過去5回にわたり、民航機と軍用機の双方について、旅客・貨物・武器の搭載量と燃料の搭載量にまつわる話をしてきた。「搭載能力の大小」が問題になるのは旅客機や貨物輸送機だけでなく戦闘機や爆撃機も同じだが、事情に違いがある。

内部搭載と外部搭載

民間用でも軍用でも、輸送機というのは基本的に人や積荷を機内に搭載するものである。例外は、ヘリコプターやティルトローター機による吊下空輸ぐらいだ。

機内に搭載する場合、主として機体のサイズによって決まる「機内のスペース」と、主として機体の構造やエンジンの推進力によって決まる「搭載可能な重量」のいずれか、あるいは両方が制約要因となる。

では、戦闘機や爆撃機はどうか。搭乗員以外の人を乗せて運ぶことは(普通は)行わず、燃料タンク、爆弾、ミサイルなどといった「吊るしもの」を搭載する。搭載方法には、「内部搭載」と「外部搭載」がある。

内部搭載とは、胴体内に設けた兵器倉に収納する方法で、投下の際は下面の扉を開く。その兵器倉の内部には、兵装を固定する兵装架(ボムラック)が付いている。基本機には胴体内に兵器倉を設けるものだが、ごくごく希に主翼内に兵器倉を設ける機体もある。

外部搭載とは、胴体や主翼の下面に兵装架を取り付けて、そこに兵装を固定する方法。この場合、兵装はむき出しである。当然、兵装をいろいろ搭載すると空気抵抗が増えるし、レーダー反射も増える。

だから、ステルス機は基本的に兵装を内部搭載としている。B-2A爆撃機は内部搭載だけだが、F-22AやF-35は外部搭載も可能になっていて、ステルス性の要求が低い場面では外部搭載も併用して搭載量を増やせるようにしている。

スペースや搭載能力の制約と兵装架の数

まず内部搭載の場合。輸送機に貨物を搭載する場合と同様に、「スペース」と「重量」が問題になるのだが、さらに「兵装架の数」も関わってくる。といったところで、B-1Bランサー爆撃機の兵器倉内部を撮影した写真がこれ。

B-1Bランサーの兵器倉内部。設置する兵装架は、搭載する兵装の種類によって変わる

B-1Bはもともと核爆撃機として作られたので、核爆弾、あるいは核弾頭付きの空対地ミサイルを搭載する設計になっていた。しかし、冷戦崩壊後の情勢変化と核軍縮条約の絡みから、現在は核兵器の搭載は止めてしまい、通常兵器専用になっている。

上の写真を見ると、兵装架が斜めにたくさん並んでいる様子がわかる。これは、500ポンド(約227kg)の通常爆弾を大量搭載するための布陣。兵装架は斜め向きのアームに複数取り付けてあり、しかも斜め向きのアームが三段積みになっている。

つまり、搭載量もスペースも無駄にしないように、兵装架を最大限に設置できるように工夫した設計というわけだ。もっと大型の兵装を搭載する際は、これらの兵装架は外して別のものに付け直す仕組みになっている。

搭載した爆弾を投下する際は、まず一番下にあるアームの兵装架に取り付けた爆弾をすべて投下する。空になったアームは下向きに折り畳むのだが、そうすると、次のアームに取り付けられた兵装架の爆弾が投下可能になる。それを繰り返して最終的に全弾投下となる。

だから、搭載した爆弾をすべて一斉に投下することはできず、順番に少しずつ投下する方法になる。しかし米空軍の爆撃機はどこかの国の爆撃機と違い、今では非誘導爆弾による絨毯爆撃なんていうことはしない。誘導爆弾を一発ずつ投下するものだから、それでも差し支えはない。

では、外部搭載はどうか。兵器倉に搭載する場合と違い、スペースの制約はない……かというと、そうでもない。翼下に複数の兵装架を並べて取り付けようとしても、隣接する兵装架に搭載する兵装同士が干渉すると具合が悪い。もちろん、降着装置の出し入れに支障が生じても困る。

だから、並んでいる兵装架の間隔が結果としてスペースの制約要因となる。さらに、そこに何を搭載するかも制約要因になる。もちろん、どこかの兵装架に幅が広い兵装を搭載すると、お隣の兵装架の搭載スペースを圧迫する可能性がある。

兵装架ごとの搭載量の制限

先に「搭載量の制限」という話を書いたが、最大搭載量だけでなく、兵装架ごとの搭載量の制限もついて回るのが、戦闘機などで兵装を外部搭載する場合の特徴。

取り付ける場所が胴体や主翼の下だから、胴体や主翼の構造設計も関わってくる。つまり、設定時に想定した負荷より大きい負荷をかけられないので、それが搭載量を制約する可能性がある。さらに、兵装架ごとの制限値もある。

例えばF-35の場合、兵装搭載用のステーションは全部で11ヶ所あり、搭載可能な兵装の重量上限が個別に定められている。第78回でも少し触れた話だが、今回はF-35Aについて具体的な数字を出してみよう(1ポンド = 0.454kg)。

ステーション1 300ポンド
ステーション2 2,500ポンド
ステーション3 5,000ポンド
ステーション4 2,500ポンド
ステーション5 350ポンド
ステーション6 1,000ポンド
ステーション7 350ポンド
ステーション8 2,500ポンド
ステーション9 5,000ポンド
ステーション10 2,500ポンド
ステーション11 300ポンド

番号は左端から順番に振るので、ステーション1~ステーション3は左主翼、ステーション4~ステーション5は左舷機内兵器倉、ステーション6は胴体下面中心線、ステーション7~ステーション8は右舷機内兵器倉、ステーション9~ステーション11は右主翼となる。

このうちステーション6は、兵装の機外搭載には使わない。これは、F-35BとF-35Cが25mm機関砲のポッドを取り付けるためのもの。F-35Aはもともと機関砲を内蔵しているので、機関砲ポッドに用はない。

ステーション4とステーション8は2,500ポンド=1,135kgの兵装まで搭載できるが、もちろん機内兵器倉のサイズを超えるものは搭載不可。隣のステーション5とステーション7は機内兵器倉の内部、かつ空対空ミサイル専用なので、サイズ上限も重量上限も小さい。

現在は機内兵器倉のステーション4と同8にAIM-120 AMRAAM空対空ミサイルを搭載するが、これすら完全に内部に納まらず、外部に少し膨らみができている。MBDA社がここに自社のミーティア空対空ミサイルを搭載しようとしたら、翼幅が大きすぎて納まらず、ミサイルの改設計を余儀なくされたそうだ。

F-35の機内兵器倉(ただしモックアップ)。これは左舷側を前方から見ているので、右側がステーション4、左側がステーション5となる。前者にはJSOW滑空誘導爆弾が、後者にはAMRAAM空対空ミサイルが付いている

つまり、トータルの重量だけでなく、兵装架ごとのスペースや重量上限も考慮に入れながら、どこに何を何発ずつ搭載するかを考えなければならない。場合によっては、兵装架が余ったり、搭載可能な重量を余したりということも起こる。むしろ、そういうことのほうが普通かもしれない。