日本IBMは1月21日、日本企業のAIガバナンスの向上を目指し、AIに関する法規制準拠のアドバイザリーサービス領域のサービス拡充を推進するKPMGジャパンと、戦略的な協業関係を強化したと明らかにした。
具体的には、IBMが提供する「IBM watsonx.governance」を中心としたAI技術と、KPMGが持つAIリスクやガバナンスに関する専門性をもとに構成されたフレームワーク「KPMG Trusted AI」を組み合わせることで、AIガバナンスの構築と運用定着に向けた環境整備を支援する。すでに、1月21日からKPMGジャパンのコンサルティングサービスを通じて提供を開始している。
協業の背景
EU(欧州連合)では昨年5月にAI規制法が成立し、今後数年で完全適用されていく見込みのほか、同時期に日本国内では内閣府・AI戦略会議において、法制化の検討が開始されている。
AIをビジネスモデルや企業活動の各所に取り込み、利便性や効果を享受していくことが加速する中で、AIバリューチェーンにおけるリスクへの対応やガバナンスの重要性・必要性が増しているという。
日本では、企業のAI活用が活発化する中で、AI事業者ガイドラインでのAIマネジメントシステム整備が求められており、IBMでは2018年にAI倫理委員会を発足し、AI活用におけるガバナンス体制を整える取り組みを主導。
AI倫理の3原則を設け、AIの目的やデータと洞察の所有権、透明性と説明可能性を策定することに加え、原則を支える基本特性として説明可能性、公平性、堅牢性、透明性、プライバシーなどを中心としたAIリスク評価フレームワークの開発・運用を推進し、顧客に提案するAIプロジェクトのリスク審査に従事している。
リスク審査は、AI活用にブレーキをかけることを目的としたものではなく、AI活用を前進させるための適切なガードレールの設置を目指し、AI技術が安全で公正・有益であることを促進し、潜在的なリスクから社会を守るためのものとして、運用している。
加えて、こうした自社で培ってきたAIガバナンスに対するノウハウやナレッジを活かし、IBMはテクノロジーとしてAIガバナンスソリューションのwatsonx.governanceを開発し、AIマネジメント・システムとして提供している。
一方、KPMGジャパンは、メンバーファームのあずさ監査法人とKPMGコンサルティングにおいて、企業におけるAI利活用促進とリスク管理に関わるサービスの開発・提供体制を強化してきた。KPMGインターナショナルが構築したKPMG Trusted AIフレームワーク、日本国内をはじめとした各国政府や公的機関が発行する指針・ガイドライン、進展する法制化動向などをアドバイザリーに取り入れ、企業のAIガバナンス構築を支援している。
このような背景から、日本IBMは安心・安全にAIを運用する世界の実現を目指し、KPMGジャパンと協業を強化する。
日本IBMの提供するIBM watsonx.governanceを中心としたAIソリューションや技術的な専門性と、KPMGジャパンが持つAIリスクやガバナンスに関する専門性、組織体制や各種プロセスの整備、モニタリングのノウハウを組み合わせることで、KPMG Trusted AIの効果的・効率的な実装を実現し、企業のAIガバナンスの構築と運用定着に貢献するとしている。
今後、日本IBMはIBM watsonxをはじめとするAI技術の提供、ナレッジやスキルの共有を通じて、日本企業のAIガバナンスの構築に向け支援するほか、今後もパートナー企業との共創を通じて、お客様のビジネスへのAI適用やデジタル変革を推進していく考えだ。