんべんなくかなり高いランキングを得ている世界でもトップレベルのスパコンであることは間違いない。

Top500の1位~5位のスパコンのベンチマーク性能の比較

次の図は、2016年11月にGordon Bell賞を授賞した気象計算のアプリケーションの概要を説明するものである。TaihuLightの全系の1000万コアまでスケールし、500m格子での気象計算を行うことができる。そして、7.95PFlopsの実効演算性能を実現している。

なお、実効演算性能は、どのような計算を行うかによって大きく影響されるので、単に値だけをみてもあまり意味が無く、過去の同種の計算での実効性能と比較しなければならない。

Gordon Bell賞を受賞した気象計算アプリケーション

次の図は、Gordon Bell賞の最終候補に残ったMASNUMという海洋の大規模で長波長の波のシミュレーションを行うアプリケーションである。実効性能は45.43PFlopsである。

Gordon Bell賞の最終候補となった海洋の大規模な波のシミュレーションを行うアプリケーション

次の図は、物質の凝固の状態をシミュレートするPhase Field Simulationというアプリケーションで、実効で50PFlops以上の性能を達成している。この論文も、2016年11月のGordon Bell賞の最終候補に残った論文である。

物質の凝固の状態を計算するPhase Field Simulation