シャープが堺工場の第10世代パネルラインの生産を2024年度上期中にも停止する決定を踏まえ、台湾の半導体・ディスプレイ市場動向調査会社TrendForceは、2024年のパネル供給への影響は最小限に抑えられるものの、2025年のテレビ用液晶パネルの供給量は全体の2%に相当する500万枚近く減少するとの予測を公開した。

堺工場は、42、60、70型といったパネルサイズに特化しており、この生産停止により業界全体でパネルサイズの再調整が促進されるのではないかとTrendForceは指摘している。特にシャープは42型テレビパネルの唯一といっても良いサプライヤであるため、将来の需要は同価格帯の40または43型に移行すると考えられる。また、60および70型パネル需要は、伝統的にクリスマスシーズンのプロモーションによって促進されてきたが、60型については58型か、より豊富に供給されている65型への移行が予想されるほか、70型については、同サイズの有力サプライヤである中国CHOTが、シャープの生産停止に伴う受注先変更による恩恵を受けることが期待されるという。

このほか、TrendForceでは、堺工場の生産停止に伴うパネル供給量やパネルサイズのトレンド変化に加えて、サプライチェーンへの影響も指摘している。2024年の同工場の顧客は、韓国ブランドの2社と中国MTCが大半を占めているとみられており、これらの顧客はパネル調達計画の修正と再配分の必要に迫られることが想定され、例えばSamsung Electronicsでは、従来中国パネルメーカーへの依存度を減らすことを検討していたが、堺工場の生産停止に伴い、2025年には中国サプライヤからの購入量が増加することが予想されるという。

さらに、TrendForceでは、LG Displayが中国広州に有する第8.5世代パネル対応液晶工場(同地には有機EL工場も有している)の将来に対する潜在的な影響を与えるとの見方を示しており、今回の堺工場の生産停止を呼び水に業界再編が促され、2024年後半から2025年にかけてテレビパネル市場の需要と供給のダイナミクスを大きく変える可能性があると指摘している。