野経済研究所は9月9日、国内の企業向け研修サービス市場を調査し、マーケット動向、コロナ禍がマーケットにもたらす影響評価、将来展望などを明らかにした。

  • 企業向け研修サービス市場規模推移・予測(出典:矢野経済研究所)

    企業向け研修サービス市場規模推移・予測(出典:矢野経済研究所)

この調査は2021年4月〜7月、 企業向け研修サービスを展開している事業者を対象に実施したもの。それによると、2020年度の企業向け研修サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比8.5%減の4,820億円となった。前年度までプラス成長を堅持していたが、2020年度はコロナ禍によるダメージによりマイナス成長に転じた。

近年、マーケットの成長を牽引してきたのは、企業の積極的な新卒採用を背景とした新人研修であったが、2020年度は第1回目の緊急事態宣言により、中止・延期に追い込まれた影響が大きく、市場で主力となっているクラスルーム形式の研修ビジネスの減収を招いた最大の要因だとしている。その影響は、各種研修の実施機会損失にもつながり、特に階層別研修も大きな打撃を受けたという。

2020年度の企業向け研修サービスを巡っては、多くの研修事業者が主力ビジネスとしている集合研修がコロナ禍で中止・延期に追い込まれた影響によるダメージは大きく、マイナス成長をもたらす結果となったが、あくまでもコロナ禍に依るものであり、企業側の採用意欲や教育投資予算が落ち込む方向にあるわけではないことから、一時的なダメージと捉えている研修事業者は多いということだ。

2020年度下半期は、とりあえず集合型研修で行っていた研修プログラムをそのままオンライン化するところが多かったが、現在ではオンラインに適した研修手法やコンテンツの開発を強化する動きが活発化しているという。オンライン研修は飽きさせない工夫や研修効果が得られる工夫を凝らす必要があるため、研修時間を短縮したり、動画やマイクロラーニングなどの手法を採り入れたりしているところも増えており、今後はこうした工夫が差別化ポイントになっていくと同社はみている。

将来展望として、2021年度はオンライン研修などコロナ禍に対応した研修サービスへの移行が加速しており、コロナ禍前もしくはそれ以上の水準までマーケットが回復している分野も散見されることから、同社は2021年度の企業向け研修サービス市場は前年度比8.9%増の5,250億円と大幅なプラス成長を予測した。