MetaMoJiは7月5日、大林組および労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所と共同で、「安全AIソリューション」を開発し、先行試用企業の募集を開始すると発表した。

同ソリューションは、MetaMoJiのデジタル野帳「eYACHO」や「GEMBA Note」上に作成される安全衛生日報や作業計画書などの帳票上に、作業者や現場の状況に応じて関連度の高い安全管理情報を動的に抽出する「Dynamic Checklist(ダイナミックチェックリスト)」を作成するもの。

企業はこのリストを用いて、個人の経験や勘に依存しがちな建設現場の安全管理業務を改善し、組織的にリスクの見える化と安全管理の高度化を実現できる。

MetaMoJi 代表取締役社長の浮川和宣氏は、「事故や災害は頻繁に発生するものではないので、それだけを目的としたソフトはなかなか使われない。よって、安全ソリューションは『eYACHO』や『GEMBA Note』の機能として提供すべきと考えていた。これまでの安全管理はベテランに頼っており、事故や災害は記録されていてもそれを検索することは困難だった。そこで、AIを活用しようと考えた。ただ、AIだけでは安全ソリューションは作れないので、労働安全衛生総合研究所と大林組と共同で開発した」と語った。

  • 左から、MetaMoJi 代表取締役専務 浮川初子氏、代表取締役社長 浮川和宣氏

同ソリューションについては、MetaMoJi 代表取締役専務の浮川初子氏が説明を行った。同氏は、帳票や労災情報など、「eYACHO」と「GEMBA Note」に蓄積されたデータを活用した製品として、新ソリューションが開発されたと説明した。

初子氏は、新ソリューションの狙いは2つあると述べた。1つは、個人の持つ経験やノウハウをITで活用することだ。大林組と労働安全衛生総合研究所との共同研究から得られた労働災害対策の知識をリスク予測の知識ベースとして提供する。

もう1つの狙いは、労働安全衛生管理プロセスに対応することだ。日常業務で利用する帳票にダイナミックなチェックリスト機能を組み込むことで、リスクアセスメントを実現する。

新ソリューションは、労働安全衛生総合研究所の梅崎重夫氏が提唱する労働災害のIMTOC表現を用いて、蓄積されている安全管理データからMetaMoJiが安全リスク評価のAIモデルを構築し、大林組における現場での評価を行いながら開発された。

IMTOC表現とは、業種(I)・起因物(M)・事故の型(T)・作業その他の条件(O)および直接原因(C)の5つの要素によって、労働災害の事例を類型化し表現する方法をいう。

新ソリューションは、「利用データ作成」「リスク予測データベース構築」「危険予知と安全対策の実施」の3フェーズで構成される。

「利用データの作成」では、組織内外に散在している労働災害情報をIMTOC表現でデータベースに格納する。

「リスク予測データベース構築」では、労働災害データから「自然言語処理AI」がリスク予測データベースを自動構築し、データサイエンスに基づく分析からリスクを自動判定する。

「危険予知と安全対策の実施」としては、「eYACHO」や「GEMBA Note」上で労災情報を登録し、職種、使用機械、予測災害などから「Dynamic Checklist(ダイナミックチェックリスト)」などの帳票を生成し、安全対策が行える。

  • 業務で利用する帳票から安全AIソリューションを活用できる

  • その業務が抱えるリスクが一覧で表示される

  • リスクを回避する対策も表示される

大林組は新ソリューションを開発するにあたり、2000件のデータを学習させたが、今後は建築現場すべてのデータを学習させて、利用の範囲を拡大させる計画だという。