日本郵政・再生への道筋は?社長・増田寛也が抱える課題

人口減少、人手不足もあり、郵便・物流事業の先行きは厳しく─。日本郵政がなかなか成長戦略を描けずにいる。利益の9割近くをゆうちょ銀行、かんぽ生命保険に依存する中、郵政民営化法では両社の株式の売却を義務づけられている。日本郵政、日本郵便としての独自戦略が求められているが、なかなか打ち手を見出せていないのが現状。豊富な資金を寝かせずに、いかに戦略的に活用するかが問われているが─。

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郵便事業が抱える構造的課題

「様々な企業や地域コミュニティとの連携の基盤となる『共創プラットフォーム』を目指し、時代に合った価値の創造を進めている」─こう話すのは日本郵政社長の増田寛也氏。

 日本郵政の経営は足踏みが続いている。2023年4―12月期までの実績は、連結最終利益が前年同期比41%減。通期の見通しでも、経常利益が同5.7%減、純利益が同44.3%減という見通しを出している。

 この大きな要因が、グループで郵便・物流事業を手掛ける日本郵便の取扱量の減少。郵便事業自体は赤字で、今後さらに拡大する恐れがあると日本郵便自身も試算している。

 そこで現在、郵便物の値上げに向け、総務省に省令改正を要望。改正されれば日本郵便が新たな料金を届け出ることになる。24年秋頃にも値上げが実現する可能性がある。

 ただ、この値上げも人口減少の日本では構造問題の解決にはならない。23年6月には、長年のライバル・ヤマトホールディングスと提携。ヤマト運輸が手掛ける「メール便サービス」と、小型薄型荷物の「ネコポス」のサービスの配達について、日本郵便が全量委託を受ける。

 この2事業の売上高は22年度で約1300億円。条件次第だが、日本郵便はこの一部を受け取ることができる見込み。24年4月1日以降、トラックドライバーの時間外労働の上限が年960時間に規制されるといった「2024年問題」が控える中、この提携は日本全体の課題でもある人手不足対応の意味合いも強い。

 24年2月には、18年から連携協定を結ぶなど協力関係にあったJR東日本と、物流やデジタル分野で連携する協定を新たに結んだ。鉄道輸送などお互いのネットワークを活用し合うことで、従業員の業務負担を減らしたいという狙いもある。

 ただ、これらの施策は人手不足対応など「守り」の意味では重要ではあるものの、収益力向上といった「攻め」の点では決定打とはなっていない。

 日本郵政の収益構造は、今もゆうちょ銀行、かんぽ生命保険が支えている。23年3月期の日本郵政の経常利益は6574億円。そのうちゆうちょ銀行が4555億円、かんぽ生命が1175億円と、実に9割近くを金融2社が稼いている。

 しかも、郵政民営化法は日本郵政に対し「できるだけ早期に」、ゆうちょ、かんぽの株式を売却するよう義務付けている。23年にはゆうちょ銀行株を約1兆2000億円分売却。持ち株比率はそれ以前は約89%だったが、現在は約61%にまで低下した。

ゆうちょ銀行で8年ぶりトップ交代

 とはいえ、グループとしての連携が続く間は、頼みはゆうちょ銀行の収益。そのゆうちょ銀行では8年ぶりの社長交代が行われる。4月1日付で社長の池田憲人氏が退任し、後任には副社長の笠間貴之氏が昇格。

 笠間氏は1973年岡山県生まれ。96年早稲田大学理工学部卒業後、日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)入行。ゴールドマン・サックス証券を経て、15年にゆうちょ銀行に入社した。

 この時期、笠間氏や、同じくゴールドマンから転身した佐護勝紀氏など、運用に携わる外部出身の7人を、当時のゆうちょ銀行社長・長門正貢氏(前日本郵政社長)は「7人の侍」と称し、資産運用を改革、強化する姿勢を鮮明にしていた。

 ゆうちょ銀行は民業圧迫の観点から新規業務への進出が厳しく規制されていることもあり、やはり収益の柱は「運用」と「投資」。運用部隊を率いてきた笠間氏の社長昇格は、その方針を再度明確化したものだと言える。笠間氏は「ユニークな、オンリーワンの銀行を目指す」と語る。

 かんぽ生命も不正営業問題からようやく正常化しており、年間で1000億円前後の経常利益を安定的に稼ぐことができる存在であることは変わらない。

 問われるのは日本郵政の成長戦略。まずはゆうちょ銀行株売却で得られた1兆2000億円をどう有効活用するか。様々な提携はあるものの、収益向上に資する手を打ち切れていない。

 増田氏は不動産事業やM&A(企業の合併・買収)の強化にも言及しているが、今のところ具体策は打てていない。実現はしなかったが、17年に野村不動産ホールディングスの買収を検討したように、それなりの規模の不動産会社の買収を打つだけの資金は持っている。それによって各地に保有する土地を活用するのは1つの手。

 また、19年に米アフラック・インコーポレイテッドに約2700億円を出資。今後持ち分法適用会社となり、アフラックの利益の一部が連結決算に反映される予定。その金額は年間数百億円。

 ある市場関係者は「ネットワークの活用が重要」と指摘する。JR東日本の例もあったが、異業種との「つながり」を収益化することが必要。そして保有する資金を生かし、郵便・物流以外の事業・企業への投資による成果を複数打ち出さなければ、金融2社が離れていく中で日本郵政の将来は描けない。

 そして、全国あまねくサービスを提供するユニバーサルサービスが義務付けられている日本郵政だが、人口減少の日本で2万4000局の郵便局網を維持し続けるのかどうか。その維持コストは重い。一部報道で増田氏が将来的な整理に言及すると、政治からの強い反発が出るなど道のりは険しい。政治との調整も含め、今後も難しいカジ取りを迫られることになる。