USスチール買収で覚悟問われる日本製鉄、米国の排他主義を克服できるか?

競合の米鉄鋼大手が買収の再提案を示唆

「米国内で所有される米国の鉄鋼企業であり続けることが重要」─2024年3月14日、ジョー・バイデン米大統領は、日本製鉄(橋本英二社長)による米鉄鋼大手・USスチールの買収問題について、反対を示唆する声明を出した。

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 これは大統領選の行方を左右する票を持ち、日鉄によるUSスチール買収に反対している全米鉄鋼労働組合(USW)の意向に配慮したもの。

 共和党の大統領候補であるドナルド・トランプ氏が「買収を阻止する」と明言しているのに対し、バイデン氏はそこまでは言及しなかったものの、対米外国投資委員会(CFIUS)の審査が進む中で大統領が反対と取れる発言をすること自体、異例のこと。

 これを受けて3月15日、日鉄も声明を出した。その中では、この買収で「USスチールのみならず、労働組合、米国鉄鋼業界、更には米国の安全保障に明確な利益をもたらす」、「米国の優位性を高め、同時に米国のサプライチェーンと中国に対する経済安全保障を強化する」、「米国の優位性強化を独力で実現し得る、他の米国企業はない」と強調。その上で、買収後にはUSスチールに追加投資を行い、この買収に起因するレイオフ及び工場閉鎖を行わないとした。

 この買収に対して、USスチールの大株主であるファンドなどは賛成の姿勢だが、USWの反対姿勢は強硬。背景には雇用への懸念だけでなく、米国の保守的な地域で強い排他主義、「日本嫌い」もあると見られる。

 米国での報道によると、この状況を受けて、当初日鉄の半額の1兆円でのUSスチール買収を提案していた米国鉄鋼2位のクリーブランド・クリフスが再提案をする考えを示したという。ただ、日鉄が提示している1株あたり55ドルに対して30ドル以下と日鉄の半値近い水準での提案になると報じられる。

 こうなると1にも2にも、この買収の成功にはUSWを説得できるかにかかると言っていい。米大統領選の勝敗を左右するという高度に政治的な絡みがある中、「強い決意で買収を完了させる」と表明した日鉄の覚悟が問われる局面だ。