日立製作所は、輸送インフラの高い安全性と運行効率を実現するモビリティ管制基盤「Digital Road」を開発したことを発表した。

  • モビリティ管制基盤「Digital Road」の概要

    モビリティ管制基盤「Digital Road」の概要 (提供:日立、以下すべて同様)

エアモビリティの現状とDigital Roadの開発背景

災害発生に伴う交通網の寸断や、物流の2024年問題に伴う遠隔地配送の遅延などの懸念が顕在化している現代では、地上インフラに加えて、道路事情の影響を受けないドローンなどの空の移動インフラ「エアモビリティ」の確保が有効とされている。

しかし、輸送インフラには安全かつ効率的な移動経路の構築が必須であるが、エアモビリティの場合、天候や電波状況の変化に加え、機体間や建物、樹木といった周囲の環境変化から影響を受けやすく、そうした環境因子の急な変化を予測できないといった理由から、これまでは目視による現地の安全確認が必要だったという。

限定された気象状況・領域においてオペレーターが運行しなければならないという現在の状況では、気象状況はともかくエアモビリティ1機体につきオペレーター1人が必要になり、効率性が悪いという課題がある。

そこで日立は、独自のデジタルツイン技術を活用して環境因子の変化をリアルタイムに把握しデジタル空間内で管理することで、環境因子の変化を予測することが可能なDigital Roadを開発するに至ったという。

将来的には、自律飛行する機体を遠隔かつ自動で運行することに加え、オペレーター1人で複数機体を同時監視できるようにすることで高い効率と定時性を実現、安全に運用していく体制を構築したいとしている。

「Digital Road」の特徴

運行環境をデジタル空間で再現できるDigital Roadを活用することで、天候や通信環境、他の機体などの環境因子を考慮しながら効率的な移動経路を自動でリアルタイムに提供できるようになるため、これまで困難とされてきたエアモビリティの離着陸の自動化などが実現されることとなる。

その特長としてはフィジカル空間で得られた飛行環境のデータを、機械学習を用いて統合、未観測エリアを含めた環境データとして生成し、フィジカル空間に設置された各センサーおよび他システムから得た情報を用いて補完しながら、運行経路上のモビリティの位置・天候・電波接続性といった運用に重要な環境因子の変化を計算、リアルタイムにデータを更新する点を同社では挙げている。

  • 障害物をセンシングし、解析する

    障害物をセンシングし、解析する

また、得られた環境因子と3次元都市モデルから、運行経路全体の障害物・天候・電波状態などの環境データを、空間を同一長さの辺で区分けした1つの立方体状の領域である「等方ボクセル」でデジタル空間内にマッピングすることで4次元情報として統合し、大規模な環境因子の変化を高頻度に更新しながら活用できる点も特長としている。

  • 空間を等方ボクセルでマッピング

    空間を等方ボクセルでマッピング

このほか、グラフ理論に基づいた状態遷移をネットワーク構造で表す概念である「グラフネットワーク」を活用し、飛行リスクが最小となる安全経路を自動かつ高速に絞り出す技術や、運行経路上に他の機体の進入を許さない「占有領域」を機体ごとに設定することで、複数機体運行時には各占有領域を組み合わせた運用により高い安全性を確保できる点なども特長として挙げている。

  • 占有領域を機体ごとに設定

    占有領域を機体ごとに設定

これらのさまざまな特長的な技術は、茨城県日立市にある同社の国分工場内に建設されている屋内の離着陸実験施設にて、市販のドローンを複数台用いた検証の形で実施。その結果、強風の合間など離着陸に適した時間帯や機体順序、移動経路をあらかじめ運行プロファイルとして提供できること、機体の待機時間を低減しながら最短2分ごとに1機体の間隔でスムーズに自動離着陸できることなどを確認できたとのことである。

  • ドローンを用いた検証の様子

    ドローンを用いた検証の様子

今後の展望

経済産業省では、さまざまな社会課題を迅速に解決することを目指した「デジタルライフライン全国総合整備計画」を推進しているほか、送電網などの既存インフラを活用しながら、ドローンの目視外運転に向けた整備を進めており、将来的には地球1周分(約4万km)を超えるドローン航路の設定を目指している。

日立はこうした国の方針やドローン飛行に対するルールに沿いながら、今後は有人エリアでも検証をしていきたいとしている。同社の担当者は、「現状は、限られたオーナーの土地の中だけしか飛ばせませんが、今後はさまざまな都市環境の中でも安全に飛べるということを検証で示したい。我々が構築したさまざまな技術は、そういった商業エリアに対しても有効に使えると思っている。分散されたデジタル情報を一括で集めて管理する点が他社にはない良さだ」とDigital Roadの強みを述べていた。

なお、同社は今後、Digital Roadをモビリティの自動運転に対するさまざまなサービス事業に適用していき、モノや人の移動・輸送の高安全化・効率化へ貢献していきたいとしている。