12mアレイ用の64アンテナ相関器

アンテナからの1つのIF信号は、4GHzでサンプルされデジタル化されたデータを1ms分まとめたパケットとして送られてくる。このパケットは相関器の入り口で32サブパケットに分割され、各サブパケットは125MHzクロックのデジタル回路で処理される。

64アンテナ相関器は、基本的にはXFタイプの相関器であるが、各アンテナからの入力に対して32チャネルのデジタルフィルタを設けており、FXFタイプの相関器となっている。このデジタルフィルタは2GHzのIFバンドの中の任意の周波数を中心周波数とする62.5MHz幅のフィルタで、2GHzのIFを32サブバンドに分割する。また、カバーする帯域は合計1GHzと半減するが、31.25MHz幅のサブバンドとすることもできるようになっている。

各アンテナに対応する周波数可変フィルタ群

各アンテナからは、2つの偏波のペアの4つのIF出力が出ており、この図のように4つのフィルタ群が設けられている。このフィルタ部はその中に4ms分の信号を記憶するメモリを持っており、4msの範囲内で指定された時間遅れを持つデータの読み出しが可能になっている。

コストの関係で12mアレイのアンテナ数は50基となったが、メインの12mアンテナ用の相関器は、当初計画の64アンテナに対応できる仕様で作られている。このため、14アンテナ分の入力は余るのであるが、ACAのアンテナを加えると、全部の入力を揃えることもできる。

メインアレイの相関器(X部)の構成。この図は全体の1/4で、全体ではこれが4台ある

そして、続くX部でアンテナペア間の相関を計算する。相関器には相関を計算する64×64のマトリクスが32プレーン入っており、これが4台存在するので、全体では128プレーンがある。ここで64基のアンテナペアの相互相関が計算される。フィルタ部からの1つの偏波の32サブバンドの相関を計算すると32プレーンを必要とするので、128プレーンでフィルタ部からの出力の内の4つを選択して、同時に相関を計算することができる。

この相関計算には、4096個の乗算器を集積したASICを開発しており、1プレーンにこのASICを256個使用している。マトリクスの各交点には256個の乗算器があり、シフトレジスタで一方の入力を1~256クロック遅延した信号と乗算して相関を計算することができるようになっている。そして、対角要素では自己相関を計算し、上側の三角の各交点では1~256サンプル分の遅れ、下側の三角の各交点では1~256サンプルの進みを持つ相互相関計算を行う。また、すべてのサブバンドを使わないでプレーンが空いている場合は、フィルタ部の遅延読み出しを行って、そのプレーンをより大きな時間ずれを持つ相関計算を行わせて周波数分解能を上げることができるようになっている。

各アンテナからの信号は、前述のフィルタからの出力を選択して入力し、それぞれのサブバンドでの、偏波を含めた8つのIF信号の任意の組み合わせの相関を計算することができる。計算された相関はそれぞれの時間遅れごとにLTA(Long Term Accumulator)に足しこまれ、1msあるいは16msの倍数の時間のデータの積分が行われる。これにより、雑音が平均化されてキャンセルされ、信号を強めることができる。

このLTAの出力を、その後、コンピュータによる後処理で、フーリエ変換を行って最大8192点の周波数に分解したスペクトルを求めている。

そして、8192点の周波数に分解する場合、最初のフィルタで62.5MHzの帯域とした場合は、周波数分解能は7.63KHz、サブバンドの帯域を31.25MHzとした場合は3.815KHzの周波数分解能が得られる。230GHzの電波の場合、3.815KHzの周波数のずれは5m/sのドップラーシフトに対応する。つまり、500光年離れた分子雲などの移動速度を5m/sの分解能で計測することができる。

各アンテナからは毎秒32G Sampleのデータが送られてくる。相関器は、最大64アンテナ間の2016アンテナペアの相関を並列に計算することができ、合計で17Peta OPS(Operation Per Second)の演算性能を持っている。この1秒間の演算回数は「京」スパコンの性能である約11PFlopsを超える。ただし、「京」の演算は64ビットの倍精度浮動小数点演算であるのに対して、相関器の演算は大部分4ビットで計算されているので、1つの演算はずっと簡単であり単純な比較はできないが、ALMAの相関器は相当な演算能力を持つ専用スパコンであることは確かである。

8ロッカーと両袖の細いロッカーからなるメイン相関器の外観。この写真は全体の1/4で、これと同じものが4組並んでいる(出典:"The ALMA correlator", Astron. Astrophys., vol. 462, pp. 801–810, Feb. 2007)

(次回は10月10日に掲載予定です)